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【エッセイ】……あなたは、おもちゃじゃないんだよ。

 ……僕は、サンドバッグだ。
 サンドバッグのような存在だ。
 学校で、いいように使われ、バイト先の学童保育では、中学生に散々ディスられる。
 ……なんで、僕ばっかり。
 もう、色々と行くのが憂鬱だ。
 そう思い、帰り道を歩いていた。
 今日は、定期的な看護師さんとの面談で、喫茶店に行く。
 僕の担当の看護師さんは、女性で20代後半だったかな? 若い看護師さんだ。
 だから、かなり話しやすい。
 何なら、この人が1番話せる。

 喫茶店に着いた。
 担当看護師の外崎さんは、タブレット端末に夢中になっている。
「外崎さん?」
 僕は声をかける。
「あっ、多賀さん。今日は、早かったね」
 僕と外崎さんは、喫茶店に入る。
 僕はコーヒー、外崎さんはラテを頼んだ。
「寒いね。最近」
「……そうですね」
「今日、元気ないね。何かあった?」
「疲れました(笑)」
「ほう、どうしたの?」
「いや、うーん……」
 僕は上手く今の状況を説明できない。
「いいよ。ゆっくり。ゆっくりね」
 外崎さんはゆっくりとうなずく。
「実は僕、舐められやすいんですよ」
「どうして?」
「学校で、ちょっとチャラい集団に絡まれていじられるし、友達からもかなりキツイこと言われることあるし、バイトでは、中学生の集団に目をつけられて、ちょっと行き過ぎた発言をされるんですよ」
 僕は思ってることを吐き出した。
「なるほどね。ちゃんと、やめてって言ってる?」
「言えないんです。言ったらどうなるか怖くて」

「あのね。多賀さんも1人の人間で、多賀さんはおもちゃじゃないんだよ」

「おもちゃ?」
「そう、多賀さんって、優しすぎるから、やめてって言えないのかもしれないけど、ずっと黙ってたら、おもちゃみたいな扱いされるよ。されて嫌なことははっきりと口に出していいんだよ」
「外崎さんは、カチンときた時、ちゃんと言えてるんですか?」
「わたしなんて、旦那さんに怒る時はめちゃくちゃ怒ってるよ。それに職場でも、言い方には気をつけるけど、言う時は言うよ」
「へぇ……」
「まぁ、時と場合にはよるけど、ちゃんと嫌なことは言いなさいよ」
 外崎さんはとてもいい助言をしてくれた。
「ありがとうございます」
「多賀さん若いから、あまり無いかもしれないけど、働いて、結婚すると、色々あるよ。その度に我慢してたら、身が持たないよ」
「分かりました。言い方に気をつけて、言ってみます」
 僕はしっかりと助言を受け取った。
「最近、楽しいことあった?」
「あっ、実は彼女ができました」
「おぉ、おめでとう! じゃあ、彼女さんと良い関係を続けるためにも、我慢しすぎちゃダメよ」
 その後は、外崎さんと楽しい話をして、面談を終えた。
「じゃあ、またね」
「ありがとうございました」

「あのね。多賀さんも1人の人間で、多賀さんはおもちゃじゃないんだよ」

 人は、おもちゃじゃない……かぁ。
 やっぱり、外崎さんは例えが分かりやすいな。

 そう思い、僕は少し足取りが軽くなった。

 〜完〜

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