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【小説】夜空での再会

 人生は、出会いと別れの連続。
 人と出会った瞬間に、別れが始まる。
 それは、恋愛でも同じだよ。
 ……そう思ってるけど、

 わたしには、好きな人が居た。
 わたしのことを気にかけてくれて、何かあったら、心配してくれる。
 そんな人が居た。
 でも、その人と付き合ったけど、お互いの恋愛の価値観がすれ違って、長くは続かなかった。
 もう、今は別れた。
 会う手段も無いから、会ってもいない。

 わたしから、別れ話をした。
 これ以上、あの人を傷つけたくない。迷惑をかけたくない。
 そう思って、別れを切り出した。
 でも、今思えば、もっと良い方法があったんじゃない? って思っている。
 それから、たまに夢にその人が出てくる。
 そのほとんどが、その人とわたしが復縁してる夢。……忘れたいけど、忘れさせてくれない。
 何でだろう? その夢を見て、朝起きると、涙が出る。
 もう、やり直すのは無理だと思ってる。
 ……でも、忘れられない。

 そんな思いをしたまま、かなりの月日が経った。
 わたしは、新しい人と新しい姓で新しい人生を歩んでいた。
 わたしの身体の中には、新しい生命も授かっている。
 しかし、そんなある日、再びあの夢を見てしまった。
 あの人と仲直りをして、幸せになっている夢。
 あの人と笑い合っている夢。
 何で! 何でなの!?
 もう、忘れさせてよ!
 そう思い、自分が嫌になった。
 いつまでも、過去に囚われる自分が。
 とても、嫌になった。

 ……そんなある日のことだった。
 わたしの耳に、とんでもない知らせが入ってきた。
 あの人は、わたしと別れて少しした後、不慮の事故で天国に旅立っていた。
 ここで、わたしは1つあることを思った。
 あの人は、何で夢に出てくるか?
 それは、わたしのことをずっと、誰よりも大切に想っていたから、それが魂となって、夢に出てきてたんだ。
 あの人も、わたしも、あの頃は若かった。若すぎていた。
 きっとあの人は、初めて好きになったのが、わたしだったんだ。
 だから、わたしに別れを切り出されて、とても辛かったんだ。
 でも、それを乗り越えようとしていた。
 だけど、そんな中で、旅立ってしまったんだ。
 きっとあの人は、天国から、誰よりもわたしの幸せを祈ってたんだ。

 そう思ったわたしは、ベランダに出て、夜空に向かって、
「……ありがとう。あなたが上から見守ってくれたおかげで、わたしは今、とっても幸せです」
 とささやいた。
 少しだけ、雨粒がポツンと当たった気がした。

 ……あなたも、絶対に幸せになってね。

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