ヒトメボレ
真夏の暑さから逃げる様に
喫茶店へと逃げこんだ
2階へ上がって窓辺のテーブルに座り
窓から外を覗くと入道雲が遠くの方で浮かび
サーフボードを抱えた漢たちが歩いている。
喫茶店のドアの鐘カランと鳴る音が2階まで響いた
僕の隣の席に座った女性は
深く被った麦わら帽子をテーブルに置き
『今日も会いましたね。』と覗き込み笑顔で言った。
読めない本をテーブル隅に置いき
飲めないアイスコーヒーを頼んだが
氷が溶け量が増えていく。
テーブルの隅に置いてある本に気づき
君も読むんだねと言われたが
本の存在に忘れていた僕は
何の話をしているのかを一瞬考えてしまった。
彼女は不思議そうに
本を指差して優しく又笑った。
彼女のアイスコーヒーが届くと
一言も喋らず日が暮れるまで僕の隣のテーブルで
読書をしていただけだった。
同じテーブルで日が暮れるまで
他愛もない話をして次会う約束する。
そんな度胸も無く別れの時間がいつも来る。
どれもこれも全部
夏の一目惚れのせいにしてしまおう。