ノスタルジー
数日前の帰り道、17時を過ぎた頃だったが既に日は暮れていた。尾形亀之助の詩を読んだばかりで、なるほど「寒い」よりも「寒むい」が良いなぁなどと思いながら駅へと歩いていた。
「ノスタルジー」という言葉をはっきりと思い浮かべながら電車に乗り込み読みかけの本を開くと、「ノスタルジー」の語源について書かれた貢に当たった。
故郷ではないけれど、寒くなるとどうしても札幌のことを思い出す。
暑い時期も思いを馳せていたのだから、必ずしも「寒くなると」とは言えないか。けれど、寒くなってきたおかげで立体感が出てきた。
太陽が帰り着くころ
私は家路を歩き出した
人の流れから浮上して
過ぎた月日に降り立った
多くを感じてしまわないように
ただ手を動かし続けた
層と密度の手触りを残して
くすんだ色が染みついた
とけない気分を持ち帰ったのは
たしか、ふた月ほどの間だった
ふた月の間に
人も街も装いを変えた
心も厚着をおぼえたのか
そんな気分にさえ
慣れてしまった
赤焼けの空は濃紺に落ち着き
無数の一等星が降りてきた
転げて回っていた銀杏は
足元30センチほどのところで
次の春を待っていた