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Knock! Knock! Malaysia
DOOR to ASIA(以下DTA)は、2015年に東北の三陸地方で始まった、国を超えた相互の信頼関係を大事にするデザイナーズ・イン・レジデンス。アジア各国のデザイナー達が一定期間、一つの地域に滞在し、その地域に眠っている可能性を一緒に見つけ、デザインを通じて事業者/コミュニティとの間に小さくても確かな、未来の「扉」を開くプログラムです。東北から日本各地、そしてアジアの地域での開催により、信頼の輪が少しづつ広がっています。
第七回目のKnock! Knock!は、マレーシアです。
DTAに過去参加してくれた3名のデザイナーより、マレーシアの状況とコロナ禍の取り組みについてシェアしてもらいました。
Weng Nam Yap
Bits and pieces:Experiences in the midst of Pandemic.
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Weng Namはブランディングから印刷・デジタルまでの領域を手がけるデザイナー、デジタルアーティスト。Studio Clapの代表。DTA2018に参加。
「最初にマレーシアのコロナの状況から。
2020年2月に初のコロナウィルスの感染が確認され、その後1日の感染者数が20,000名を超えましたが、今では(2021年12月)1日の感染者数は5000名。
現在マスクで感染予防をしながら外出する人が増えていますが、外出を控えている人もまだ多いです。2021年3月11日にイスラム教の例祭でモスクにたくさん人が訪れた結果、第二波が発生し、レッドゾーンではバリケードが張られ住民は隔離されていました。また病床が足りず、隔離病床施設も作られました。他宗教国家のマレーシアは、宗教ごとに埋葬方法もそれぞれ別れます。
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パンデミックの2年間で首相が2回代わりました。政府からの援助、住宅ローンの6ヶ月の免除もありますが、長期化するパンデミックでは一時的なものです。
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また市民がスタートした『White Flag Campaign』。これは援助が必要な家が白旗を出し、周りの人たちが物資などをサポート。
その中でコロナ禍のスーパーヒーローも現れました。アンクルクートン(ポテトおじさん)は、募金を集め、毎日助けが必要な所に訪れて食料や物資を届けていました。彼の素晴らしい功績が認められ、英国故エリザベス女王から賞を頂きました。
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年金機構の年金積立金も、多くの方が今のお金が必要なため、残金は1/10の量になりました。将来のお金不安、貧しさから抜けられなくなってしまう人が多くなるのが心配されています。
Reset
私自身の仕事の状況は、遅れが出たり、スタートするプロジェクトが延期になったり、支払いの遅延。キャッシュフローは本当に重要。。。ですが、この長く続くパンデミックの中で自分自身色々なことをReset、考え直す機会になりました。
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Where's gutのMag (次のスピーカー)が手がけた、『Same time next yea』に参加し、来年の自分に送るメッセージを送りました。『Don’t put all eggs into one basket, and keep investing into yourself. すべての卵を 1 つのバスケットに入れるのではなく、自分自身に投資し続けてください。』あれから一年経ちましたが、今でも自分に送るメッセージは変わらないです。
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仕事の成功だけでなくて、健康、目標、家族の幸せ、自分たちを守るお金、このバランスが必要だと思いました。三商五行、3つの知恵、5つの行動とも言われます。
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プロジェクトの方では、旧正月のお祝い用のギフトをパンチカードと布地屋さんで売られている布を使った贈り物のパッケージで、布を使って食卓や外出を彩る商品提案。
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また彼のアート活動ではKLのまちの音を集め、暗い部屋の中でその音を探していくインタラクテブなアート展示の企画・リサーチをパンデミック前に行いました。その中でまちの景観がどんどん失われていることに気づき、色々な見せ方の模索をしていたところ、展示直前でロックダウンが始まってしまい、2年が経ちました。
2021年夏にバーチャルで開催しました。」(Weng Nam)
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Magdalene Wong
"Pause, Reflect, Reset."
Magは、ストーリーテリングを通して、持続可能なビジネスモデルと人間の平等・動物の権利・文化・環境などの問題をサポートする”人中心”のデザインを目指しています。DTA2017とDTA Bangkokに参加。クアラルンプールで、Where’s Gutデザインスタジオを運営。
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「コロナの状況は、先にWeng Namも触れましたがこの2年間でロックダウンが3回などなど。。。大変です。
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私達はスタジオを引っ越し、植物を入れたり、猫と過ごしたり、自然に触れたりして割と快適に過ごしています。スタジオメンバーは、2020年の2月から1年間、家で仕事をしていました。ワクチン2回接種後、スタジオに週一回集まるようになり、新しいデザイナーとプロジェクトマネージャーを雇いました。たくさんの変化がある中、私一人でマネージメントをするのが難しく、プロジェクトマネージャーがいることで助かっています。
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パンデミック後は、以前と比べてパッケージやデジタルの仕事が増えました。Cultiveatのeコマースとパッケージデザインプロジェクトが、特に印象的でした。パンデミックの中で、どんな需要に答えていくかのスピードも重要。彼らとのプロジェクトでデザインアワードも受賞しました。
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仕事とは別に、自分たちにとって意味・目的あるプロジェクトを意識して手がけています。パンデミック後、周りにいる人たちに感謝、親しい友人・クライアント、コミュニティとの関係性を繋ぐために、さまざまなプロジェクトを手がけました。
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2020年3月の一度目のロックダウンの後に「Same Time Next Year」をスタート。
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閉じこもって問題を話せない人たちの声を聞き、
みんなでこの問題を一緒に議論をできる機会を作った。
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PagiはHello!
自分たちの近所のお店、飲食店やカフェ、お店などを訪ねて紹介する本。
これらのプロジェクトをKL Art Book Fairで紹介する機会があり、たくさんの人たちに喜んでもらうことができました。
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パンデミックを乗り越えるのは、これらの意義あるプロジェクトと周りにいる人たち無しでは、正直難しかったです。
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『自分自身、自分の周囲の良い人たちのことを大事にし、良いことを一緒に作ること』をこの2年間で学びました。」(Mag)
Driv Loo
"Keep Calm and Carry On"
クアラルンプールを拠点に、LIE (Little Idea Everyday)というグラフィックデザインスタジオを運営。中小サイズのビジネスのブランディング・ビジュアルアイデンティティを手がけています。DrivはDTA2015に参加。Three Peaksさんは、Drivが提案してくれた可能性を信じて、今は三陸を代表するワイナリーの一つになっています。
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「パンデミックの当初は、私のクライアントがレストランなどの飲食関係が多く、プロジェクトの多くが延期やキャンセルとなりました。
パンデミックから学んだことは、
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他の収入源を探すこと
シェアはいい!簡単!
人のために時間を費やすのではなく、自分のために時間を使うこと
30年以上、インスタントヌードルしか作ったことがない私が、なんと料理を学びました。
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ソーシャルメディア、オンラインデザインイベントに参加や視聴し、他の国のデザインを学び、他の国のデザインコミュニティともつながれました。
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2回目のロックダウンでは、2021年で10歳となるLIEデザインスタジオをまとめたZineを製作しました。
3回目のロックダウンが長く続いたので、立体彫刻を学び、3Dプリンターを購入して、タトゥーアーティストでもあるガールフレンドと一緒に製作したトイキャラクターの販売をスタートしました。POWPOW TOYS。
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2021年後半にはコロナの状況が少し落ち着いてきて仕事も戻ってきました。
SEARCHという念願のマガジンの出版をスタート、マレーシアの伝説的なグラフィックデザイナーのインタビューをしました。
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KL ART BOOK 2021
そして、12月頭にクアラルンプールで初のART BOOK FAIR、KL ART BOOK 2021 を開催しました。人数を200名に限定して、1日3回に分けての開催でしたが、たくさんのクリエイティブコミュニティが一堂に集うことができました。新進気鋭のアーティストも参加し、今までデザインイベントが開催することができなかったので、熱気あるイベントになりました。次回は、海外のアーティストにも参加、是非ともきて欲しいです。
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最後に、My life chart:これを見ると人生の半分すぎていて、赤のところは外に入れずに家にいた月です。
人生半分、残りがそんなにないので、今後意義があるプロジェクトをこれからもっとやっていきたいです。 」(Driv)
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