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台湾のシビアな結婚挨拶
友人Oは日本人なのだが、台湾人の女性とつきあっていた。そんなOから聞いた話である。
台湾の結婚挨拶はシビアである。つまり、男性は自らの預金通帳を持参し、相手方の母親に見せて判定されるという儀式があるのだ。
この、一見超資本主義的な風習はつまり、「うちの大切な娘を養えるフロー及びストックがあるのか」というのを見極めることでもある。そう考えると、日本でも確かめこそしないが、結婚式やマイカーや家など、これから必要となるお金を用意する気概が試されている、気がしないでもない。
ともかく、Oも通帳を持参した。母は事業家であり、金銭にはシビアであるらしいと聞いている。お茶をいただき、一通りの挨拶をすませた後に「では」となって、通帳をうやうやしく差し出す。
目が細くなり、鋭く光る。苦々しい表情。Oは焦る。一応上場している会社には勤めているが、貯金が多い方ではない。時の流れが限りなくゼロに近づいている。心臓の鼓動が聴こえる。
「シャオ」
そう呟いて、母は自室へと歩いていってしまった。
妻になるはずだった女性に尋ねる。シャオって…「シャオは『小』という意味なの」
目の前が真っ暗になる。天井がゆっくり回り始める。汗が止まらない。
そこに、母が『メガネ』をかけて戻ってきた。
そうしてOは今、2人の子どもに恵まれ、台湾で幸せに暮らしている。
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