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写真撮影と現像のすべて【2022年ふつうの旅 #番外編】

今回の旅では、ミラーレスの一眼レフカメラで撮影して、パソコンに取り込んで現像して、SNSにUPすることで、旅のリズムをつくっている。ある種コンテンツ化することで、アウトプット欲やコミュニケーション欲、自己承認欲求を満たしている。そのトーンやスタイル、やり方について紹介したい。

何かを説明しようとして失敗してる看板

きっかけは、ここ数日で複数人から質問されたこと「機材は?現像は?写真の管理は?」なるほど、自分の楽しみのために趣味でやっていることだけど、そこに興味のある人がいるんだなと。

ブレジネフとホーネッカーによる「独裁者のキス」

やってて楽しいのは、実は現像である。撮影ももちろん楽しいんだけど、カメラは重いし、なんか今目の前にあることに集中している感じがなくて、旅としては少しもったいない感じがする。あくまでレンズ越しに観察している作業感というか。どういうトリミングがいいかな〜とかを考えていて、あんまり感動とかしてないというか。周りへの注意も必要だし、どうも客観的になりすぎる。

ドイツのブランデンブルク門とパリ広場の看板

ま、でも、そのスタンスが自分に合ってるとも言える。目の前のビジュアルにはすぐに飽きるし。それに比べて現像は目の前の写真のみに集中できるので、安心感と没頭がある。それは幸せなことなのだ。

現像はたのしい

いつからこのスタイルになったのか分からないけど、簡単に言うと「ドキュメンタリータッチな画角と被写体を、シネマライクなトーンで仕上げて」いる。

例えば是枝監督の映画、瀧本カメラマンの映像ルック、このあたりの青くなつかしくとろけるようにボケをコントロールしてる感じ。生々しいのに美しい。このあたりがお手本である。

光がオレンジで、影がブルー、背景のボケ具合がいい

そもそも持っているカメラ本体ソニーのα7sⅱは、実は、映像を撮るつもりで買った。暗い場所でも諧調がキレイに映るように高感度な本体で、その代わりに1240万画素しかない、というクセの強い本体なのだ。iPhone最新版より解像度が低い。

実物はけっこうコンパクト

だからなのか、結果的になのか、写真そのものをバキバキに仕上げるというより「映像を途中でキャプチャしたような」ドキュメンタリータッチなテイストになっているのだ。逆にいうと、解像度の低さをごまかすために、映像らしさに振っている、とも考えられる。

このあと何かが起こりそうな途中っぽさ

そして、撮影時に最も大切なのはレンズである。ボケ方、写り方、解像感なんて言葉で説明される繊細さ、諧調の豊かさ。これはいいレンズで撮ると段違いなのである。そして、写りがいいのは単焦点レンズなのだ。単焦点とは、ズームできない、焦点距離が固定されたレンズであり、だからこそ写りの良さが担保されている。

手前の葉っぱのボケ方は、まだまだスマホにはできない

ズームレンズはとても便利だ。集合写真の時はヒキにしてみんなを写し、一輪の花やケーキを撮りたければヨリにできる。しかし、単焦点の一点突破職人的な魅力にやられてしまったので、この一本のレンズだけ持って旅をしている。実は雄大な景色は苦手である。画角が狭い単焦点を使っているので。

レンズの写真だけのせても、ただの黒い筒ですね

55mmという焦点距離のレンズはソニー純正。SEL55F18Zという型番だ。F18はF値1.8を表している。つまり「明るくボケやすいレンズ」だ。この数値が小さいほどそうなる。初心者にやりがちなのが、すべての撮影において、F値をギリギリまで下げること。そうすると、ボケまくる写真ができる。簡単に「一眼レフ感」「シネマ感」が出る。bokeは日本人が編み出した手法とも言われている。こういう設定を「開放」と言ったりする。そして未だに初心者の自分も基本ずっと開放であるが、すごく近くのもの、例えば食べ物を撮るときはF値を上げてあまりボケないようにしたりする。そのほうが一皿の中でのボケ具合がちょうどよくなるのだ。

これは周りがボケすぎて失敗

ちなみにZはZeiss(ツァイス)の頭文字。パナソニックはライカレンズ、ソニーはツァイス、のようにそれぞれレンズのパートナーがいたりする。

何より大切なのは、55mmという数字である。iPhoneは35mm。実はiPhoneは結構な「広角レンズ」であり、目で見た範囲よりも広い範囲が写り、画面の端っこは歪んでいる。全世界で最も使われている便利な画角である。

左側がiPhoneでよく見る画角

55mmは「標準レンズ」を少し狭くしたくらいのサイズ感で、人間の目に近いと言われている。もっと狭くして85mmとかになるとポートレートに適していたり、200mmくらいになると「望遠レンズ」と呼ばれ、遠くのものが圧縮されて映る。

いろいろある

そんな中で、自分の生理にしっくり来たのは55mmであった。映像のドキュメンタリーっぽさは、カメラと被写体の近さにあると思っていて、人間が見つめる距離で撮影された写真が最も「そこにいる」感じがするのだ。

実際2~3mくらいの距離感で撮ってる

そうやって、55mmレンズにハマるとすぐに気がつく。「狭い」のだ。何かを見つける。カメラを構える。すべてが画面に収まらない。であれば、割り切って、被写体を切り取るしかない。顔なのか、手なのか、目線なのか。撮る時に必ず決断を迫られる。そこには主体性が必要となり、何を撮りたいのか問い続けられるのである。

デカくてロケットみたいな形のハットルグリムス教会は写りきらなかった

全体を入れたいなら自分が後ずさるしかない。その動物的な撮影スタイルも心地よい。そう見えたのだからそう撮るしかない、というような不自由ささえも楽しい。だからこそ、ドキュメンタリーに映るのだが。

そうして、人間っぽい距離感で、切り取られた画角で撮られた写真は、当たり前だが見たまんま、映ったまんまの写真データである。これをシネマっぽくしていくのが、自分のスタイルだ。これまでは徹底的にノンフィクションだったのが、ここで一気にファンタジーというかフィクショナルになる。

こんな感じに撮れた写真を・・・
グッとシネマっぽく!わかりますかね・・・

報道カメラマンなら絶対にそんなことはしないだろうが、ここからは絵づくりというか、もう元の素材の良さを活かすというよりソースで味付けしまくるようなイメージだ。もはや改造人間だ。フランス料理だ。

日本でもありそうな風景なんですが・・・
急に海外っぽく!はい、レタッチなんです

特に、映像っぽさ、シネマっぽさの秘密は、ティール&オレンジにある。これは、人間の肌を美しく見せると言われてるオレンジみと、その反対色であるブルーをいじって、白く明るい部分をオレンジに、暗く黒い部分をブルーにすることで、グッと雰囲気が変わるという、映像におけるカラーグレーディング手法である。さらに、グリーンを青く、ブルーをシアン方向に寄せることで、映像の世界にしかない鮮やかさが登場する。また、白と黒を、それぞれグレー方向にトーン調整することで、フィルム感こなれ感が演出できる。

明るい感じでいいんですけど・・・
よりシネマっぽい色味に寄せてます

つまり、映画っぽさを人工的につくっているのだ。できるだけ自然な画角と距離感で撮られたドキュメントを、フィクションの最高峰であるシネマライクに仕上げる。この背反する要素をアウフヘーベンする感じが、自分らしい写真のテイスト、スタイルになっている。

ええ感じの石を
さらにええ感じに

これらをadobe Photoshop Lightroomで、全ての写真にレタッチしていく。そうすると毎日数百枚の写真をいじることになり、今度は作業の簡略化が求められる。だってそればっかりやって旅そのものがおろそかになるのって時間がもったいなさすぎる。旅をしながらYouTube配信している人たちを尊敬する。とんでもない労力だ。

数百枚撮ったら放置しがちだが、毎日やる

自分は無理なくいい感じのレタッチにしたいので、そもそも撮影の段階で一枚2〜3MBの軽いデータ設定にしている。これは印刷するならA4まで、というデータ容量だ。ポスターにはとてもできない。しないからいい。もしやるとしたら写真集であるが、この場合も、むしろ低容量を逆手にとってミニブックにしたい。この時、1240万画素という容量の少なさがプラスに作用する。カメラ本来のポテンシャルをあまり下げなくてもいいから。

どうでもいい写真もどんどん撮る。データ軽いから

そして、現像についてはティール&オレンジの設定をプリセットとして保存してあるので、ワンタッチで数百枚が一気にシネマライクになる。それをざっと眺めた時に、明るすぎる、暗すぎる、青すぎる、黄色すぎる、などの違和感を感じる数枚があるので、調整していく。そして、数百枚をiCloudにUP。同時にGoogleフォトにも保存。(実は現像作業をしているLightroomのフォルダにも保存されている)

Googleフォトは共有機能が便利

その後、1日10枚をセレクトし、Instagramに UPする。FacebookストーリーズTwitterにも連携させて、作業は終わり。だいたい1〜1.5hくらいだろうか。枚数によるが、寝る前にちょうどいいくらいの作業ボリュームだ。基本的に夜は暇だから。(お酒飲まないし夜遊びしないので…)

溜まっていく感じがうれしい。ストーリーズもたのしい

それが日々のルーティンで、ひとつの国が終わったところでまとめてnoteに記事化する。これくらいの大きさまでなら今のデータ容量で十分なのだ。

記録にもなるし、文章の練習にもなって、いいことだらけ

こうやって、撮影、現像しながら旅を続けている。ちょこちょこ仕事もあるが、どちらかというと毎日のこの作業が自分にとってのWORKとなっていて、とても楽しい。

こんな鮮やかな空と緑じゃなかったが、もはや思い出が補正されている


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