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ホステルでAirPodsと別れ、移民問題を肌で感じる【2022年ふつうの旅 #15オーストリア】

観光、仕事、生活を楽しむ  #2022年ふつうの旅
プラハからユーロレイルに乗ってウィーンへ来た。

ドナウ川、近くで見たらふつうの川

到着したホステルはカオスと化していた。いい季節なのだろう。修学旅行生らしいティーンが溢れている。フロントもうんざりしていて、対応も適当だ。ガキが多いとうんざりする。言いすぎた。元気なお子さんが多いとにぎやかでよろしおすなあ。

教会って派手なとこはとことん派手

初日は、回るべき観光地をいくつか抑え、オーケストラを聴いたりと、ウィーンらしさを楽しんだ。ドイツ文化圏なので、トラムや電車のシステムも言葉も同じだが、交通サインはこちらの方がかわいい

かわいい

プラハのオケは大人数で合唱もあって格式の高い本格派であったが、こちらのオケは、モーツァルトのコスプレ拍手のコール&レスポンス、最後は指揮棒をぶん投げて終わった。ロックバンドのピックのように。音楽の近さを感じた。ちなみに演奏はめちゃくちゃうまかった。百戦錬磨のセッションバンドのようだった。これが音楽の都の懐の深さなのだろうか。プラハの方が好きだったが。

こなれ感がいやらしかった

部屋に帰ると、6つのベッドに対して、10人ほどが溢れている。異常事態である。チェックインの際にとっておいたベッドにも誰かが寝ている。うっかり充電しっぱなしにしていたAirPodsはもちろん消えてなくなっており、他にも、水1リットル耳かきがなくなっていた。治安のいい国オーストリアの首都ウィーンに油断していたのかもしれない。あくまで貴重品は鍵をかけて自己管理しなくてはいけない。

「飛行機雲は温暖化の原因なんだよな〜」と現実逃避した

最初は「あれ?インド人がめっちゃいるな」と思った。勝手にベッドに寝る。金を払わず、たくさん泊まろうとする。これはインドだと。ごめんインド。調べたら、オーストリアはいま、移民問題で揺れていた。アフリカで起きた「アラブの春」による民主化で内戦状態になった国々や、そのほかの色々な事情で。

スニッツェルという豚のカツが素朴でうまい

モロッコ、アルジェリア、アフガニスタン。アフリカや中東の情勢不安な国々から、たくさんの人がやってくる。図らずも、地球全体の南北問題を肌で感じることになった。元からある土地で、寝る場所や、財産が侵害され、マナーやルールの違いで衝突が起こる。そのときには怒りもわく。

トラムかわいい

「ふざけんなや!なんやねん!」と別のベッドにスマホをぶん投げ、怒りをあらわにしてしまい、同部屋のヨーロッパ人(たぶんスペイン人)がフロントに連絡してくれた。そうして、移民?のやつらはいなくなった。ホステルの一部屋で起きた、ほんの小さないざこざだが、自分が怒りっぽいこと、何かを盗まれたのではないか、と目の前の人を疑うこと、こうして戦争にまで繋がるのかも、と思ったことなど、振り返るとたくさんの学びがあった。

馬も見飽きてきた

そして、AirPodsを「探す」機能で、ひたすらホステル内を歩き回ったが、まったく出てこなかった。フロントにも5回くらい届いてないか聞いてうんざりされた。AirPodsが帰ってこないのであれば、もういい。爆破させて半径30cmを粉々にしたい。せめて、もしパクったやつがいたら、そいつの鼓膜を破壊したい。という衝動に襲われた。こうして争いは繰り返し、相互の対話はなされず、世界の分断は進むのだろうか。

あらためて、ホステルなどの、同部屋で知らないやつがいて、そこで眠る。というときに、あいさつすることの重要性を感じた。心理的な安心感が違う。そうやって、笑顔ですべての荷物に鍵をかける心の鍵だけ開けておくようなイメージ。自分はまだそのレベルに達していない。ぜんぶ顔に出る。

秋なのに、意外と花屋でひまわりを見かける

俺のベッド(というか本来は誰のものでもないが、先に荷物を置いたベッド)で寝ていたやつに、「俺のAirPods知らない?」と聞いても「ノー」と帰ってくるので、それはもう信じるしかないし「探す」機能で音を出そうとしても鳴らないから、たぶんこいつではないのであろう。でも怒りをどこにぶつけていいかわからない。

イライラしたまま、電車にのって、モーツァルトの生まれ故郷であるザルツブルクについた。「サウンド・オブ・ミュージック」のロケ地でもある。中谷美紀が住んでいるとも言われている。しかし、AirPodsはそこにはないのだ。

ロケ地として有名らしいミラベルの庭園

何もかもが噛み合わないまま到着し、初日に観光を済ませる。オクトーバーフェストのような祭りをやっていて、いい写真が撮れたので、少し落ち着く。カメラはもはや自分にとっての鎮静剤や瞑想や鉄分やカルシウムの役割を持っているようだ。

城から見る街
まつり
うまそう

駅前には、明らかに移民の人たちが溜まっていて、路上でタバコを吸い、酒を飲んでいた。移民の中には、ドイツから送還された人もいるらしい。浮浪者や物乞いの数も今までの都市と比べて増えている。当然、北欧ではほとんど目に入らない。外にいたら寒さで死ぬので。これが南北問題なのだろうか。今後の都市はどうなるのか。アフリカに近いイタリアやスペインは?不安が募った。

等身大パネル
モーツァルトの生家 黄色い

ザルツブルクは塩の砦という意味で、丘の上の要塞は見事であった。教会の天井はいつだって高かった。これは日本で言う「神社の真ん中は神様が通る」的な、デザインとルールによって神を感じるシステムだなと思う。首がいたい。

ガシッとしてた
天井高い
首、いたい

そして、オーケストラ、石畳、教会、城に飽きた。

ハプスブルク家が王家を発展させてきたオーストリア。本を読み、政略結婚によるローマ教皇や皇帝との血縁を活用して、いかに家督を繁栄させてきたかを学ぶ。マリア・テレジア(マリー・アントワネットの母)の超人ぶりがすごい。その銅像の指が指し示す、自然史博物館には、数えきれないほどの絵や宝物があり、豊穣な文化と財産を感じさせられた。

フリードリヒのライバル、マリア・テレジア

そして、イタリアのメディチ家やフランスのブルボン王朝などを調べようかな、と思ったところで、なんだか嫌になった。めんどくせえ。もう勝手に結婚でも繁栄でもしてくれ。

飽きたとはいえ、通りがかるとカメラ向けてしまう

旅も半分を迎え、だいぶ、になってきている。ザルツブルクでモンベルの折りたたみ傘も紛失した。耳かきはモールで見つからず綿棒を買った。有線のイヤホンで街を歩きながら「奇奇怪怪明解事典」を聴くも、ボソボソ声でうまく聞き取れない。失って初めて気づく、ノイズキャンセリングイヤホンの価値。

カフェ・ザッハーのザッハトルテはジャムが甘い

また腹が立ってきた。盗んだ(紛失した)誰かに。対応が適当なホステルのフロントに。防犯意識の低い自分に。もっといいホテルに泊まらなかったケチさに。そして、移民問題を解決できない社会システムに。

南京錠だらけのマカルト橋

イタリアでは、どこかの田舎によって安い個室に泊まり、じっくりとアフリカの予定を立てたいが、さすが世界の観光地。どこも高いか、安いとキャンプ場とかである。田舎に行くのは、スペインポルトガルにしようかなと思った。

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モーツァルトん家のバイオリン

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