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ゴールデンカムイに憧れてチタタプのオハウを作ってみる

自粛期間中に在宅支援として、ヤンジャン!というアプリで『ゴールデンカムイ』110話分が期間限定で無料公開されていたので試しに読んでみた。そしてまんまとハマってしまったのだ。

未読の方に一応、漫画の内容を説明しておくと、『ゴールデンカムイ』とは明治末期の北海道を舞台に、金塊を巡って争うバトル漫画の体を装った、アイヌグルメギャグ漫画である。

シリアスとギャグの絶妙なバランス、ジェットコースターのようにテンポよく進むストーリー、圧倒的画力と知識量……気がつけば心は雄大な北海道の大地へ。ハマりすぎて友人とのLINEのやりとりにもナチュラルにアイヌ語の下ネタを使ってしまう始末。大英博物館が昨年開催したマンガ展のメインビジュアルにヒロインのアシリパさんを起用したのも今更ながら非常に頷ける。

嗚呼、コロナが落ち着いて自由に旅行に行けるようになったら北海道へ行きたい……アイヌ文化のこともっと知りたい……ウコチャヌプコロ……姉畑先生……。突然、身のうちに燃え盛ったミーハーなアイヌ文化への興味を燻らせたまま、どこへも行けず私は悶々としていた。

そんな折、スーパーでプクサ(行者ニンニク)を見つけた。プクサは山奥に生えるユリ科の山野草で、強いニンニク臭が特徴である。主人公たちがよく食べている野草の一つだ。

日常に突然現れたゴールデンカムイの要素に、私はスーパーでひそかに狂喜乱舞した。ひと束350円強という普段なら、なかなか手に取らない価格帯だったが、脳内がゴールデンカムイに支配されているため、迷うことなくカゴに入れた。このプクサでアイヌ料理を作ってみよう。そして少しでもアイヌの風を感じたい。

プクサでチタタプを作ろう

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チタタプ、それはゴールデンカムイでもっとも多く登場するアイヌ料理だ。直訳すると「チ(我々が)タタ(刻む)プ(もの)」という意味らしく、要はタタキである。使用する肉は何でも良く、作中では、鮭、ヒグマ、リス、エゾジカと様々な食材で作られたチタタプが登場する。

このプクサを使ってチタタプを作り、『ゴールデンカムイ』の世界を少しでも体感してやろう。そう決めたものの、肝心のメイン食材である肉が決まらない。本当はヒグマやエゾジカなどの獣肉で作りたいのだけど、なかなか近所のスーパーではお目にかからない。こんな時期なのでわざわざ遠方の食材店まで探しに行くのも気が引ける。鮭は旬じゃないし、鶏肉はベタだし……。

悩んだあげく、今回は旬の食材であるカツオを使うことにした。北海道関係なくないか?とツッコミを入れられそうだけど、カツオなら魚介でありながら肉っぽさもあるし、秋には北海道南部まで北上するし……。とゴニョゴニョ言い訳してみたけど要はカツオが安かったのだ。(さらに新型コロナの影響で上モノのカツオがスーパーに出回っているらしいという記事を読んだので)

いざ調理

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買ってきたカツオに、塩ひとつまみ加えて、包丁2本で「チタタプ……チタタプ……」と念じながら叩いていく。夜に部屋で独りブツブツ言いながらカツオをミンチ状にしているアラサーというのはなかなかな絵面であろう。でも自分を出来るだけ客観視しないようにするのは得意なので安心してほしい。

本来であれば作中に登場するような輪切りのまな板でチタタプしたかったのだが、今回は普通の木のまな板で。

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プクサを加えてさらにチタタプ。

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いい感じにミンチ状になってきた。このままなめろうのように食しても良いのだけど、汁物が食べたかったのでオハウ(アイヌ語で温かい汁物の意味)にして食べることにした。

昆布出汁の中に銀杏切りにした大根を入れて、中火で火が通るまでしばらく煮る。

大根が煮えたら弱火にして、チタタプをスプーンでつみれにして鍋にイン。

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ざっくりカットしたプクサと、スーパーの選外品コーナーに転がっていたウルイ(ギボウシ)、冷凍庫の中で放置していた舞茸も入れて蓋をする。

弱火でしばらく煮込み、全体に火が通ったら、塩で味を整えて完成。

仕上げに本当はアイヌ料理によく使われる香辛料、シケレペ(キハダの実)を使いたかったのだけど、手に入らないので同じくミカン科である山椒をふってみた。

感想とか

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ヒンナヒンナ。非常に美味しい。ちゃんと昆布から出汁を取っていたこともあり、優しいお味のつみれ汁である。プクサがもっと主張するかと思ったが、火を通すとニンニク臭がニラくらいに落ち着いて、いい感じに全体と調和している。プクサと仕上げにふった山椒がカツオの生臭さを消してくれている。

(関係ないけど、日本の南端と北端の地域が両方とも昆布を多用する食文化なの興味深いですね)

翌日はオソマ、いや、自家製味噌を入れて食べてみたのだけどこちらも美味しかった。

チタタプを作ることによって少しは落ち着くかと思われたアイヌ文化への熱はさらにその勢いを増してしまった。アイヌの人々が使っていた薬草やスパイスにも興味が出てきたので、北海道立衛生研究所にある薬用植物園にも行きたい。待っていてくれ、魅惑の北の大地よ……。

次回はエゾジカかクマ肉とプクサキナ(ニリンソウ)をなんとか手に入れて、より本格的なチタタプを作ってみたいと思う。


■今回使用した材料(2〜3人前)
・カツオ1パック
・プクサ(行者ニンニク)5本ほど
・大根(適量)
・舞茸(適量)
・ウルイ(適量)
・昆布1枚



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