美容系エステLPの観察とRIZAPWOMANの寄り添うカウンセリング力

自分が扱う商品やサービスのユーザー理解を深めるために、女性の心理に近づく努力をすることがある。身近な女性を観察することで得られる発見もあるが、ひとつおすすめなのが美容系サービスのLP(ランディングページ)を観察することだ。今回は美容エステのLPを観察してみるとしよう。

美容系エステサービスについては門外漢ではあるが、大きく以下の4象限に分けてみる。

まず消費者がネガティブな状況を解決したいか、今よりもポジティブな状況にしたいか、のサービスに期待する効能の軸と、もう一つは、消費者ご当人にとって解決したい沢山のなかで優先度が高い重要なテーマであるかないか、の必然の軸だ。この4象限の中のどこに位置しているかでLPの訴求メッセージは変わるだろう。

実際に美容エステサービスのLPを見てみる。

「約92.3%OFF」(A社)

「-28.7cmを体験」(B社)

「5ヶ月分無料!」(C社)

各社、おどろおどろしいほどの激安セール価格と効果抜群宣言である。小数点第一位まで明らかにした価格OFF宣言をこれまで目にしたことがないし、-28.7cmも細くなったら間違いなく病を患っていると思われるだろう。これらのメッセージは、4象限の中のネガティブ☓必然ありに位置している消費者には特に響くと思われる。太っている躰を元に戻したい(ネガティブ☓必然あり)消費者の場合、馬鹿ではないので体験エステ後に同意をすれば高額のエステ価格を支払う覚悟が必要であることを理解しているが、ネガティブな今の状況をすぐに解決したい必然性とあまりの激安セール価格がトリガーとなり、半ば衝動的に体験エステを予約する。

それでは、今すぐもっと痩せてキラキラになりたい(ポジティブ☓必然あり)消費者の場合、激安セール価格と効果抜群宣言だけで心が動かされるだろうか?

わたしは動かされないと思う。なぜなら、今よりもキレイになりたい女性にとって最も重視するのは、激安体験価格でもなく信じがたいほどの驚異的な効果でもなく、美しくなりたいという期待と不安にどれだけ寄り添ってくれそうなお店であるのか、心も躰もリフレッシュできそうなお店であるか、のカウンセリング力と心地良い体験である。そんな彼女たちにとっては、激安体験価格や極端な効果訴求は無理やり説得されている感が強く、居心地が悪いと感じてしまうだろう。

今すぐもっと痩せてキラキラになりたい(ポジティブ☓必然あり)消費者に必要なLPはどういうものか、そのヒントになるのがRIZAPWOMANのアンケートを模したLPだ。

このLPは全5問のアンケート形式になっていて、回答すると無料カウンセリングが受けられる仕組みだ。アンケートの質問項目は実は用意周到に計算して作られていて、なぜこのページを訪れたのかを再確認し、ライザップに行く理由を自己説得するように仕掛けられている。

「あなたはダイエットが上手くいかなかった経験がありますか?【必須】」
「あなたがダイエットをする目的はなんですか?該当する項目にチェックをお願いします。」
「RIZAPの成功事例を見て、あなたもRIZAPに行けばダイエットが成功すると思いますか?【必須】」
「あなたがRIZAPを利用しない理由として該当する項目にチェックをお願いします。【必須】」
「以下の中で、あなたが興味を惹かれるサービスはどれですか。【必須】」

価格や効能訴求は無理やり説得されている感が強いが、ライザップウーマンの場合は自分で自分を説得しているから納得感が強い。そして、このアンケートが自分の気持ちに寄り添うカウンセリングの役割を見事に果たしている。説得された感よりも納得感が強いLP体験は、その後の入会率にも良い影響を与えると私は思う。

多くの商品やサービスはWeb上のコンバージョンを目的としてLPを制作している。楽天市場でよく接触する縦型LPはまさにこれでもかとベネフィットをてんこ盛りに詰め込む。商品の放つ魅力的な画像、ベネフィット、消費者の声、お得なオファー、競合の成功事例は即座に踏襲され、どれも似通ったLPが仕上がる。多くの消費者はLPのメッセージの半分はまやかしと差し引いて眺めているのではないだろうか?

消費者の状況を見極め、消費者の心理に近づき、どのような接客体験を消費者が望んでいるのか、それを見極めたうえで、これでもかといったベネフィット訴求一辺倒のLP作りをゼロから見直し、消費者自らが納得して購入・体験していただくLPを再考する必要があるのではないだろうか?

ところで、Googleアカウントの広告設定を見たら私の属性は18歳〜44歳の女性になっていた......。少しは女性の心理に近づけただろうか(笑)?

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