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アイドルになりたかった

誰も見てくれないと泣いてた
自ら血を流してた貴女
細い目が嫌いで鏡を殴って
毎朝小細工してた貴女

人は期待した言葉はくれやしない
最後は点数しか見てくれない
もうどの薬で眠くなってるかもわからないけど
今年も生きてました

25歳の大人になりました
伝えたいこと表したいこと無くなっちゃいました
ずっと苦しんでいた幼い私を救うため
仕方なくペンを走らせています

お母さん私のこと可愛い?って聞いた時
素朴な可愛さね 芸能人は出来なさそうねって言いましたね
現実を見せたつもりかもしれませんが
産みの親くらいは世界一可愛いと言って欲しかったです

お前はブスだと言われた時
菌がついたと手を洗われた時
お姫様役は無理だと言われた時
私の写真が画面に映し出されて静かになった時
頑張って笑いました
気付けば菓子パンとミルクティーと貝印のカミソリが私のお友達でした

歌って踊れて誰よりも可愛いかったら
どのメンバーよりも私のペンライトが多くって
アンチが専用のアカウントを作ってくれて
そんなアイドルになりたかった

みんなから羨望と称賛と嫉妬を受けて輝いて
適当なポエムを添えた自撮りツイートがバズって
24歳で引退して普通の女の子に戻る
そんなアイドルになりたかった

そう思いながら
私は今日もベージュや白を纏って
マットのアイシャドウとワンカラーのネイル
社員証を下げて"満たされた"顔をしています

もう私は「大人の女性」でいることしか許されなくなりました
ツインテール黒髪姫カット、フリルブラウスにミニスカートの代わりに
シースルー前髪を緩く巻いて、無地のニットにパンプスを履いています

許されるなら週末はメイド喫茶やコンカフェで働いてみたいです
でももう25歳で、愛する恋人がいて、守るべき社会的地位があります
何より、誰よりも"お姉さん"になってしまいます

生まれ変わったらアイドルになりたい
苦しいことも汚い世界なのもある程度知っています
オタクがキモいことも知っています
でも、有り余る承認欲求が満たされ満足するなら。
「存在してくれてありがとう」と大勢から拍手され、名前を呼ばれるなら。
そんな人生も送ってみたかったです。

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