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【ホラー映画シナリオ】闇夜の物体 【「禍話」リライト番外編】

【前】

 本記事は、「禍話リライト」のシナリオ(脚本)版となります。

Q.これはなんですか?

A.「禍話を原作とした短編映画の脚本」です。詳細は上↑の記事をごらんください。イベントの詳細はこちら↓

 当シナリオは採用されたらしいので、12月18日(日)のライブで映像化&DVD化・配信される予定……でしたが、
 諸般の事情(キャストさんのご都合)で今回は見送りになったっぽいです。

「映画脚本」へと書き換える都合上、ツイキャスで話された内容からものすごく大幅な脚色がなされています。
 その点、ご了承ください。

●○●○●

【禍話短編シナリオ ②】
「闇夜の物体」



【シーン1】
オフィスビルの前/夜


 美代がビルから出てくる。
 スーツ姿でバッグを肩にかけ、仕事終わりらしく少し疲れた様子。
 いかにも仕事ができる真面目な人間、といった容姿。
 ビルを出てから、道の左右を見る。
 この様子に被せて、

ナレーション
「これは、会社員である美代さんが体験した、UFOにまつわるお話です。
 とは言え、宇宙人は出てきません。UFOすら出てきません。
 どういう話かって? まぁ、お聞きください……」

 美代、幾度も道の左右に目をやる。

美代
「あれっ?」

 少し歩道を進んで何かを探すそぶり。
 だが見当たらない。

美代
「あれーっ……?」

 ビル前まで戻り、スマホを出す。

 手に持っているスマホの、
 メッセージアプリ(LINE)の画面が映る。

友人・くるみからの文
〈先に出てるから
 玄関のあたりで今日子と待ってるね!〉

美代の返信
〈オッケー ごめんね!〉

 美代、画面から顔を上げてもう一度左右を見渡す。
 が、くるみも今日子もいない。

 美代、不満そうにため息をつき、メッセージを送る。

美代が入力する文
〈ゴメン今出たんだけど
 どこいる?〉

 美代、再び顔を上げる。
 と、すぐ返信音。

くるみからの返信
〈公園
 ちょっと行った所の公園にいる〉

 その文面を見て顔をしかめる美代。

美代
「公園……? (首をかしげながら)」


【シーン2】
 公園/同日夜

 不審な顔つきのまま、公園前まで来た美代。
 中に入る。見回す。
 さほど大きい公園ではない。

美代
「あっ」

 美代、一点に目をやって、そこを目がけるように歩いていく。


【シーン3】
 同場所/同時刻

 ひらけた場所、常夜灯のそばに、くるみと今日子が立っている。
 並んでいて、人ひとりぶんくらい間隔を空けている。
 ふたりともスーツ姿にバッグ。
 美代と同様、できる人間といった容姿。
 
 ふたり揃って、夜の空を見上げている。
 じっくり観察するような、真面目な顔つき。

 その二人の背後、人ひとりぶんの間隔に挟まるように近づいてくる美代。
 歩いてきながら、若干の怒りを込めつつ、

美代
「ねぇ~、待ってるって言ったじゃん~。探したんだよ~」

 美代、くるみと今日子の間に挟まるような位置の、少し後ろで立ち止まる。
 夜空を見上げている二人に奇妙さを覚える。

美代
「 (ふたりの背を交互に見ながら) えっ、あの。ふたりとも、何してんの?」

 くるみ、夜空から目を離さずに、

くるみ
「UFO」

美代
「え?」 

くるみ
「UFO見てるの」

美代
「えっ、どこどこ?」

 美代、空を見上げる。

 夜空。
 月や雲しかない。
 都会なので星も見えない。
 ほぼ漆黒の闇。
 UFOらしきものはまるでない。

 美代、眉をひそめて二人の背中に視線を戻す

美代
「あの、UFOって、どこ?」

 くるみと今日子、振り返ってじっと美代を見る。

 その目つき。
「どこ?」と聞いてくるのが信じられない、という疑念の目つき。
 たとえば、目の前に東京タワーがあるのに、「東京タワーってどこ?」と言われたような……

くるみ
「いや、どこって言うか。あそこじゃん」
 
 くるみ、言いながら指で空の曖昧な場所をさし、そのまままた、夜空に視線を戻す。

今日子
「ほら、すごいでしょあれ。マジであるんだねぇ……」

 今日子も言って、見上げ直す。

 美代、困惑して取り残されたような気持ち。
 ふたりとも、口々に、

今日子
「UFOっていうか、空飛ぶ円盤っていうかさ」

くるみ
「飛ぶっていうか、浮いてる……飛ぶのかな? あれ」

今日子
「どうなんだろ?」

 美代、会話する二人を交互に見やりながら、首をかしげ、また空を見上げる。
 が、やはり夜空には何もない。

 どこかにそれらしきモノがあるのだろうか? と確認する美代の視点……のように、空をゆっくり、ゆっくりと舐めていくカメラ。

 その真っ暗な夜空に被さって、二人の声。

くるみ
「あれ何って言うんだっけ? 形」

今日子
「なんだっけ?」

くるみ
「楕円形っていうか……」

今日子
「アメフトのボールみたいな」

くるみ
「そうそう、それ。なんか呼び名あったよね」

今日子
「あれってさ、あんなに光るのに、ここは明るくならないんだね」

くるみ
「あっ、そうだよね! 不思議……」

今日子
「っていうか、大きくない? 遠いからわかりづらいけど」

くるみ
「大きいよね……この距離であんなに大きいんだから……」

 しかし、カメラは真っ暗な夜空しか映さない。

 美代、ふたりの背中を見る。
 気味悪そうな表情を浮かべる。
 怖くなってきて、バッグを肩にかけ直して、身を縮めるようにする。
 それに被せて、

ナレーション
「美代さんの友達ふたりは、変な冗談をやるようなタイプではありません。
 それにふたりとも真面目な顔で、演技にも思えなかったそうです。
 5分ほど経った頃でしょうか……」

 くるみと今日子、視線を同じ、斜め上方向にサッと走らせる。

くるみ・今日子(同時に)
「あっ……」

 その間に立つ美代、一瞬遅れて

美代
「え?」

くるみ
「(美代の声には反応せず)……行っちゃったね」 

今日子
「(同上)飛んでったね……」

くるみ
「いやぁ~、すごかったね」

今日子
「すごいの見ちゃった」

 ふたり、歩き出す。

美代
「(驚いて)えっ、帰るの?」

 ふたり、足を止めて振り返る

くるみ
「うん、帰るけど」

今日子
「美代ちゃんも帰ろ?」

美代
「あ……うん……。帰ろっか……」

 夜の公園、先を歩くふたり。
 うしろから美代が、こわごわとした足取りでついていく。
 その場から離れて、三人で遠ざかっていく。
 その光景に被せて、

ナレーション
「……この翌日ごろから、ふたりの様子がおかしくなってしまったそうです」


【シーン3】
 別の公園のベンチ/別の日の昼

 美代と今日子がベンチで昼食をとっている。

美代
「(笑いながら)そんでさぁ、その人なんて言ったと思う?」

 今日子、サンドイッチを持ったまま、昼の空を見上げている。
 ぼんやりとした瞳。

美代
「どうしたの?」

今日子
「ん? いや、ちょっと……(空から目を動かさない)」

【シーン4】
 路上、美代の帰途/夜

 スマホを手に、くるみにメッセージを送っている美代。

美代の文章
〈じゃあまた明日ね!
 オツカレ!〉

 返信が来る。

くるみからの文章
〈今日はマジで疲れたね!
 色々ありがと!〉

 すぐに別口で返信が入る。

くるみからの文章
〈TC 6258 ヤ暦 大火
 →600年? 体外から開発 懇談〉

 美代、意味がわからず、眉を寄せる。
 スマホに入力。

美代の文章
〈これ↑って何?〉

 返信がすぐ来る。

くるみからの文章
〈ごめん、急ぎでメモしたくて〉
 

 スマホに照らされる美代の不安げな顔。
 それに被せて、

ナレーション
「……しばらくすると友達ふたりは、会社に来なくなってしまいました」


【シーン5】
 街の路上/昼

 スーツ姿の美代が、歩きながら電話をかけている。

美代
「(心配と怒り)ちょっとさぁ、どうしたの? 具合悪いの? 大丈夫?」

今日子の声(電話)
「あぁごめん、忙しくなっちゃって」

美代
「忙しいってなに? 連絡もしないで……えっ今どこいんの? 家? 病院とか?」

今日子の声(電話)
「公園」

美代
「は?(思わず立ち止まる)」

今日子の声(電話)
「ほら、UFO見た、公園」


【シーン6】
 先の公園/昼

 美代が不安げに探していると、広場の隅、草むらの端にある真新しいダンボールハウスに目が止まる。
 ハウスというよりも、膝を抱えた人間がひとり入るくらいの小さなもの。

 前部には布が垂らしてある。
 その下に、女物の綺麗な靴。

 美代、怯えた足取りで近づく。
 布を上げる。

 中で、今日子が膝を抱えて小さくなって座っている。
 普段着で、ライトの類はなく真っ暗。
 足元にスマホが置いてある。
 
 今日子は首と視線をグッと真上に向けている。
 上は単なる、ダンボールの天井。

 美代、しばらく絶句してから、

美代
「あの……なに、してんの……?」

今日子
「(上を向いたまま 平坦な口調で) UFO。UFO見てるの」

 美代、言葉を失う。
 今日子、ゆるりと首を戻して美代を見る。
 ダンボールの中、薄暗がりに光る目。

今日子
「見えなくなっちゃうから、そこ閉めてくんない?」

 何かに取り憑かれたようなその顔。


【シーン7】
 公園/同日、昼

 美代、ベンチに座って電話をかけている。
 今日子の様子に衝撃を受け動揺し、膝や腕をさすっている。

美代
「……あっ、もしもし、くるみ? (探るような小声)あのさ……どうしたの? 今、家にいる?」

くるみの声(電話)
「うん、いるよ」

美代
「ハァ……(安堵のため息) ダメだよ無断欠勤とか……それで何? 調子悪いの?」

くるみの声(電話)
「うぅん。ちょっといろいろあって」

美代
「いろいろって……ねぇ今から家に行っていい?」

くるみの声(電話)
「いいよ。あ、部屋のカギ開いてるから、そのまま入ってきて」

 美代のスマホを握る手がこわばる。

美代
「……カギ、かけてないの?」


【シーン8】
 くるみのマンションの部屋/昼

 美代はそっとドアを開ける。
 部屋の中に昼の陽光が射し込む。
 廊下は電気がついておらず、暗い。
 奥の部屋も、カーテンを引いているのかほぼ真っ暗。

美代
「(勇気を振り絞る感じで) き、来たよ……!」

 奥の部屋から、

くるみ
「(くぐもった声) いいよー。上がってー」

 そろそろと靴を脱いで上がる美代
 綱を渡るような足取りと顔つきで暗い廊下を歩き、中扉を開けて、部屋の中へ。
 入口に立ち、部屋の内部を確かめる。

 女性が住んでいるといった感じの、ごく普通の部屋。
 しかし、誰もいない。

美代
「え…… どこ?」

くるみ
「(くぐもった声) 押し入れ」

 美代、びくりとして押し入れの戸に目を当てる。

 ぴったりとしまっている押し入れの戸。
 その近くに、中に入れていたらしい衣装ケースやダンボールなどが積んである。

 ゆっくり近づいていき、膝をつき、取っ手に指をやる。
 怯えながら、つ、つつつ、と開ける。

 暗がりの中、下段にくるみがいる。
 今日子と同じ体勢、膝を抱えて座っていて、首と顔をグッと真上に向けている。
 見つめている場所には当然、押し入れの上下の仕切り板しかない。

 わけがわからず怯えて泣きそうな顔で、

美代
「あの……あのさ……なにしてんの?」

 くるみ、上を向いたまま、

くるみ
「UFO」

 ゆっくりと美代に顔を向ける。

くるみ
「UFOが見えるの」

 美代、恐怖や不安のようなものをこらえながら、

美代
「あのさ…… あのさ? 私、よくわかんないから、一回……一回出てきてくれない?」

くるみ
「え? ……いいけど」

 存外に軽く了承し、くるみはのそのそと押し入れから出てくる。


【シーン9】
 同室/昼

 電気がついている。
 開けられたままの押し入れ。

 テーブルに向かい合って美代とくるみが座っている。
 美代、こわばった顔で押し入れを見ている
 そこから視線を転じ、テーブルの上へ。

 くるみが出してくれたお茶が二つ置いてある。美代とくるみ自身、それぞれの分。
 くるみは妙に落ち着いた表情。

 美代、相手の顔色を伺いつつ、

美代
「それでさ……UFO、見えるの?」

くるみ
「(明るい口調で) そうそう。今日子ちゃんがさぁ、部屋で探し物してたんだって。
 で、クローゼットの奥に入ってさ、中、暗いじゃん? そこでふっと見上げたら、浮いてたんだって。UFO」

美代
「(重いものを呑み込むように) うん」

くるみ
「で、それ教えてもらって、ここでやってみたら、私も見えちゃって。わぁ見える~、ってなってさぁ。
(より明るく) そうなるとほら、会社どころじゃなくなるっていうかさあ? ね? 重要なことにもなってくるしさ?」

美代
「重要……? (ふっと思い出す) それってあの、前に私に送ってきた『600年』とか『大火』とか書いてある、アレのこと?」

くるみ
「そうそう! (手を合わせる)ゴメンねぇあの時は。ちょうどワーッと来たから、思わず入力しちゃってさぁ」

美代
「(慎重に言葉を選びながら、やさしく) その、来るっていうのは……、UFOからの、メッセージ、みたいな感じ?」

くるみ
「(嬉しそうに苦笑して) そうなんだよね~。今日子ちゃんも言ってたんだけど、すっごい来るんだよねぇ、そういうのが。
 (かすかに興奮しつつ) ほら、ちゃんと言葉にはできないけど、何となくわかることってあるでしょ、
 イメージとか断片みたいなのだけは伝わるけど、全体としてはぼんやりしてて、でもこれってすごく
 大事なことだな! 重要だな! ってのはどうにか理解できるみたいなことって、あるじゃん?」

 美代、テーブルの反対側でどんどん表情と身を硬くしながら聞いている。
 かろうじて「うん、うん」とだけ相槌を打っている。

 くるみ、そこまで言って一息ついてから

くるみ
「まぁ、でもさ? (肩の力が抜けた感じ)」

美代
「(まだ身を硬くしながら)なに……?」

くるみ
「そういうのって……」

 自分の胸に手の平を当てる。

くるみ
「個人と、」

 今度は人さし指を天井に向ける。

くるみ
「宇宙、の話じゃん?」

 美代、理解が追いつかず数秒間固まるが、
 表情と身体のこわばりがゆるむ。
 今日子よりは話が通じるようだ、という安堵感。

美代
「あっ、うん、そうだよね。(刺激しないようにおうむ返し)個人と、宇宙の話だもんね」

くるみ
「こう、スケールが違うっていうかさ?(お茶を手に取り、すする。ごく自然な振る舞い、動き)」

美代
「うん、うん(首を縦に振る)」

くるみ
「だから、理解しようとするのも結局、個人の、人間の驕りかな? みたいな」

美代
「うん、うん」

くるみ
「いま聞いた、今日子みたいな根を詰めるやり方も、どうなのかなぁ、って。ほら、個人だから! 生活ってあるじゃん?」

美代
「あるよね、うん。生活、大事だよね(気持ちがほぐれていく)」

くるみ
「仕事にも穴開けてらんないな、って気持ちも出てきてさぁ」

美代
「(かぶせ気味に)あっ、じゃあ課長には、私がうまく言っておくからさ!」

くるみ
「ゴメンね、心配かけちゃって」

 美代がテーブルに置いていた手に、自分の手を優しく乗せるくるみ。
 美代、心底ホッとした表情を浮かべる。

美代
「全然! いいよいいよ!(空いた手を振って、なんでもないよ、という動き)」

くるみ
「私、明日からはちゃんと出社しようと」

 スマホの振動音。
 なごやかな雰囲気を断ち切るように。
 部屋、一瞬静かになる。
 テーブルの上にあったくるみのスマホがぶるぶる震えている
 ふたり、液晶に視線を落とす

くるみ
「あれっ、今日子からじゃん」

美代
「えっ」

 くるみ、スマホを取り上げ電話に出る。

くるみ
「もしもし? あ~今? 家だけど。(頭を掻く)あのさぁ、あんた外で、ダンボールに籠ってるんだって? 
 ダメだよそんな無茶したら。私思うんだけど、結局はさ、(さっきと同じジェスチャー)個人と、宇宙……(途中で止まる)
 え? あぁ。そうかぁ。そっかぁ!(喜び) (激しく頷く) なるほどね! なるほどね! そっかぁ! それはわかんなかったな!」

 美代、くるみの急変に動揺する。テーブルに両の手の平を置いて、

美代
「えっ、どうしたの……?」

くるみ
「(無視して)そっかぁ! そういう見方もできるんだね! すごいすごいすごい! すっごいドキドキしてきた!」

 くるみ、いきなり立ち上がる。
 コップが倒れてお茶がテーブルの上に広がる。
 が、くるみは頓着しない。
 美代もそれどころではない様子で、中腰になる。

美代
「ちょっと、どうしたの?」

くるみ
「(無視して)個人とか宇宙とかそういうアレじゃないんだね! ね! おんなじなんだね! 同じ同じ! わかった! じゃあ今から行くわ!」

 くるみ、電話も切らずにスマホを持つ手を下げて、やっと美代の方を見下ろす。
 ニコニコしている。
 喜びの笑み。

くるみ
「あのさ! 今日子に教えてもらってさ!」

美代
「(不安ではちきれそうな顔) なに……?」

くるみ
「これさ、個人とか宇宙じゃないの!
 みんないいことになったから!
 みんないいことになったから! ね!」

 くるみ、部屋の隅に放ってあったカバンを手に取る。

くるみ
「よかったぁ! みんないいことになるんだよ!」

美代
「ねぇちょっと待って……(近づいて腕を取ろうとする)」

くるみ
「(乱暴に振りほどく) いいから! みんないいことになるから! いいことになるから! ねっ!」

 くるみ、カバンを持って部屋、廊下を走っていく。
 靴も履かずに裸足で玄関に下りて、ドアを開ける。

 美代、足がうまく動かないが、どうにか追いかけようとする。

美代
「待ってよ……」

 くるみ、外に出て玄関のドアを閉めながら、

くるみ
「大丈夫だよ! みんないいことになるから! ねっ!」

 ドア、バタンと閉まる。

 廊下に立ったままの美代の背中。


【シーン10】
 公園近くの路上/数日後の昼

 やつれた面持ちの美代が、スーツ姿、カバンを肩にかけて歩いている。
 それに被せて、

ナレーション
「それからというもの、友達ふたりとは全く連絡が取れなくなってしまったそうです。
 美代さんがいくら電話しても、メールをしても、何の反応もありません」

 美代、公園前まで来る。
 目の端にちらりと見えた、といった風に二度見し、立ち止まる。

 広場の隅にある、今日子が入っていた小さなダンボールハウス。
 それが「二つ」に増えている。

 ひとつの前には、今日子の靴がある(シーン5)

 もうひとつのダンボールハウスのそばに、くるみが持っていったバッグが放り出してある。

 それを見ている、悄然とした美代の顔。
 心が枯れたような、あきらめた表情。
 それに被せて、

ナレーション
「美代さんは、二人が見たのはUFOではなく、もっと別の何かだったのではないか、と思っているそうです」

 暗い瞳をそらして、その場を後にする美代。
 カメラのフレームの外に出る。
 ピントが合わず、ぼやけた街の風景だけが映っている。

ナレーション
「二人が何を見て、どんなことを受け取ったのかは、誰にも、なにも、まったくわかりません」


暗転


【終】


★本記事は無料&著作権フリーの怖い話ツイキャス「禍話」、
 禍話スペシャル・年末年始オールスター感謝祭 後編 より、大幅な編集・脚色・再構成してお送りしました。


●👻お知らせ👻●
 3巻までは完全完売、売り切り御免、増刷予定ナシ!
 大ボリューム44本の恐怖があなたを襲う、『禍話リライト vol.4』は好評発売中。
 これを家に置いておくと、邪気が強すぎるせいで魔除けになるとかならないとか……
 オシャレな表紙なので、たぶんインスタ映えもします!

2022年の12月は本当に大変です。「禍話」関連イベントが三つもあります。
 詳しくはこちら↓をご覧ください!


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