10月2日のジャニーズ事務所記者会見 ジャニーズ事務所の反攻がはじまった?!

ジャニーズの看板を外した中身はどういうものなのか?

2023年10月2日は、もしかしたら後の日本エンタメ界にとって分水嶺になった日として語られることになるのかも知れません。
そんな思いを持ちながら、登壇者でも記者でもないのに緊張感と共に迎えた記者会見でした。

東山紀之氏と井ノ原快彦氏、ほか弁護士2名が登壇し、藤島ジュリー景子氏が姿を見せなかった、ジャニーズ事務所二度目となる記者会見は、これまで後手後手に回っていたジャニーズ事務所がようやく反攻に出て、「この問題についてのボールはこちらにある」ということを示す会見だったように感じました。
そして、今までの対処があまりにもひどかったこととの対比もあり、“大変よく練られた会見”だとも思いました。

発表された内容についてはジャニーズ事務所の公式サイトに2日のうちにUPされています。

<故ジャニー喜多川による性加害問題に関する再発防止策の実行等についてのお知らせ>

<弊社の社名変更と新会社設立及び補償状況について>

また、会見冒頭では、登壇しなかったジュリー氏による長い手紙を井ノ原氏が代読しました。

<藤島ジュリー氏の手紙全文>

補償会社(旧ジャニーズ事務所)の社名が「SMILE-UP.」であること、新会社の設立や、その社名を公募するなど、事前にメディアで報道されていたこともありましたが、新会社がエージェント会社であること、タレントが希望するならグループごとに法人化すること、ジュリー氏が全株を保有する補償会社は補償が終了したら廃業すること等は、ほとんどの人(すべての人とは言いません)にとって初めて知らされたことだったと思います。
そういったジャニーズ事務所の再建策については、しばらくの間「注視する」としか言いようのないものです。
ジャニーズ事務所のビジネスそのものには特に興味のない私が感想を述べるのなら「やっぱりビジネス優先なんだな」ということにしかならないのですが、そのビジネスのあり方がジャニー喜多川の児童性虐待を長期にわたらせたことを思えば、やはりいろいろと考えざるを得ないものではありました。

先に“大変よく練られた会見”だと感じたことを書きましたが、それは進むべき方向、選択した道筋が正しいという意味ではありません。
一定の条件下において、よく練られているということです。
その一定の条件とは何か?
世間にはジャニー喜多川およびジャニーズ事務所から切り離したように見え、なおかつそれを残す」という、相反した条件です。

補償も含むこの一連の再建策を考えたのが誰の主導によるものかはわかりませんが、会見に同席した木目田裕弁護士および、かつて木目田弁護士と同じ西村あさひ法律事務所に所属していた山田将之弁護士が法務面を監督したのは間違いないことと思われます。
前回の会見で司会を務めた女性がFTIコンサルティングの所属だという情報がありますが、もしその通りで、FTIコンサルティングがジャニーズ事務所のコンサルティングを担当して今回の再建スキームを主導したのなら、その手腕は評価に値すると私は思います。
完全ではないにせよ、先に記した一定の条件下で取りうる最善策を提示したと思いますから。

しかし、ジャニーズ事務所がなぜこのような記者会見をおこなうことになったのか、なぜ再建策が必要になっているのかという、根本的なことに考えを引き戻せば、まったくもって納得できるものではありません。
こうなっている根本原因は言うまでもなく、ジャニー喜多川による世界史上でも稀に見る極悪な犯罪であり、それを可能にしたジャニーズ事務所のあり方です。
そして、その共犯者である「暗黙のカルテル=利益共同体」としての広告代理店・テレビ局を筆頭とするメディア企業・スポンサー企業の関係性。

会見では、ジャニー喜多川を完全に排除する姿勢を前面に打ち出し、示された再建策もそれを主眼に置いたものとなっていました。
しかし、エージェント会社にするという、これからのジャニーズのビジネスを構築していく新会社の代表取締役が東山紀之氏、副社長が井ノ原快彦氏という、ジャニー喜多川およびメリー藤島氏の完全支配下で育ち、薫陶を受け、「ジャニーズ文化」に染まりきっているであろう両者をビジネスの2トップとして戴くことは、それに真っ向から反する人事であり、だからこそ徹底してジャニーの名を排除する姿勢を強調する必要があったのだろうとも思います。

また、これから退所する者を除けば、“ジャニーズ”を形成してきたタレントたちも、名前ではなく実態としてのジャニーズタレントとして、新会社を支えていくことになることを考えれば、本人たちではなく、外部の人間からみて何も変わらないという思いは拭えません。
タレントと経営者が、巷間言われる“ジャニーズイムズ”といわれるものを心身共にしみわたらせた人たちになるのですから、それは当然のことでしょう。
おそらく経営2トップと残るタレントたちが、この世でもっともジャニーズ存続を願っている人たちではないでしょうか。
だから名前がだめでも、実態としてのジャニーズをひと塊として維持したいのだろうと思います。
その気持ちはわからなくもありません。
子どもの頃から特殊な思春期を経て青春時代を共にすごし、切磋琢磨しながら青年・中年と成長してきた人たちなのですから。
人生の8割9割をジャニーズとして生きてきた人たちです。
だけど、残酷に感じるかも知れませんけど、だからこそひと塊でいてはいけないのです。
エージェントだろうが何だろうが、芸能を業務とする新会社などつくらないで、タレントたちには移籍・独立・引退といった道を自由に選ばせることが必要なのです。
それがジャニーおよびジャニーズを断ち切るということなのです。
残念ながら、発表の通りに進んでいくのだとしたら、これからもジャニーとジャニーズから逃れられることはありません。
本人たちの意向がどうであろうと、ずっとそれはつきまとっていきます。
そういう道を自分たちが選択したのです。

いずれにせよ、東山・井ノ原両者が新会社経営のトップに立ち、ジャニーズタレントたちを引き連れたビジネスをするということは、いくら名前を消し、ジュリー氏が資本を入れないことでジャニー喜多川一族による同族経営から脱したことを強調しても、実態としてはジャニーズ事務所のDNAがそのまま引き継がれていくということに違いはないと思います。

ところで、会見の本筋とは関係ないところで、一瞬自分の血が冷たくなった感じを受けた場面がありました。
司会者に指名されないことで不満を感じた記者が声をあげた場面です。
その記者にヤジを飛ばす別の記者の声なども入り交じり、会見の流れが中断したのです。
その時、井ノ原快彦氏が、困り切ったような表情を浮かべ、「ルールを守りましょうよ」「子どもたちも観ていますから」というような趣旨の仲裁といいますか、場を収めようとする発言をしたのです(正確な言葉はメディアや動画等で確認してください)。
私はそれを見ながら、昔のドラマによくあったような人情派刑事が頭に浮かんだのですが、すぐにそれは消え、瞬間的に血が冷たくなったような感じになったのです。
率直にいえば、おそらく私は井ノ原氏に恐怖を感じたのです。
もちろん比喩に過ぎませんが、この人は笑いながら人が斬れる人、「ごめんなさい、ごめんなさい」と言いながら喉元にナイフを突きつけることのできる人なのだと、そう感じました。
前回の会見では癒しと和み担当取締役として登壇したのではないかと思い、東山氏よりもむしろ井ノ原氏の方が高評価を得たと思われたのですが、私は昨日の会見で「この人はそのうち仕事に馴れていったら、とんでもなく狡猾なやり手として、東山氏を凌ぐ経営者になるのかも知れない」と思ったのでした。

また、中継ではマイクがオフだったため、よく聞き取れませんでしたが、記者たちのヤジ怒号のようなものが入り交じった原因を考えると、ジャニーおよびジャニーズ切り離しを強調している組織としての実態が垣間見えた気がしました。
先にリンクを貼りましたジャニーズ事務所の公式サイトにUPされている「故ジャニー喜多川による性加害問題に関する再発防止策の実行等についてのお知らせ」に書かれている項目の最後、「⑪ メディアなどの関係者の皆様との対話等のエンゲージメント」にはこう書かれています。
「これまで、順次、メディアの皆様との対話をさせて頂き、弊社の再発防止策の取組状況等をご説明してまいりましたが、今後も今まで以上にメディアの皆様との対話を継続してまいります」
ヤジ怒号で一時中断したのは、ずっと挙手している記者が司会者から指名されず、不満をマイク・オフのままぶつけたからです。
それでも司会者はその記者や、同様に思っている記者を最後まで指名することなく、会見は終了してしまいました。
前回の会見と違い、2時間という制限のあった記者会見です。
質問は1社1問という制限もありました。
井ノ原氏が「ルールを守りましょ」というようなことを口にしましたが、それらの制限は前記引用のメディアとの対話を重視する姿勢とはかけ離れたものです。
「言ってることとやってることが違う」という姿勢が如実に現れた場面だったのではないでしょうか?

ジャニー・メリーの喜多川姉弟のやり方を、「アメとムチを巧みに使った力による支配」とするなら、ジャニーズDNAをもった新しい組織は「知と懐柔による狡猾な支配」になるのではないか?
それは、少なくとも表面上は世代交代と言っていいものでしょう。
経営陣だけでなく、顧問弁護士についてもそれは感じたことです。
しかしながら、もし「暗黙のカルテル=利益共同体」が以前のまま引き継がれるのだとしたら、実態としてはより深く高度な支配になっていくのではないかと思うのです。
経営の2トップは、これまでテレビ局を中心とするメディアから、出役のタレントとして持ち上げられてきたタレントです。
子どもの頃から「ジャニーズ文化」を全身にしみこませ、大人の世界で育ってきた二人。
そうだとしても、きっと悪いことばかりではないでしょう。
いい面もあるはずです。
しかし、いい面ばかりでないのも間違いありません。
そう感じた10月2日の記者会見でした。

最後にもうひとつ。
まだあまり深く考えていないのですが、昨日の会見を見ていて、ジュリー氏の手紙も含めてなんとなく感じたことに触れておきます。
これは以前、X(旧Twitter)にも書いたことなのですが、「虐待の連鎖」という言葉が浮かびました。
東山紀之氏も井ノ原快彦氏も、そして藤島ジュリー景子氏も、ジャニー喜多川と藤島メリー泰子氏による虐待支配からのサバイバーなのではないかと。
私はジャニー・メリー体制下でジャニーズ事務所に所属したタレントと役員を含む社員全員の、時間をかけた継続的なカウンセリングが必要なのではないかと思うのです。


※当エントリーは当初公開したものに加筆・修正をしています。
今後も思いついたらそうするかも知れません。
もし気が向きましたら時間をおいてまた覗いてみてください。
もしかしたら一度読んだ時とはかなり印象が違って感じられるかも知れません。(10月3日AM9:30 追記)


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