【天鳳】比較対象は正しく選択せよ
たとえば、東一局。連荘して自分が105000点、他家が2人とも0点。この状況においては打点など一切の意味を持たないし、何なら放銃さえしなければトップ終了が見込める。
言うまでもないが、この状況においては局収支を最大化する打法が一切の意味を持たない。和了率と放銃率によって自分の手の価値は完全に定義され、盲目的に局収支を最大化するのは誤りであることが分かる。
まあこんな状況なら何をやってもトップになれるので好きに打てばいいと思うが、私たちが有難がっている期待値というものには、時としてそれ自体が正しいのか一考する余地が十分に存在している。
理論的に上振れを狙う
天鳳民の最終目標は、天鳳位になることである。より一般化するならば、少しでも上の段位を目指すことである。
上の段位を目指す人は、オーラスの押し引きに解を求めるとき、大抵はこのようなことを考える。
pt期待値は押した場合~~で、降りた場合は~~だから、~~したほうが得
これ自体は正しい。ただし、それが成立するのは、現在の段位が安定段位を下回っている場合のみである。
言うまでもないが、天鳳位になるには必ず上振れが必要になる。
三麻天鳳位は歴代最強の人でさえ安定段位が9.0をギリギリ超えるかどうか程度であり、よしんば十段に実力で成れても、実力通りの順位分布では十段配分でプラスになることはない。
四麻天鳳位ですら、四鳳南で安定9.0を超えている人は7垢しかいない。最も高いASAPINでさえ9.926止まりであり、ギリギリ十段配分に勝てない程度である。
要するに、天鳳は究極的には上振れを狙うゲームである。
上振れを狙う手段は何でもよい。最も手っ取り早い方法は打数を増やすことだが、例えば神社で神頼みするなんて行動も肯定されるべきだ。その行動に効果があるかどうかは別として、最終的に上振れを引かないといけないという事実に向き合っている人を、私は強いと思うし、尊くも思う。
pt期待値の罠
例えば三鳳十段配分のオーラス、ベタオリすれば確実に2着を確保でき、押した場合は46%でトップ、36%でラスになる状況があると仮定する。
pt期待値
押し: (135pt)*0.46 + (-180pt)*0.36 = -2.700pt
降り: ±0pt
これを見て、大多数の人は降りるべきだと判断する。何故なら、pt期待値が押すのは損であることを明確に示しているからだ。
その考えは、この局面だけを見れば正しい。しかし、それはあなたの実力が安定段位9.5以上の人間であれば、の話だ。そのような人間は存在しない。
この状況はpt期待値上は損であるにも関わらず、明確に押し有利である。
こと三鳳において、人類の実力の限界は、安定8.5前後にあるように思う。このときの順位分布は、2着率が3分の1と仮定すると、0.358-0.333-0.307になる。この場合、十段配分でのpt期待値は1戦あたり -6.923pt 。
-6.923ptの期待値を背負いながら上振れを祈るゲームと比べれば、-2.700ptの期待値で上振れを祈るほうがまだマシだ。
-2.700pt の比較対象は、ベタオリの ±0pt ではなく、その先にある予約ボタンを押した -6.923pt である。比較対象を見誤ってはいけないのだ。
十段で保存する人を、私は沢山見てきた。それも正しい選択に違いない。pt効率上、予約ボタンを押すこと程に愚かな行為は存在しないのだから。
しかし、それでも十段配分に抗い、昇天し、あるいは散っていった人々の挑戦と努力にこそ、私は尊敬と称賛を惜しまない。挑戦は決して無駄ではなかったと証明してほしい。努力はいつか報われると、希望を見せてほしい。
いずれ私も十段になって、そして精一杯足掻いてみたい。スタートラインに立てる日が来るよう祈りながら、私は今日も三鳳を打ち始めた。