カトウ

同じクラスのカトウはすぐ例えツッコミをする奴だ。

言い争いが始まると、決まって
「どうどうどう！　馬じゃないんだから興奮しない！」
とツッコんでくる。

それ以外にも、「も〜！」と誰かが言えば
「牛じゃないんだから！」。

手洗い場で濡れた手をふりふりしてる人を見つけると
「ティラノサウルスじゃないんだから！」。

オーバーオールを着ているだけで
「チャッキーじゃないんだから！」。

センス、無（な）。　
クラスメイトは「また始まった」とスルーしていたが、私だけはそのつまらなさが解せなくて、いつも固まってしまう。してやったりのカトウの顔を見つめながら。

一度、カトウが社会の授業中に「日本人は白人だと思います！」と言っていて、すごいなと思った記憶がある。

いま思うと、日本人は白人の多い欧米圏と同じように暮らしているし、肌が真っ黄色でもないからしょうがないのかな、とも思う。
ただ、それで言っても、カトウの肌は褐色だった。

言い忘れたが、カトウは女だ。
そしてそんなカトウの兄は東大に進学した。

どちらも、いや全部、「だから何」という話である。