『時子さんのトキ』
公演終了した作品ではございますが、動画配信視聴券が販売中です。ご覧になられる予定でまっ更な気持ちで観劇されたい方は、観覧にご注意ください。
コロナ後、初劇場。観劇してきました。
私は、翔真(登喜)を演じる鈴木拡樹さんの大ファンで鈴木さんの舞台はほぼ欠かさずデビューから観劇させていただいています。鈴木さんが出演予定だった舞台は、新型コロナウイルスの影響で2作品公演中止になり、今回も久しぶりの観劇だったという鈴木さんのファンは多かったのではないでしょうか(ちなみに私は約1年振りの鈴木さんの演技でした。)
推しの存在意義
時子さんのトキ。一言で言い表すと「個人的に痛いところを突かれた」作品でした。
観劇する前までは、良くある若いクズ男と寂しい中年おばさんのちょっと見ていられない恋愛詐欺ドラマかと思っていました。だから、鈴木拡樹さんのクズっぷりがどんなもんなのか鈴木さんファンの私はワクワクが止まらなかったわけです。
だがしかし、観劇後。なんだ、この感情は。
全然ちょっと見てられない恋愛詐欺ドラマなんかじゃない!これは、この舞台は、時子さんは、私じゃないか!!!!そう、つまり推しに癒しを求め、推しを追いかけ、推しに貢ぎ、推しで幸せを充たしている、まさに観劇をしていた「今」の私自身がそこに居ました。
今回は大阪公演を4公演全て観劇させていただいたのですが、その事実に1回目に気付いてしまってから(観劇した方は分かると思いますが)とあるシーンの時子さんの「止めて…」がしんどい!そう!そんなこと、聞きたくないの。止めて、私と推しを引き剥がさないで、私の推しを追い詰めないで!私にはそう時子さんの心の叫びが聞こえました。
そしてまた、私にも息子がいるのです。時子さんのよう疎遠ではありませんが、いるのです。可愛い可愛い目に入れても痛くない息子が。時子さんが登喜くんのことを話す時、思わず私も息子のことを思い出しました。ああ、息子に会いたいな。まさか観劇中にそんな気持ちにさせられるとは思ってもいませんでした。
あらすじには、「疎遠になってしまった息子に重なる翔真」と書かれていましたが、私は時子さんが登喜くんと翔真を重ねてしまっているようには見えませんでした。むしろ全くの別物だったように思えます。でも、それは私にとって息子と推しが別物だからかもしれません。
寂しさ、について考えさせられる作品
このコロナ禍、最近はウイルスよりも恐ろしいのではないかと思い始めたもの、それが「寂しい」という感情です。
寂しさ、孤独感、これらも命を奪いかねないコロナウイルスと同じような「ウイルス」であると作中で表現されていました。そしてそれは感染し自分だけではなく誰かの人生を狂わせるものである、と。
私たちは日々この「寂しさ、孤独感」というものと戦っています。それは、今や持っていない人は居ないであろうスマートフォンの普及、インターネットの普及と共に戦いの火の激しさは増しているように感じます。そして、私たちはこの「寂しさ、孤独感」へのワクチン(作中では爆弾?なんだったけ?この面白い言い間違いを思い出せません。わかる方教えてください。笑)を日々模索しながら生きています。そして私も例外なく、時子さんと同じように推しにそのワクチンの役割を当て嵌めてしまうわけです。
では結果、時子さんは翔真への依存もなくなり寂しさを感じなくなったのでしょうか?私が、時子さんのトキを観劇してモヤッとする部分はここにあります。
子供の成長と自立
クライマックスシーン、鈴木拡樹さん演じる登喜は20歳になります。大人になり、時子さんとも腹を割って話せるようになり登喜は「自立」を迎えます。
ここで、先程の私の疑問「時子さんは寂しさを感じなくなったのか」です。
私の息子はまだちゃんと会話もままならない4歳の男の子。この子が20歳になり、自炊だって掃除だってちゃんと出来るよ!と言われて自立しまったら…。私は孤独を感じずに居られるのでしょうか。
―その答えは、きっと無理。
舞台観劇という趣味があり、推しに会いに行くためにオシャレをして、友達とランチをする。そんな毎日じゃないと、きっと孤独を感じてしまいます。
時子さんは、これからどんな人生を歩んで行くのでしょうか。離婚し、ママ友との関係も上手くいかず、1000万のお金を血の繋がりもない赤の他人に貸し、周りに迷惑をかけたと言われた時子さん。現実だったら明るい未来は待っていないのでは…?と不安になります。
そうこれはフィクションだから。では、最後にふたつ。
―時子さんの依存は、本当にウイルスだったのか。翔真は本当にクズなのか。
是非、時子さんのトキ 配信でご覧になってあなたの答えを見つけてください。
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