続・テレビ局 V.S. JR東海!!
※公平を期するため、ちょくちょく各テレビ局の番組ページへのリンクを挟んでいますが、特にどんこめが広告報酬をもらっているわけではありません。
テレビ局はひどかった
上の動画を見ていただければわかるのですが、テレビ局の今年の第2四半期決算ヤバかったです。動画では駆け足気味で紹介したので、もう少し詳細をフォーカスしてみます。
なお、お急ぎの方は15秒版もありますので、そちらをご覧ください。
1.日本テレビ
比較的減少幅は軽微
売上高 1960憶円 ▲1.7%
営業利益 167億円 ▲13%
経常利益 208億円 ▲2.0%
純利益 137億円 ▲3.8%
連結では減収減益も減少幅は▲5%未満であり、まだ”軽傷”と言えるでしょう。今回増配(年37→40円)も発表されています。
ただ、期末の業績予想に対する進捗率はいずれも50%未満であり、下方修正は避けられないものとみられますが、今回は修正はありませんでした。
台無し!テレビだけ減収減益
日テレの主要セグメントは3つ。
テレビ関連であるメディア・コンテンツ事業が最も利益貢献割合が高いのですが、実は3つの中で唯一前年比で減収減益となっています。
メデイァコンテンツ=テレビ関連
売上1806億円(▲40億円▲2.2%) 利益150億円(▲31億円▲17%)
生活・健康関連=スポーツクラブ)
売上132億円(+2億円+1.5%) 利益4億円(黒字転換)
不動産関連
売上55億円(+2億円+4%) 利益18億円(+2億円+14%)
スポーツクラブはコロナ禍直前に取得したセグメントで、当初はこれこそが日テレの経営にダメージを与えた存在でしたが、今年は黒字転換することができています。不動産も増収増益で、14%の増益で好調です。
ところが肝心の主要事業であるはずのテレビ関連だけが減収減益です。
特に利益面では▲31億円▲17%と大きく、残り2つのセグメントの増収増益分を食いつぶしてしまっています。
明らかにテレビ関連で減収減益の原因があるということです。
詳細を見ると、減収となっているのは、地上波テレビ広告(タイム、スポット共に)、BS・CS広告、物品販売、顧客との契約から生じる収益で、それ以外の主にデジタル関連の物は増収となっているようです。
テレビ減収、ネット増収が浮き彫りになっています。
ジブリは日テレを救うのか?
さて、日テレの重要な後発事象として、スタジオジブリの株式取得・子会社化という物がありました。
正直、以前から出資関係は続いていたこともあり、むしろ遅すぎるほどのタイミングであるようにも感じます。
ただ、ジブリ作品は海外では配信が強化されている一方、国内ではほとんど無いのが現状です。それこそが金曜ロードショーでジブリ作品を放送して視聴率を稼ぐ、という日テレの戦略だったものと思われますが、今になってそれを更に強化するという考えなのではないかと思います。(特に最近はバルス祭りなど、事前宣伝も露骨になってきている印象です)
裏を返せば、それだけ「確実に視聴率を稼げるコンテンツ」づくりに苦戦しているということでしょう。
そこまでしないといけないぐらい、日テレでさえもテレビが苦しい物になっているということではないかと思います。
(アニメだと最近は葬送のフリーレンが流行っていますが、コナンのように長期コンテンツの作品では無いでしょう)
果たして日テレはこの危機を突破することができるのでしょうか?
2.フジテレビ
一見増収増益だが・・・
売上高 2675憶円 +7.4%
営業利益 130億円 +7.1%
経常利益 151億円 ▲5.9%
純利益 100億円 ▲14.3%
連結では営業利益まで増収増益となっており、一見順調に見えます。
純利益減も前年に何か大きな特別利益があってその反動だろう、と見れば問題なさそうです。
しかし実はそうではありません。むしろ特別利益(有価証券売却)は今年の方が大きいのです。雲行きが怪しくなってきました。
配当は現時点では年50→48円への減配となっており、前年は10円の記念配当があったことを加味すれば増配とも取れますが、ぱっと見の印象は悪いでしょう。
期末の業績予想に対する進捗率もやはり50%を切っており、特に経常利益については38%と4割を切ってしまっています。
なぜ?テレビは増収減益!
フジメディアHDの主要セグメントは2つ。
売上高はテレビ関連の方が大きいですが、利益率では不動産関係の方が大きく、前年時点ではほぼ利益割合が半々となっていました。しかし今年は…
メデイァコンテンツ=テレビ関連
売上2124億円(+132億円+6.6%) 利益41億円(▲10億円▲33%)
都市開発・観光事業=不動産関連
売上530億円(+56億円+12%) 利益97億円(+34億円+53%)
なんと、不動産関連の方がテレビの2倍以上の利益を出していました。
というより、テレビの利益が不動産の半分以下に落ちた、という方が正しいかもしれません。
幸い、テレビの減収額は不動産の増益より小さかったので、連結で見ると営業利益は増益となっているわけです。
一方、営業外の部分では持分法による投資利益が無かった(!)こと、支払い利息の増加などにより、経常利益、純利益は減益となっています。
戦犯はディノス!
もう少し詳細を見てみましょう。会社別の資料を見ると、メディア・コンテンツ事業では主要8社の詳細の数字が書かれていました。そのうち、利益がマイナスとなっていたのは、フジテレビジョン(地上波)とディノスの2社だけでした。
フジテレビは▲1.7億円。まだ軽微な赤字とはいえ、一番の看板会社が赤字というのは悲しい話です。前年は19憶円の黒字だったので、赤字転落です。
そして問題は、通販などを扱うDINOS CORPORATION。8社の中では唯一減収減益、かつ前年も赤字、かつ前年より赤字が拡大という弱り目に祟り目といった状況となっています。前年比▲42億円の減収、▲9億円の赤字拡大です。
なお、8社の中で営業利益が一番大きかったのは意外にもビーエスフジでした。営業利益率は20.3%と、売上高の割に利益が出せているようです。
(そういえばクイズ!脳ベルSHOWもBSフジですね)
放送・メディアの収入と原価を見ると、収入減・原価高の最悪パターンであり、粗利益の時点で▲26%もの減益となっていました。
一方で、コンテンツ・ビジネスの収入と原価はどちらも増加しており、粗利益では前年比+114%と、倍以上の成長をしています。明暗がくっきりと出ていますね。
都市開発・観光事業は、個別で見れば多少差はあるものの、全体的に強い増収増益です。営業利益率は14~27%台と高いのは好感が持てます。
ただ、その都市開発・観光事業でも期末予想の時点で前年実績を下回る予想となっており、実際にその予想に対して進捗率は46%程度となっています。前年実績を超えるようなサプライズは、あまり期待できないかもしれません。
余談ですが、中国「bilibili」韓国「ZEPETO」など海外事業者との戦略的パートナーシップ締結、と中期グループビジョンの進捗状況で書かれていました。海外からの影響が放送内容にも出てくるものと思われますが、果たしてそれが吉と出るか凶と出るか。
3.TBS
株を売らなければ…
売上高 1908憶円 +6.7%
営業利益 87億円 ▲13.5%
経常利益 162億円 ▲4.6%
純利益 98億円 +7.0%
かなり歪な決算で、増収しているはずなのに本業は減益、なのに純利益では増益?となっています。 単純な答えとしては、
「本業で儲からないので手持ち株を売って利益を作った」
といった感じの状況です。
特別利益に有価証券売却益が44億円が計上されていますが、もしこれが無かった場合、単純計算ですが純利益はほぼ半分にまで減ります。
なお、この売却した株式は、TBSとも関係が深い東京エレクトロンの株式ではないかと報道されています。実際、最近は毎年のように少しずつ株式を売却しているようです。
こんな感じですが、一応2円の増配予定(年42→44円)。
業績予想の修正も複雑で、
売上高は +5.9→+6.1%への上方修正、
営業利益は +25.1→▲27.8%への大幅下方修正、
経常利益も +11.2→▲23.6%への大幅下方修正、
純利益は ▲30.4→+2.9%への大幅な上方修正です。
要するに、
「本業で自力で増収増益予想だったけど、無理っぽいから予定外に株を売って、純利益では黒字に帳尻合わせするよ!」と宣言しているわけです。
期末業績予想に対する進捗率はほぼ50%弱程度ではありますが、
純利益に限っては27%と異常に低いです。更なる株の売却を予定しているのでしょうか?
半減以下!
TBSHDの主要セグメントは3つです。
売上高では、
メディアコンテンツ > ライフスタイル > 不動産その他
といった順番となっていますが、
利益面では
メディアコンテンツ > 不動産その他 > ライフスタイル
という順番となっていました。
ところが今年は、大変な変化が起こっていたのです。
メデイァコンテンツ=テレビ関連
売上1415億円(+30億円+2.2%) 利益18億円(▲24億円▲57%)
ライフスタイル=通販関連
売上411億円(+86億円+26%) 利益27億円(+7億円+35%)
不動産その他
売上101憶円(▲5億円▲5%) 利益41億円(+4億円+11%)
なんと!テレビの利益が前年比半分以下に激減し、3セグメントで最も小さくなってしまったのです。しかも30億円も増収したのに、24億円もの減益です。これはいったい何があったのでしょうか?
移管だけが原因なのか?
TBSテレビの収入内訳を見ると、前年より減少していたのはスポット広告(▲35億円)と事業(▲24億円)、さらにTBSテレビ内の不動産(▲3億円)でした。
ただし、事業に関しては注釈がついており「テレビ・その他」部門へ移管したためと書かれていました。しかしその肝心の「テレビ・その他」の方の数字は+20億円となっていたため、数が合いません。
移管前の時点で「テレビ・その他」にも約▲4億円のマイナスがあったものと推測され、それが隠されている形かと思われます。
それを差し引いても、やはりスポット広告の減少量が目を引きます。説明資料では配信広告収入等が増収していることをアピール。
つまり自ら「テレビよりもネット配信を顧客が求めている」と言っていることに他ならないわけです。
さて、TBSテレビの事業部門別収益を見てみましょう。6事業に分かれていますが、このうち増収増益となっていたのは映画、コンテンツビジネスの2つだけでした。
意外にも、アニメは減収減益です。あんなに盛り上がった水星の魔女は利益にならなかったんか…?
また、グローバルビジネスも減収減益。備考欄にはAmazonで「風雲!たけし城」の配信が好調と書かれていたものの、その他が不振と書かれてしました。新作を作るよりも30年以上前の再放送をやった方がいい、ということなんでしょうか。
もう1つメディア事業・eスポーツも減収減益だったのですが、7月以降についてはテレビ部門に移管しているとのことです。
その他の資料を見ていると、減益の理由はやはりコストアップのようです。テレビ番組制作費が前年に比べ+24億円増加しており、ほとんどメディアコンテンツ事業の減益量と一致しています。
そのほか気になる点としては、個別指導塾のやる気スイッチグループを今年連結子会社化しています。これに伴う関連費用の計上により、前年よりも大きく減益しているようです。(▲7億、▲73%)
なぜこのタイミングで?と考えると、やはりテレビが儲からなくなってきているという危機感からなのでは?と邪推してしまいます。
4.テレビ東京
悲鳴が聞こえてきそう
売上高 709憶円 ▲0.5%
営業利益 27億円 ▲42%
経常利益 33億円 ▲33%
純利益 29億円 ▲9%
ギャー!
…失礼、まず最初感想がそれでした。
日テレ、フジ、TBSと見てきましたが、テレ東の減益量はなかなかインパクトのある量です。しかも減収減益で、まるでいい所無しです。
配当は据え置きですが、期末に多く払うスタイルなので減配の可能性は捨てきれていないでしょう。業績予想も据え置いていますが、進捗率は当然半分以下、営業利益に至っては28%で3割以下です。
…本業が儲かってないorz
希望は残っているよ
テレビ東京はセグメント区分の見直しを実施しており、これまでの4つから3つに再編されました。これが実にテレ東らしく、また、他局では見られない区分だったことにも注目です。
地上波・BS放送事業=テレビ関連
売上457億円(▲22億円▲4%) 利益5億円(▲18億円▲76%)
アニメ・配信事業
売上203億円(+15億円+2%) 利益25億円(+1億円+4%)
ショッピング・その他
売上78憶円(+11億円+16%) 利益1億円(▲1億円▲53%)
これまでテレ東は、地上波、放送周辺、BS、コミュニケーションという分け方をしていましたが、せっかくの強みであるアニメ関連の状況がわかりにくくなっていました。
今回の区分見直しで、テレビ関連は1つに統合され、アニメが独立したセグメントとなっています。そして、
「アニメだけが増収増益」かつ「アニメが最も利益を出している」ことが明確になりました。
数字だけで見るとテレ東はかなり悲惨な状況でしたが、課題と方針については既に社内でも明確化されているように思えます。
(むしろ上の人達をわからせるためにやってやった、というような意図も透けて見えてくるような…)
安泰、というわけでもない…
さて。「やっぱりテレ東はアニメだ!」とわかったわけですが、実は重要な資料が出ていました。
実は好調のアニメの売上、8割が海外なのです。
しかも前年同期比では、▲0.6%とわずかではありますが減収となっています。
また、北米38.8%、中国が28.6%で6割以上を占めており、特に中国との関係が悪化した場合には減収リスクがあることでしょう。北米も為替状況によっては減収リスクがありそうです。
また、人気タイトルの並びを見ていると、最新タイトルというよりは昔からの人気シリーズといった並びであることも気になります。
1位のNARUTO、3位のBLEACH、4位の遊戯王はいずれも漫画原作ですが、既に連載が終了している作品です。2位のBORUTOはNARUTOの続編相当なので、1~4位が全てジャンプ作品で偏りがあることが気にります。
そういえば最近力を入れているように感じた作品、Spy×Familyやダイの大冒険もジャンプ作品ですね。
なお、5位はポケモンです。(これも最新作は出続けているものの、初代は1996年で、もうすぐ30周年です)
もちろん日本国内は増収(+2.6%)しているものの、億単位までは至っていません。テレ東としては、悩ましいところでしょう。
その他のテレビ関係についてですが、BSの方のスポット広告だけが唯一増収増益となっていました。地上波が苦しんでいるなか、意外にもBSが健闘していることが伺えます。
5.テレビ朝日
え?
売上高 1468億円 +1.4%
営業利益 43億円 ▲40%
経常利益 86億円 ▲30%
純利益 66億円 ▲28%
さて、一番の問題はテレビ朝日です。先ほどのテレ東は減収減益でしたが、テレ朝は増収減益です。
しかも、テレ朝はテレ東の2倍ほどの規模の売上利益なのですが、前年比がほとんどテレ東と同じなのです。
つまりマイナス金額で見ればテレ朝の方がずっと大きいのです。
配当は据置きですが、今年は記念配当、去年は特別配当が含まれており、来年度以降は減配のリスクがかなり高いのではと考えられます。
期末の業績予想も据え置いていますが、進捗率は50%未満、特に営業利益は29%で3割未満です。
なんということでしょう!
希望は…
テレ朝の主要セグメントは3つ(+その他)です。
…が、ちょっと困ったことになってしまいました。
テレビ放送事業
売上1102億円(▲2億円▲0.7%) 利益11億円(▲37億円▲76%)
インターネット事業
売上132億円(+14億円+12%) 利益6億円(+4億円 +145%)
ショッピング事業
売上91億円(+0.4億円+0.4%) 利益7億円(+1億円+1.9%)
その他事業
売上215億円(+22億円+11%) 利益17億円(+3億円++27%)
え~っと…太字にさせていただきましたが、なんと「その他」が一番利益を出しているセグメントになっていました。ナニコレ。
売上高ではテレビ放送事業が1番なのは変わらないですが、前年比での減益量が大きすぎます。テレビ以外の増益量に対して3倍も減益です。
しかもせっかく増収増益している部分についても、
その他に区分されているので何が良かったのかよくわからないのです。
「希望は無いのですか…?」
「そこに無かったら無いですね」
もうちょい見てみる
などと、さすがに突き落としてポイするのは非道いだろうということで、もう少し資料を見てみます。
その他事業とは、音楽出版・イベント・機器販売リース料・出資映画・DVDの5つの事業を指すようです。
これらはDVDのみが減収減益で、それ以外4つの事業は全て増収増益となっていました。
(DVDは前年比▲77%減収、▲84%減益と壊滅的なのですが、元々利益2億円未満の事業だったので影響としては軽微のようです)
特に増益量が大きかったのは出資映画で、前年比+3億円、+92%と最も利益を伸ばしています。また、12月には窓際のトットちゃんと仮面ライダーの映画公開も控えており、資料からも期待感が伝わってきます。
さて、期末の業績予想を見ると、利益面ではショッピング事業に期待がかかっているようです。期末では前年比+13億円・+153%の高業績を予想しているようです。
なお、現時点での進捗率は 35%であり、かなり楽観的な予想を立てているなという印象です。
それともこれから何かザワつく話題を投下して、通販事業にテコ入れを図るのでしょうか?ポテチやカップ麺など、地方限定商品の紹介でかなり収益を上げた実績があったようですが、果たして?
V.S. JR東海
さて、対するはJR東海です。
が、JR東海の決算に関しては以前記事を書いているので、詳しくはそちらを読んでいただけたらと思います。
動画もよろしくお願いします
今回この記事では、グラフを使った比較をしてみたいと思います。
こちらをご覧ください。
JR東海とテレビ5社との比較
…もはや今さら語るまでも無いかと思います。
売上高こそテレビ5社の合計の方が上回っていますが、それでも1社でも欠けたらJR東海1社に負けてしまうような状況です。
利益面では実に残酷な状況で、5社が束になってもまるで桁違いな差額となっています。
JR東海の方が1社で営業利益が6.8倍、純利益では4.5倍でした。
なお、2023年3月末時点での比較については、こちらの記事と、
こちらの動画も同内容となっていますので、ぜひ視聴してみてください。