【開票後追記】よくわかる都知事選挙2024組織票の行方
※この投稿は、過去のデータなどを元に計算した”分析”になります。
★開票後の追記は、「★追記6」へジャンプしてください
1.かつて無いほどの注目度
次の都知事は誰になるのか?
今回ほど注目された都知事選挙は無いと思います。
過去最多の56名が立候補届出。
混沌と化す掲示板、政見放送論争。
前代未聞の獄中からの出馬宣言。
マスコミの報道基準への疑問。
様々理由があるかと思います。
ですが結局のところ、当選するのは一人だけです。
いったい誰がもっとも票を集めるのでしょうか?
これのヒントになる数字があります。「組織票」です。
2.組織票(政党票)
「組織票」とは、特定の団体などがまとまってその人に投票する行為です。
今回の場合、「政党」を1単位とした「組織票」として考えると、ある程度選挙の結果を予測することができます。
サンプルデータとして使うのは「 2022年の参議院選挙 」です。
特に「比例代表」の場合、「都道府県別」かつ「政党別」の結果データを入手できます。
※選挙区選挙の場合、都道府県によって出馬していない政党もあるので参考になりません。
また、直近過去2回の都知事選挙の投票者数は、620~660万。
そして2022年の参議院選挙・比例代表の投票数も647万票で、ほぼ同じ人数であることがわかります。
※参考:2019年参院選の投票数は589万
このことからも、選挙に行く人というのは国政だろうと地方だろうと一定の人数が選挙に足を運んでいるであろうことが推測することができます。
したがって今回の都知事選挙2024も、約600万人前後の投票が行われると考えられます。
2022年参議院選挙の党派別得票数
それではまず、2022年参議院選挙・比例代表における政党別の得票数を見てみましょう。
3.(追記あり)政党組織票はどの候補に入るのか?
今度は、この数字を東京都知事選挙の立候補者と、支持を明確にしている政党の組み合わせながら考えてみましょう。
まずは、明確にわかっている人から考えてみましょう
明確に応援している政党
これらの6つの政党は、各候補の応援演説に政党関係者が駆けつけているなどで、まず間違いないだろうということで考えました。
続いて推測の域ではあるものの、この政党が推薦していると考えられる情報があった候補についての数字をまとめます。
(追記あり)推薦しているとみられる情報があった政党
【追記7月6日】※上記の件について、れいわ新撰組アカウントから否定がありましたので、上記加算は取り消します。(音響機器貸し出しは事実だが、支援名乗りではない)
また、上記記事により維新は組織的には石丸氏を支援していないどころか、拒絶感さえ感じたので、組織票から維新を除外しました。
追記以上
これらの5つの党は噂レベルではありますが、ある程度可能性があると考えられる情報をもとに計上しています。
(追記あり)浮動票
残りは、
NHK党18.1万票、
ごぼうの党2.4万票、
新党くにもり1.0万票、
維新政党・新風 0.3万票。
※追記:れいわ新撰組39.8万票
※追記:日本維新の会87.3万
これらの党については、どの候補を推薦しているかの情報を見つけることかができませんでしたので、浮動票として考えます。
※特にNHK党については、関係候補者が24名もいるほか、2022選挙でNHK党から出馬した黒川氏(今回も出馬)が離党・現時点では逮捕されているなど、特定の候補への票の流入を予想することが困難だと判断しました。
NHK党首立花氏は福永活也氏に投票したと宣言する一方、蓮舫氏を応援する(NHK問題を扱っていたから)と発言していた場面もありました。
暇空茜氏について
NHK党の浜田聡氏は暇空茜氏に関して積極的に取り上げていることから、NHK党から得票が流入するのではないかとも考えられます。ただ、全員ではないと考えられるので、最大18万票程度として考えます。
以上を踏まえて、結果をグラフ化してみましょう。
4.グラフ(追記反映前)
一番左は、前回の小池氏が当選した際の得票数で、隣にあるのがその時の2位の得票数です。
前回は4倍以上の圧勝であり、これを覆すのはなかなか難しいだろうと考えられていました。
しかし今回は、政党の組織票予想をまとめると3候補がほぼ横並びになっていることがわかります。
推薦情報が不明な政党の浮動票は3万強ほどしかなく、3候補のどれに入るかで結果を動かす可能性はありますが、それ以外の候補の逆転を起こすにはあまりにも少なすぎる状況となっています。
やはりこの3候補の中から新都知事が決定するのでしょうか?
※追記:単純に組織票で計算した場合、蓮舫氏は3位に転落すると思われます。
石丸氏は裁判敗訴の件が悪影響を及ぼすと考えられるため、これよりは得票が減る可能性があるかもしれません。
追記以上
しかし、こちらのグラフもご覧ください。
※追記反映前
2022年参院選の投票率は、約56%でした。
投票権を持ちながら投票しなかった人が約500万人もいたのです。
さらに書き損じや白票、持ち帰りなど無効票となった物が約17万票もあったことがわかっています。
もしこれらの票の、2人に1人が特定の候補に集中して投票すれば、十分当選者を一人導き出せるほどの量、約250万票になると考えられます。
棄権者は 最大の組織票 であると言えるでしょう。
棄権者の心を動かし、投票所へ足を運ばせることができれば、政党の組織票など無視できるぐらいの力となりうるのです。
特に今回は、その可能性を秘めている予測となっていました。
(追記反映後のグラフ)
否定された噂を元に、その組織票を浮動票に入れました。この浮動票は「投票に行かなかった」棄権票とは異なり、「投票に行く意志はあるが、投票先が不明瞭」という性質のものです。
たとえばもし、投票先を求め調べていた人たちが暇空氏に行き当たって、この浮動票が全て暇空氏に投票したらどうなるでしょうか?というグラフがこちら
計算上、ほぼ蓮舫氏並みの勢力になれると考えられます。
小池氏との差は約50万。棄権票から1割程度流入すれば暇空氏でも十分勝利圏内と言える数になってくることが予想されます。
そして今回、期日前投票が前回より1割以上増えていることを考えると、
「ひょっとしたら…?」
十分にあり得る話なのではないかと思います。
5.さいごに
というわけで、東京都の有権者の皆さん。投票に行きましょう。
今回ほど、「あなたの1票」で結果が変わり得る選挙は無いと思います。
具体的には投票率が80%を超えたならば、いよいよマスコミにも、政党にも、誰にも予想ができない結果が起きるかもしれません。
こんなに面白いイベントに参加しないんですか?
東京都の有権者の皆さん、投票に行きましょう。
★追記6.開票後あとがき:
27:38、開票確定情報が出ました。これを元に総括を追記します。
なお予想値については 4.追記反映後のグラフ の値が最も近かったので、これを使うものとし、浮動票の値は130万8727を使用します。
供託金没収ラインクリアの部
まずは、供託金没収ライン(有効票の10%以上)を超えた候補についてです。
当選:小池ゆりこ…浮動票取り込むも…
小池ゆりこ氏は予想値を超えた得票となりました。乖離値は+95万8764票で、これは浮動票に対して 73.26%に相当する値でした。
このことから、維新 や れいわ など今回応援先を明確にしなかったものの選挙には行ったであろう人達組織票の受け入れ先として票の取り込みに成功したものと思われます。
しかしながら、前回当選時の得票数からは -74万3356票 となっており、実に-20.30%もの得票を流出させてしまいました。
もし小池氏に対して東京都の有権者が不満を持っていなかければ、たとえ他55人もの候補がいたとしても、前回当選時の数字366万票は揺るがなかったはずです。
今回棄権票は減少しましたが、相変わらず総数は小池氏の得票数を上回っています。
「勝って兜の緒を締めよ」、といった気分なのではないでしょうか。
2位:石丸伸二…前回棄権者から流入か
石丸伸二氏も予想値を超えた得票となりました。乖離値は+61万3035票で、これは浮動票に対して 46.84%に相当する値でした。
ただし小池氏と石丸氏の乖離値を合計すると100%を超えてしまうことから、浮動票だけではなく前回の棄権者からの流入があったものと考えられます。
なお、前回棄権者と今回棄権者との差は61万0549票であり、石丸氏の予想値との差とほぼ一致します。このことから、どちらかと言うと前回棄権して今回は投票した人の大半が石丸氏に投票したのではないかと考えられます。(小池氏が前回より得票を減らしていることから、そういった人が小池氏に投票するとも考えにくいですし)
ただし、報道によれば40代より上で、年齢層が上がるにつれて得票割合が下がっている傾向が表れていました。これをYouTubeやTikTokなどを活用したネット戦略の成功と捉えている人もいるようですが、どんこめが思うに本質は別にあるように思います。
すなわち有権者が「石丸伸二氏本人より年下か、年上か」といった観点です。是非いま、イメージしていただけたらと思います。
若年層にとっては「名前を知ってる有名人」というだけでそれは支持する対象になり得ます。一方、人は自分よりも年下の人間は無意識に「格下」だと考えがちですから、石丸氏より年上世代にとってはそれだけで「こいつに都知事を任せて大丈夫か?」とまず考えるわけです。
その比較対象が現職の小池氏、国政経験のある蓮舫氏では、どうしても優先度は低くなってしまいます。スタートラインでまず不利なのです。
もちろん政策などを比較するステップにまでいけばまた違うのでしょうが、おそらくそこまで考えて投票する人は、どの世代でも少数派でしょう。
結果的に、若年層にターゲットという石丸陣営の戦略自体は成功したのですが、選挙に勝つためには若年層以外へのアプローチが足りなかった。若年層以外へのアピールが選挙勝利では不可欠だ、という証明になってしまったように思います。
一方で、本人としては無視できないであろう注目データもありました。
これはのちほど、石丸幸人氏の項目で触れます。
3位:蓮舫…組織票割れ!?
供託金没収ラインをクリアしながらも、唯一予想よりも得票が下回ったのが蓮舫氏です。予想との乖離値は-28万1211票で、これは社民党の組織票分(予想値18万0061票)よりも大きな流出です。となると、社民党が応援しなかったというよりは 立憲民主党支持者からの得票を大量に失ったと考えた方が自然であるように思います。
流出分全てが立憲民主党(予想値79万4991票)からの流出だったと考えると、実に立憲支持者の35.3%もの支持者を失ったという計算結果になってしまいます。
しかしながら、今回は日本共産党との強い連携が前面に出されたことで、蓮舫氏は予想値58万9421票の安定支持基盤を得たと考えられます。立憲支持者から-28万1211票失って、差し引き+30万8210票の基盤を得られたことになりますから、今回に限ってはプラスの結果だったと言えます。
ただし次回の何かしらの選挙で蓮舫氏は残りの立憲民主党支持層51万3780票を失う可能性があるので、本当に日本共産党との協調がプラスだったのかは未知数、今後の状況次第と言えるでしょう。
ここまで乗換上手ぶりを発揮するならば、いっそ次は自由民主党へ入ってしまうぐらいのことをやってほしいと思うのは、私だけでしょうか?
供託金没収の部(醍醐味)
ここからは、供託金没収ライン(有効票の10%)に届かなかった人達になります。今回の選挙の醍醐味と言える部分ですので、是非とも読んでいただきたい部分です。
4位:田母神としお 26万7699票
主要4候補とメディアで注目された田母神氏。
確かに4位でしたが得票率は3.923%、3位の蓮舫氏に100万票以上の差をつけられる結果となってしまいました。
事前予想との乖離値は+4万0979票。テレビなどメディア露出が多かったことで事前予想の組織票以外からも得票を集めました。
しかし強固な組織票に対抗できるまでの量までは集まりませんでした。
各自治体別の得票状況は、平均3.54%。23区内で都平均を上回った所が多く、それ以外では小笠原村のみ4.69%と高い数値が出ていました。
5位:安野たかひろ 15万4638票
特に終盤になってから注目が集まってきた安野氏。得票率は2.266%。
文京区でのみ4.75%で、田母神氏の4.11%を上回る票を獲得したが、それ以外ではすべて下回った。
23区内では3%超の得票を得る場所もあったが、23区外では自治体別平均1.81%を下回る所が多く、島嶼部では1%超の地域は無かった。
6位:うつみさとる 12万1715票
医師のうつみ氏の得票率は1.784%。全体で見るとけして高くはないが、奥多摩の檜原村で4.45%、小笠原村で3.92%と特異値が見られた。
やはり遠隔地では医者の重要性を意識している人が多いのかもしれない。
23区内では、渋谷区、港区、目黒区の順で高く、2%以上の得票を集めた。
都市部の大半の地域で1.4%以上の安定した得票を得た一方、御蔵島村と青ヶ島村では0票であり、遠隔地での知名度が原因とみられる得票格差もあった。実に東京での選挙が難しい一面でもある。
7位:ひまそらあかね 11万0196票
さて、今回メディアが全く取り上げないことでネット上が大変注目していたのが、ひまそらあかね氏。
得票率こそ1.615%で当選には遠く及ばない数字だったが、7位にもかかわらず島嶼部も含め得票0の地域は無かった。安野氏、うつみ氏ら上位よりも得票率で勝っている地域が都市部・遠隔地問わず点在していた。そして後述の街頭演説を積極的に行い、政見放送も実施していた桜井誠氏よりも得票数は多かった。
ポスターも貼らず、街頭での演説もせず、インターネット上の活動だけでこれだけの数字を集めたことは、インターネット上で活動する人達にとっては勇気づけられたことだろう。
ただ、事前に予想した「NHK党浜田聡氏が頻繁に紹介していたことからNHK党支持者から流入」についても、最大18万票という予想にも届かなかった。
本人は今のところ次の挑戦は考えていないようだったが、もし組織票を持った支持基盤との接触が実現したならば、何かしらの選挙に当選しうる可能性は十分に秘めていると言えるのではないだろうか。
8位:石丸幸人 9万6222.534票
まず不思議に思わなかっただろうか?
なぜ小数点がついているのだろうか?と。
この石丸幸人氏は党派こそ石丸幸人党となっているが、「NHKから国民を守る党」からの推薦を受けている人物である。
ストレートに言えば「石丸伸二の票を少しでも減らしたいから、同じ苗字の石丸という人がいたら立候補しませんか?」という呼び掛けに応じた人物ということになる。どういうことだろうか?
たとえば投票に「石丸」とか「いしまる」と苗字だけが書かれていた場合、それが「石丸伸二」のことなのか「石丸幸人」のことなのかが判断できなくなってしまう。
このような場合、まずそれ以外の「石丸伸二票」と「石丸幸人票」を集計して、その比率を算出する。
例として、確実に判断できる「石丸伸二票」9000票「石丸幸人票」1000票あった場合、その比率は「9:1」と言える。
どちらか判断できない「石丸」票が仮に100票あった場合、算出した「9:1」で按分、すなわち「石丸伸二票」として90票、「石丸幸人票」として10票を加算する。この時割り切れない場合などで、端数として小数点が発生する。
※後述の桜井誠氏にも小数点がついているのは、古田真氏がいることから「まこと」とだけ書かれた票があったものと推測される。
なお、今回最終的な得票が、石丸伸二氏「165万8363.406票」、石丸幸人氏が「9万6222.534票」で、後述のNHK党関連の他の候補者数の得票数を考えると、9万票以上の按分票が石丸幸人氏に流れたのではと推測される。
石丸幸人氏の最終的な得票率は1.410%だが、実は3%以上の得票を得た自治体が6つ、2%以だと19箇所もあった。これには23区内も含まれている。
中には4位の田母神氏をも上回る得票数となっていた場所もあったので、結構笑い飛ばせない”投票妨害手法”であることがわかるだろう。
9位:桜井誠 8万3600.995票
桜井誠氏の得票率は1.225%。全体的に1%前後の得票を均等に得ているが、2%以上の得票を記録した自治体は1つも無かった。
事前の予想値2万0670票よりは多かったが、前回都知事選の得票数17万8784票の半分以下となってしまった。
ネット発信が積極的だったことから7位のひまそら氏とよく比較される桜井氏だが、選挙ポスターを貼って政見放送に出演し、街頭演説も積極的に行っていたことも考えると、残念ながら活動は数字としては報われなかったと言わざるを得ないだろう。
NHKから国民を守る党関連
NHK党関連の得票数
さて。今回、良くも悪くも都知事選挙が注目されるきっかけになったであろう、NHK党から国民を守る党(以下、NHK党表記)関連についてまとめます。
まずNHK党関連は、”党派・NHK党”として出馬したグループと、”NHK党推薦”として出馬したグループの2つに分けられる。具体的には、
届出番号30~48番までの19人が ”党派・NHK党”で、
届出番号25~29までの5人が ”NHK党推薦”となる。
ポスター掲示板ジャックではこれら24人の枠が使用されたため一括りにされがちだが、微妙にこの扱いは異なっている。
前者の”党派・NHK党”の合計得票数は、1万1819.05票。
後者の”NHK党推薦”の合計得票数は、10万0263.53票、
あわせて 11万2082.58票だった。
このうち、9万6222.534票は前述の石丸幸人氏の得票だから、その割合は85%にも及びます。つまり、もし石丸幸人氏が出馬していなかったら、NHK党関連者の得票数は1万5860.05票でしかなかったのです。
このことからも、NHK党・立花孝志党首が「当選目的ではない」ことは言うまでもないでしょう。
立花党首の真の狙い
立花氏の今回の目的は選挙ポスター掲示板・政見放送の在り方の見直しへの世論誘導 ではなく、あくまでも自身の目的「NHKをぶっ壊す」の宣伝・コマーシャルで間違いないでしょう。まずここをはき違えてはいけません。
「NHKと戦う男・立花孝志」を東京都民・そして報道を通じて日本全国民が知るきっかけになり、記憶に残ればそれで十分目標達成なのです。
したがって、序盤こそNHKほか民放等マスコミ各社が「掲示板ジャック」を批判的に報道していましたが、それこそ実は立花氏の思うツボだったわけで、選挙戦後半ではほとんど都知事選挙の話題自体が触れられなくなった理由の1つでもあるのです。なぜなら都知事選挙をニュースで扱えば、自然と「そういえばあの掲示板はどうなった?」という話題に触れないわけにはいかなくなってしまうからです。
TV局の本放送は「CM」です。なぜなら収入源はそちらにあるからです。
立花氏の戦略は、タダ同然でテレビCMを流し続けているに等しい行為ですが、悔しいことにTV局は立花氏に請求書を送りつけることができません。
なぜならスポンサー企業とは違い、別にそういうCM契約は結んでいないにもかかわらず、TV局側から立花氏に放送したいと取材申し込みをしているからです。
TV局は愚かにも、自分で自分の首を絞めに行っていたことにすら気づいてなかったのです。
ポスタージャックは成功だったのか?
さて、ここまで立花党首の思い通りに事が運んだように見えますが、実際のところ今回のポスタージャックは成功だったのでしょうか?
結論から言うと、現時点では 失敗 だったように思います。
その理由は、下記の通りです。
・掲示板ジャック希望者が思ったほど集まらなかった(収入・質の問題)
・マスコミの報道控えを招いた(掲示板の宣伝効果も下がった)
・掲示板設置個所を見直す時間を与えた(都側の対抗措置?)
掲示板ジャック希望者が思ったほど集まらなかった(収入・質の問題)
まず「掲示板ジャック」が何だったかを簡単にまとめましょう。
NHK党は、党派・推薦あわせて24名が立候補し、48枚分ある掲示板枠の半分をNHK党関係者が貼れる状況を作りました。
これだけでも候補者と立花氏の2ショット写真を使うなどして、掲示板の半分を「立花孝志」と「NHK受信料問題」に関する文面で埋められます。
しかし、印刷費や各掲示板へ貼り付けるための交通費といった諸コストを考えると、全ての掲示板で完遂するのには莫大なお金が必要です。そこで、「NHK党に一定額を寄付すれば、寄付者の希望する内容のポスターを掲示板に最大24枚貼ることができる権利」を”許可”するという戦略を展開しました。
これがいわゆる「掲示板ジャック」、「ポスター枠販売行為」と言われた行為の概要です。
あくまでも党への寄付に対する見返りであって、営利目的で枠を販売したわけではありません。(テレビはそう言いたいでしょうが)
※2024年6月20日時点での説明動画。もちろん現在は掲示板が撤去されているので募集は終了しています
動画内では諸費用が説明されていますが、1件あたりNHK党に2万5000円の寄付となるように設定されているようでした。ということは、120件ごとに立候補者1人分の供託金300万円が回収できるという計算になり、2880件応募があれば24人全員分の供託金も回収できたと考えられます。
都内には約1万4000か所の掲示板があったため、2割程度ジャックできればよいことになります。
しかし、実際には立花党首が想定していたほどの応募は集まらなかったようです。 東京新聞の記事 によれば、6月21日時点で1000~1500箇所程度と説明、寄付額も1000万円程度とされており、1件あたり寄付額は1万円ほどだったと考えられます。
またジャック応募者が用意したポスターの中には一部ルールが守られておらず、剥がす、あるいはNHK党が用意したポスターへの張り替えなどの対応が行われた場所もあったようです。
そのほか刺激的な掲載内容で、ポスターを見た人が怒って破るなどしてしまい、警察に逮捕されたという情報も上がっています。
(ポスターの破損行為は明確な法律違反です)
こういった出来事は「不適切ポスター」などとして取り上げられ、マスコミ側とすれば立花氏を叩く格好の材料となってしまうため、立花氏としてもこのようなカタチでの話題になることは望んでいなかっただろうと考えられます。
なお、ほぼ全裸ポスターが特にニュースとして取り上げられましたが、あれは河合ゆうすけ氏が掲出したポスターです。
2021年の参議院選挙時に河合ゆうすけ氏はNHK党公認で出馬していましたが、今回はNHK党の公認でも推薦でもありません。
混同なきようお願いします。
※河合ゆうすけ氏はこの件について警視庁から警告を受けていますが、あくまでも表現の自由として適法だという趣旨の主張しています。
また、今回の都知事選の無効を訴える提起を行っています
マスコミの報道控えを招いた(掲示板の宣伝効果も下がった)
さて、選挙戦前半こそこのポスタージャック事件は大きく取り沙汰されますが、ある時期からか不思議とポスタージャックどころか、東京都知事選自体がほとんどマスコミ報道に出てこなくなるという、不思議な状況となりました。
前述の通り、都知事選挙をTVニュースで取り扱うと「そういえばあの掲示板はどうなった?」という話になってしまうので、また立花氏の無償のCMを電波に乗せることとなってしまいます。それを確実に防ぐには、選挙が終わるまで静観するというのが無難な答えになってしまったのです。
実はポスタージャックには、そういったTVニュース等で扱われることを見越した「影の宣伝効果」も見え隠れしていました。
ポスターには営利目的な内容の掲載は禁止されていましたが、結局のところQRコードなどでSNSのアカウントなどにジャンプすれば、間接的に「この人はこのような商売をしている」といった情報にたどり着くので、特に水商売関係の人が応募していれば十分すぎるほどに効果があったと考えられます。
3万円ほどの寄付や諸経費だけでテレビCMと同じ効果が実現できるとしたら、当然正規のテレビCMよりもずっとずっと安価であることは言うまでもないでしょう。
しかし、選挙戦後半のようにマスコミの報道控えが起こってってしまうと、このような「影の宣伝効果」も無くなってしまいます。
そしてこれは次の項目の影響も相まって、応募者の伸び悩みにも繋がっていったと考えられます。
掲示板設置個所を見直す時間を与えた(都側の対抗措置?)
最後に、この動画で自分が気づいた点についてもお話します。
立花党首が選挙掲示板ジャック構想を語っていたのはかなり以前からで、「都知事選で~」といった部分も含めて予告のような発言が散見されていました。東京都側からしてみれば、立花党首の発言をチェックしていれば対抗措置を考える時間はあったはずだと考えられます。
上の動画は、東京23区の区役所を訪問して期日前投票の様子を実際に見てこようとしたものですが、その際「最寄り駅から区役所までの経路に、ほとんど掲示板が無い」ことに気が付きました。
もちろん、23区のうち8区しか回れなかったこともあり、全ての区役所がそうだったわけでもないのですが、拍子抜けするほどに通り道で掲示板を見つけることができなかったことに驚いたのです。
例えば中央区区役所では区役所の壁に沿って2か所に掲示板が設置されていたのですが、正面玄関の真反対側であり、バス停や新富町駅から来た人が絶対に通らないであろう場所にのみ設置されていました。
なお、2つともジャックはされていました。
また品川区役所の場合、東急下神明駅から歩いた場合は最低3つは目に入る場所に掲示板があったのですが、大井町駅から行った場合は日陰となるガード下側を歩くと1つも見ることなく区役所に着いてしまうこともわかりました。
※ガード下ではない側を歩くと1つあり、そこもジャックされていた。
下神明駅は大井町駅を始発とする東急大井町線の1つ目の駅であり、利用者数は3路線が乗り入れる大井町駅の方が圧倒的に多いです。なぜ利用者数の多い大井町駅側に掲示板が多く設置されていないのでしょうか?
こういったことから、もしかすると東京都は ジャックされてもいいように掲示板を人目がつかない所に移設したか、そもそも最初から人目がつかない場所が指定されているかのどちらかではないかと考えました。
実際のところ上の動画で言及している通り、東京都側はNHK党とも話し合いをしながらも、不意打ち的に「49番目以降はクリアファイルです」という説明をしたようです。東京都選管は49番以降のための掲示板増設はするつもりは最初から無く、あわよくばNHK党・立花氏への批判が盛り上がればいいという狙いが透けて見えるような態度だったことが伺えます。
もちろん真意を東京選管側が語ることは無いとは思いますが、いずれにしろ受ける印象としては「だったら選挙掲示板なんていらないのでは」ということに変わりありません。ただ、これに気づけるきっかけをもらえたのは、NHK党の掲示板ジャックがあったからなのは間違いないと思います。
ジャックの効果は現時点では限定的
掲示板ジャックは今回の結果だけを見れば、NHK党にとってもジャックした人にとってもそこまで大きな恩恵はもたらさなかったかもしれません。
これが掲示板見直しや廃止への契機となり、インターネットを活用した選挙への転機になるかもしれませんし、もし廃止されなけば次回の都知事選挙で再び立花氏がジャックの呼びかけを行ってくるかもしれません。
そう考えると、掲示板の廃止などは立花氏にとって「どっちでもいい」わけで、手段にはなっても目的では無いことがわかります。
マスコミはマスコミで今度は石丸伸二氏批判を猛展開しており、掲示板ジャックのことなどすっかり忘れたかのように、話題の塗り替えに必至になっているようです。むしろ選挙が終わった後の方が、蓮舫氏や小池氏など各候補へフォーカスした内容を放送し始めており、まるでこれから都知事選挙があるかのような不思議な放送編成となっています。
であるならば、一部の立候補者で指摘されていた公職選挙法違反が疑われる行為の数々について、警察による捜査がしっかりと行われるよう是非マスコミ側は圧力をかけてもらいたいものです。
投開票は既に終わりましたが、もしかしたら今回の都知事選挙の歴史的な見どころはこれから始まるのかもしれません。