兵器としての鉄道
ここが どこだかわかりますか?
おそらく日本人なら、よく名前だけは聞いたことがある場所ではないかと思います。非常に有名な東京都内のある場所です。
正解は、靖国神社です。正確には靖国神社敷地内にある遊就館内のエントランスにあります。靖国神社には2018年に1度訪問したことがありますが、この機関車があることは実際に行くまで知りませんでした。
C56形31号機 蒸気機関車
この蒸気機関車C56-31号機は見た目こそ標準的な日本形式機関車ですが、先の戦争の時に泰緬鉄道(タイとビルマ、現在のミャンマーとを結ぶ鉄道)建設のために運びこまれ、戦後も昭和52年までタイ国鉄の車両として使用されていた車両です。日本でよりもタイで走っていた期間の方がずっと長い機関車なんですね。
タイでの引退後、泰緬鉄道建設当時に関わった人達により日本へと帰国、靖国神社へと奉納されることとなりました。連結器などの形状が日本式の物とは異なり、前面側面によくついている除煙板が無いのも見た目上の特徴です。
わずか1年3か月で完成させた驚異的なスピード工事だったのですが、建設犠牲者がすさまじい数で、また、連合国側の捕虜が多数動員されていたこともあり「死の鉄道」という名前の方が英語圏では有名なようです。
それほどまでに完成を急いだのにはもちろん理由がありました。インパール作戦・日本名ウ号作戦での兵員・物資輸送で不可欠だったのですが、この戦いで日本軍側は大敗を喫することになりました。その後泰緬鉄道の一部は破壊され、現在もタイ国鉄はその区間が寸断されているといいます。
※なお、施設内には他にも旧陸軍の 九七式中戦車(通称 チハ)や、旧海軍の艦上爆撃機「彗星」、特攻機「桜花」「回天」なども展示されている。
鉄道は今でも戦争の重要「兵器」
現代の方にはあまり実感が無いかもしれませんが、鉄道と戦争はかなり密接な関係があります。現代でも戦車などの輸送に鉄道は使われていますし、兵員輸送も大量度合いでは自動車や飛行機に勝りますし、船よりもスピード面で勝る中間的な立ち位置を保っています。陸軍には占領地域などで簡易的な鉄道を工事する鉄道部隊というものもあり、そのための小型機関車などもありました。
鉄道の労働組合が、たいてい反核・反戦・平和主義を訴えているのにはここに理由があると考えられます。もし戦争が起きれば自分達鉄道員も戦争に巻き込まれる。だから反戦を訴えて抗議しよう、という考えです。実際のところ、戦時中は米軍機に列車が標的にされ破壊された事件もいくつか記録が残っていますし、当然鉄道係員にも犠牲者が出ています。それを意識したことなのでしょう。
ただ現実的な話として、協力しなかった結果日本が再び敗戦となれば、そこにあなた達の望む世界があるのかといえば、そんなことはないでしょう。ウクライナ、香港、ウィグル、北朝鮮で起きているようなことが、沖縄、北海道、あるいは東京のどこかでいつ起こっていても不思議ではないです。
話し合いで戦争が終わるという幻想は既に打ち破られています。
C56形44号機 蒸気機関車の余生
余談ですが、タイなど南方に行って日本に帰国したC56形機関車はもう1機あって、大井川鉄道のC56-44号機がそれです。こちらは日本仕様に戻されて動態保存され、営業運行も行われていました。
2015年にはきかんしゃトーマスの「ジェームス」を模した装飾を施されました。現在は休車中で、本線走行することは無いようです。
※この記事は、postprimeで無料投稿した8/16の記事の再掲に、写真を追加した物となります。https://postprime.com/tF34UWWU4dPKZ/posts/1901545108