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都庁プロジェクションマッピングと日本共産党~お値段はいくらが妥当か?


48億円・電通案件批判の「ひとり歩き」

 都知事選前後でしばしば小池百合子批判に展開された、東京都庁プロジェクションマッピング。常設の物としては世界最大規模として、実はギネス世界記録にも認定されているそうだ。

 上記の資料を見ると、このプロジェクトマッピングシステムに必要な機材等が見えてくる。わかりやすい所で、プロジェクタ(映写機)から見積もってみよう。

プロジェクタ(映写機)

 上記の資料によれば、2種のプロジェクタが各20台使用されていることがわかる。ここに他国の機材が使われているのならもちろん批判の対象だったろうと思うが、ひとまず日本企業パナソニック社の物で安心した。

 PT-RQ50KJ
 こちらはメインのプロジェクタで、業務用かつプロ仕様の最高峰仕様。
わかりやすいところで言えば4K対応画素(約884万画素)で、安価な一般用だと8万画素程度しか無いから100倍以上の高密度画像を扱えると言える。
 価格はオープン価格だが、たとえば下記の楽天市場に出ていた物だと、
約4713万円で 販売されていた。


 PT-RZ34KJ
 こちらはサブのプロジェクタとみられ、上の物と比べると小型ながらパワフルなパフォーマンスを発揮してくれる。こちらの画素数は230万画素なので、おそらくメインの映像に重ねる演出用のプロジェクタなのではないかと思われる。

 それでも下記の楽天市場に出ていた物の価格を見て見ると、
約2191万円 となかなかの値段だ。


 おそらく上記の値段は、実際のメーカー希望価格より安いとは思うが、
とりあえず上記の値段に消費税10%をかけて見積もってみよう。

PT-RQ50KJ
 4713万7200円 ×20(台) ×110%(消費税)
=10億3701万8400円

PT-RZ34KJ
 2191万2000円 ×20(台) ×110%(消費税)
=4億8206万4000円

小計:15億1908万2400円

プロジェクタ 本体 

 ざっと見積もっても、15億円余となった。
 なおこれらのプロジェクタには別売りのレンズが必要となるが、受注生産品のためハッキリとした値段はわからない。楽天市場で取り扱っていた交換レンズで、PT-RQ50K適合品の1つで約526万円PT-RZ34KJ適合品の一つで約83万円という商品があったので、これを参考値に見積もってみよう。

レンズ1
 526万6800円 ×20(台) ×1.10(%)
=1億1586万9600円

レンズ2
 83万3712円 ×20(台) ×1.10(%)
=1834万1664円

小計:1億3421万1264円

 本体と合わせると、ここまで合計で 16億5329万3664円 となった。
もうこの時点で48億円の3分の1は「メインのプロジェクタ代」であろうことが推測できる。

 もちろんこれらはまだ序の口で、ほかにも掛かる費用は色々ある。
 その他の機材を考えてみよう。

それ以外の機器類・ハードコスト

 プロジェクションマッピングは映写機単独では動作しない。
先ほども掲載した上記リンクによれば、たとえば以下の4種の機械が必要なようだ。

・AcroSignコントローラー
 →プロジェクタとスピーカー等を制御・コントロールするための機械。
・映像サーバー
 →実際に投影する映像の元データを保存する機械。
・立体音響スピーカー
 →屋外かつ荒天にも対応した、スタジアム並み設備が必要と思われる。
・モニタリングカメラ
 →投影が実際に正しく表示されているか確認するためのカメラ

 たとえばスピーカーは、下記資料から11組22台導入されたことがわかった。これもパナソニック製で、楽天市場では1組あたり約126万円で販売されていた。
 全部で約1530万円

 また、スピーカーを制御するパワーアンプが2種各4台の計8台。
こちらも楽天市場の値段では、1つが約124万円、もう1つが約78万円。
計算の結果、あわせて約895万円という計算結果となった。


この2つだけでも、約2400万円
また、これらを制御するデジタルミキサーも納入されていることが上記資料からわかっている。そちらの価格が約52万円だった。

AcroSignコントローラーに関しては値段がわからなかったが、概ねこれらと同じぐらいの値段がかかっているのではないかと思われる。

 さらに、これらの機器を接続するためのケーブル、電源配線類を整えるだけでも大仕事だろう。
 計画設計だけでも一苦労だろうから、それなりの人件費がかかったことが予想される

 当たり前だが、それぞれの機器類を稼働させれば 電気代 も発生するからそのための予算という意味である程度資金を確保する必要もあるはずだ。

 消費電力については、ここまでわかっている機器の分だけでも下記の通りとなる。

・プロジェクタ
 (約4000W+約2500W)×20 =13万W =130kW
・アンプ(スピーカー)
 (約1800W+約600W) ×4 =9600W =9.6KW
・ミキサー
  約34W =0.034KW

小計 139.6034KW  ≒140KW

基本消費電力

1日あたり演出は、19:30~21:45の 2時間15分 =2.25時間
したがって、1日当たり消費電力は、

 140×2.25=315KWh

上記消費電力計算ツールで計算した電気代は、
1日あたり 約 2万5800円。
365日で 約941万6500円。

1日あたり消費電力

 以上のことからここまで、

 機器類 約17億円
+設置人件費 ?円
+電気代 約950万円/年

の費用が掛かることがわかった。

ソフト面・権利関係・ランニングコスト

映像・音源制作コスト

 機械類の準備が整っても、肝心の映像と音源が用意できていなければ意味が無い。特に4K映像の制作は、編集作業のためのパソコンにもかなりの性能が要求される。特殊なプロジェクションマッピング製作のためのソフトウェアライセンスも購入しなければならない。

 この環境を準備するだけでもそれなりのコストがかかるだろうし、プロに依頼するならそれだけの対価も要求されるだろう。その紹介・あっせん料が高く付くとしても、正直電通を責めにくいところだろう。まだまだこの技術を持った人は少ないのが現状だからだ。

 映像、音源で既存のアーティストや作品を使うのならば、そのライセンス料も発生する。期間が長ければそれに比例してコストも上がる。
 そして完成品を利用するとしても、プロジェクションマッピングという題在に合わせた調整・編集は必須だろうから、ここでも人件費がかかる。こちらも準備期間が長いほど雪だるま式に増えるだろう。

NHKの記事

 上記記事では、映像制作に約3.2億~4.9億円。
さらに機器のリースや保守点検などに約1.4億~6.3億円と書かれている。
 これらは年間のランニングコストだと考えられるので、電気代もこれに含まれているとして考えよう。

2年間の平均として、年約8億円がかかるものと考えられる。

 記事では機器はリースと書かれていたが、常設型なので買い切りしたという想定で計算は引き続き行う。

 なお経済波及効果としては、訪問者の飲食や宿泊代などにより、年18億円の効果があるとしている。


最終的な計算結果

 ・初期費用 約17億円
 ・ランニングコスト 約8億円/年 (映像制作、保守等)

  初年度 17+8億=25億円
  2年目 8億円

合計 33億円

 ここまでの時点で、ザックリ 約33億円 が必要だったと計算結果が出た。

 ただし前述の通り、専用の映像・音源制作には手間と時間がかかるから、既に次年度以降の映像制作依頼も行われていると考えられる。

 仮にもう2年先(2027年度)まで製作依頼および保守点検要請が出されているとすれば、8億円×2年で+16億円が掛かっているだろうから、
あわせて 49億円となるだろう。
 これは先だって依頼が出されるだろうから、既に現在の予算に含まれている可能性はあるだろう。

 そして、知事の言う通りの経済波及効果があるならば、初年度はともかく次年度以降は1年あたり10億円の黒字となるようだ。

知事の言う通りの経済波及効果があれば、
年+10億円の黒字効果が見込める。

批判の根拠

 実際のところ、批判でよく出てくる「48億円」というのは、
池川友一都議(日本共産党)という人物の告発が発端となっているらしい。

 上記の記事によれば、批判内容は主に次の通りである。

 1.巨額の税金投入は無駄という批判
 2.指名停止中の電通系への事業委託の経緯が不明瞭だという批判
 3.都庁では毎週700人への食料支援も実施、税金用途への批判


 この事業は年8億円の税金をかけて、+18億円の「収入」を都民、または周辺企業にもたらしているのだから、黒字事業である。当然その利益から税金を徴収しているのだから、東京都にとっても増収効果が期待できる。

 したがって、

2.指名停止中の電通系への事業委託の経緯が不明瞭だという批判

に関しては今後の展開に注目するべき話題ではあるのが、それ以外の批判に関しては筋違いも甚だしいと言えるだろう。
 黒字なら税金の無駄ではないし、税収の増加となれば食料支援の資金源にもなるのではないか?

おわりに


 以上の通り、

「指名停止中のはずの電通系へのカネの流れの経緯」や、
「本当に小池知事の言う通りの経済波及効果があるのか?」

といった疑問はあるものの、

プロジェクションマッピング技術者にとって腕の見せ所となるような環境が用意されたこと自体は、この事業について好意的に評価したい。

 新宿東口側地区は東急歌舞伎町タワーの稼働開始、3D猫で代表される新宿アルタビジョンなどの盛り上がりがある一方、都庁のある西口側地区は、相次ぐ再開発やビルの解体などにより、少々盛り上がりに欠けていたのも事実だったと思う。

 一方、JRや私鉄・地下鉄・バスタ新宿などの交通の結束地点としての新宿の機能は健在で人流も盛んであり、西口地区がこの恩恵を取りこぼしているのだとしたら、それは非常にもったいない、大きな経済機会損失だろう。

 こういった事情を無視して「都税48億円の無駄遣い!」と馬鹿の1つ覚えで叫んでいるのだとしたら、その人達にこそよほど都民の財布の紐を預けるべきでは無いだろう。

 ではその浮かせた48億円で、何をするつもりなのか?
 それは年間18億円以上の経済波及効果をもたらすのか?

 是非とも語っていただきたいところである。
 きっと小池知事も非常に高い関心を持っておられるはずだ。



 今回の記事を制作するきっかけとなったXの投稿は コチラ

以上

追記:関連投稿

※タイトルを変更しました

都庁プロジェクションマッピングのお値段はいくらが妥当か?
→都庁プロジェクションマッピングと日本共産党~お値段はいくらが妥当か?

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