革命前夜【別サイト掲載作品】
「ねえ、どうして夜の海は、こんなにも飛び込みたくなるの?」
『どうしてだろうね。』
「本能的に避けるはずの暗闇が、揺らめいて煌めいて私を呼んで、その誘いに私も乗りたくなるのはなぜ?」
『なぜだろうね。』
「あなたは考えたことないの?」
『あるよ。あるけど、そんなこと考えたってわかりっこないんだ。
だから、何も考えずに飛び込もうよ。』
・・・
『どうしたの?怖くなってきた?』
「うんう、違うの。 ここから見る海はもうこれで最後だから。」
『たしかにそうだね。水面に写る月を見るのはこれが最後で、僕らはこれから死ぬまで水中から月を見れるんだよ。』
「そんな体験も一瞬で終わっちゃうのかな。」
『人生なんてそんなもんさ。僕のおじいちゃんもあっという間の人生だったって言って死んでったよ。』
「ふふ。それで私を安心させたつもりなの?」
『遅かれ早かれ人は死ぬんだ。僕らはそれを自ら選んだだけのこと。
自らが望む場所で、自らが望んだ人と、ね。』
彼女は少し恥ずかしげな表情をして、酸素マスクを装着した。
ありふれた風景の、ありふれていない部分を見て最期を遂げたい ーーー
僕ら2人は、自ら死を選ぶことにした。
当たり前のようにある海、そんな海の中からこの世界を覗いて死にたい。2人で。
7時間経つと酸素が尽きるマスクとピカピカに磨いた水中メガネを装着し、夜の海に飛び込み、景色を堪能し、
朝になった頃にこの世を去れるようにした。
「何か最後に言い残すことは?飛び込んだら私たちもう話せないよ。」
『革命前夜みたいだね。』
「どういうこと?」
『わくわくするんだ。まだこの世の誰1人もやったことがないことに挑戦するんだから。』
「あの世には居るかもね。ふふふ。」
『ははは、たしかにね。』
愛してるよ
そう言おうとしたけど、
やっぱりあの世で言うことにした。
そして僕たちは、2人手を繋いで、真っ暗な夜の海に飛び込んだ。
背中から徐々に沈んでいく僕らの眼前には最初で最後の絶景が広がる。
彼女の手の力がぎゅっと強まったのがわかった。
(怖くない、むしろわくわくする)
そう思っている僕と、おそらくほとんど同じことを彼女も考えているのだろうと、なぜかわかった。
僕は今、君が居るから怖くないんだよ。君が居るからわくわくするんだよ。
冷たい海があったかくなるまで、僕たちはずっと2人でいた。
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別サイトで「○○前夜」をテーマに短編を書くというコンテストに応募したものです。
おそらくまあ結果はそんな良くないと思います。
非常に恥ずかしい作品を書きました。
でもまあこれも真っ暗な夜の海で読むのなら、恥ずかしくないかもしれませんね。
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