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「DAP」のススメ:トーキョーN◎VAシナリオ覚書

 この記事は、SONEがトーキョーN◎VAシナリオ「イコノクラスト」において使用したアクトルール、「神業アドバンテージポイント(DAP)」についての覚書です。

■神業アドバンテージポイント(DAP)

●概要
 「神業アドバンテージポイント」とは、キャストたちが敵対勢力に対し、どの程度のアドバンテージ(優位性)を得ているかを示す指標だ。アクト中、状況に即した神業をひとつ使用するたびに神業アドバンテージポイント(Devine-works Advantage Point、以下DAP)が1ポイント加算される。このポイントはキャスト全体で共有される(キャスト個々に管理することはない) クライマックスフェイズの難易度は、このDAPによって決定される。これは「キャストが神業を使う」ことは、ほとんどの場合、敵対勢力に対して何かしら優位性を得ることに繋がるためだ。この優位性を、クライマックスフェイズで相対する敵戦力の変化という形で表現している。具体的な戦力の指標は、下記の通りだ。
 DAPを得られる状況は、シナリオの各シーンの解説欄に「▼神業」として例示される。それ以外でも、相応しいとRLが判断した場合は、積極的にポイントを与えていくとよいだろう。逆に、あまりにも状況的に無意味な神業の使用には、ポイントを与える必要はない。なお《ファイト!》ではDAPを得ることはできない(《ファイト!》の効果で増えた神業によって得ることはできる)

DAP指標の例①
DAPの初期値:(5-n)×3
DAPの現在値:クライマックスフェイズの敵戦力
0~2:ゲストA×3、ゲストB×3、トループ(n+1)グループ
3~4:ゲストA×3、ゲストB×2、トループ(n+1)グループ
5~6:ゲストA×2、ゲストB×2、トループ(n)グループ
7~8:ゲストA×2、ゲストB×1、トループ(n)グループ
9~10:ゲストA×1、ゲストB×1、トループ(n-1)グループ
11~12:ゲストA×1、トループ(n-1)グループ
13~:トループ(n)グループ
※n=プレイヤー人数
※ゲストAは即死系神業1、ゲストBは即死系神業2を持つ。
 想定プレイヤー人数は2~5人。ベーシックな指標だ。キャストの必要防御系神業数は0~9。ゲストA・Bともに、あまり個性のないキャラクターである場合に向いている。
DAP指標の例②
DAPの初期値:(3-n)×3
DAPの現在値:クライマックスフェイズの敵戦力
0~2:ゲストA×1、ゲストB×2、トループ(n-1)グループ
3~4:ゲストA×1、ゲストB×1、トループ(n-1)グループ
5~6:ゲストA×1、トループ(n)グループ
7~:ゲストA×1
※n=プレイヤー人数
※ゲストAは即死系神業1、ゲストBは即死系神業2を持つ。
 想定プレイヤー人数は1~3人。少人数アクトに向く。キャストの必要防御系神業数は1~5。「ゲストAのキャラクターが個性的」「ゲストAとの戦いがアクトにおいて重要となる」場合に向いている。

●このアクトルールの目的
 DAPルールの目的は、「キャストが神業を使いやすくする」ことだ。
 N◎VAの神業の特徴は、ただのキャストの切り札(ルールタームとしての「切り札」ではない)というだけでなく、「表現力」が非常に高いことだ。単に「敵を倒す」だけでなく、その効果は多岐に渡る。さらに抽象性が極めて高く、演出においてはプレイヤーの表現力が存分に発揮される。これにより、神業は「キャストの印象的な活躍シーンを演出するツール」として活用されるのだ。
 一方、神業はその強力さと回数制限の厳しさゆえ、基本的に温存される。そしてシナリオ上の要所や、クライマックスフェイズのカット進行において使うもの(それ以外の用途はあくまでイレギュラー)という不文律が、ある程度存在する。一般的なアクトでは、リサーチフェイズにアクトを進めるために1~2回、残りのほとんどをクライマックスフェイズのカット進行で、エンディングで話のオチのために1~2回使用するという感じだろう。そして、それを前提に一般的なシナリオは製作されている。このテンプレートを外れたときの指針もないため、プレイヤーが創意工夫のもとに神業を使用するのは、なかなか厳しい。
 それが悪いわけではない。安定しており、事故が少なくなる。それはよいことだ。ただ「このシナリオのここで、神業を使いたい」「ここで神業使ったらかっこいいけど、後のことを考えたら使えない」というジレンマは確実に存在する。また、大半をクライマックスフェイズで使用するということは、「多数の神業が一気にクライマックスで乱れ飛ぶ」ことになり、個々の神業の印象が薄れてしまうことにもなる。
 DAPルールは、それらのストレスからプレイヤーを解放し、より自由な神業の使用を提案するものだ。DAPルールのもとでは、神業を温存しても、先に使っても、最終的な難易度に差が出ることはない。また、神業の使用タイミングがある程度前倒しになりやすいため、クライマックスフェイズでの神業乱れ撃ちが抑制される。個々の神業によりフォーカスすることも可能になるだろう。これが万能の解ではないが、「限定的な範囲では、より楽しいアクトを実現できる」のではないかと筆者は考えている。

■DAPシナリオを遊ぶ(RL向け)

 DAPルールを使用したシナリオを、以下「DAPシナリオ」と呼称する。そのようなシナリオを遊ぶ際の注意点を以下に上げる。

●DAPシナリオのデメリット
 DAPルールには、いくつかのデメリットがある。遊ぶ上で、RLは以下のことに留意しておくとよいだろう。

◆神業の「意味」の喪失
 このルールのもとでは、キャストの神業は「使っても使わなくても実質的に同じ」だ。使用してDAPを稼いでも、使用せずクライマックスの戦闘に持ち越しても、アクトの困難さはそれほど変化しない。使うことで劇的に状況を変化させる「切り札」ではなく、「あってもなくても変わらない」ものになっている。これは非常に危ういことだ。「神業を使っても使わなくても同じ」というのは、神業の「意味」を喪失させる。意味を喪失した神業は、ただの「キャストが活躍するシーンを演出するチケット」になる。
 とは言え、「ここで指定された神業を使うとメリットがある」というギミックを有するシナリオ(つまり普通のシナリオだ)も、本質的には同じだ。メリットがあるならプレイヤーはその神業を使うし、それを前提にシナリオの困難の度合いは決まってくる。「意味の喪失」に関しては、似たりよったりなのだ。ただ、DAPルールはこのことを積極的に開示している。結果、プレイヤーはメカニズムを理解しやすくなり、「意味の喪失」を実感しやすいのだ。

◆神業の効果の平準化
 キャストが創意工夫により、すばらしい神業の使い方を考えつき、それを実行したとする。シナリオの文脈と合致し、予想もつかない展開を生み出す一手となるような使い方だ。通常のシナリオでは、その場合はシナリオの大幅なアレンジが必要となるだろう。だが、DAPシナリオでは、特にアレンジをする必要はない。「DAPを1点得られるよ。キミのその神業により、敵はさらなる対処を迫られた」とし、そのままアクトを進行すればよい。これはRLにとって「楽」というメリットだ。一方、プレイヤーにとっては、「すばらしいアイデアが一律のポイントに還元され、見た目上の影響を感じられない」となる可能性はある。これは非常にしょんぼりする。
 「どんな神業を使っても一緒」というのは、このようなデメリットがある。それを解消する手段は――ぶっちゃけると、ない。何せ通常のシナリオでも、別にそれをどう処理するかの答えはないのだ。つまり、このデメリットに関しては「通常のアクトと同じ」だ。ただ、これも「ルールが見えすぎている」ために不満が出やすくはあるだろう。
 例外的な処理だが、RLは「あまりに素晴らしい」と感じたなら、得られるDAPを1点ではなく2点にしてもよいだろう。これは指標のバランス崩壊や、不公平感を招く(神業に差異をつける)ため、1アクト1回程度に留めること。

◆メタ指向の強化
 これらのデメリットを軽減する方法はある。それは「そういうものだ」と割り切ってもらうことだ。DAPルールのもとでの神業は、「使用することでキャストが活躍するシーンを演出できる」「アクトのストーリーにキャストの個性を反映させる」ためのチケットとして扱われる。それはそれで楽しいゲーム体験になる、と筆者は考えている。いわゆる「ナラティブ」というやつだ!(ナラティブという言葉の定義は、勝手に調べてくれ)
 それでもトーキョーN◎VAというゲームの持つ、もともとメタ視点に頼る傾向をより強めることになる。あまりに強すぎるメタ指向は、ゲームの直観性を失わせる。それはゲームを直感で理解すること妨げるため、エントリー層にとって厳しいものとなるだろう。つまり、DAPルールを用いたシナリオは、必然的にハイエンドユーザー向けになる。このことは理解しておいてほしい。

■DAPシナリオを作る(シナリオ作成者向け)

 自分でも「DAPシナリオを作ってみたい」という方もいるだろう。そこで、いくつかの注意点を挙げる。なお「敵NPCのデザイン」に関しては、非常にテキスト量が多いため、独立して項目を立てている。

●DAPシナリオのデザイン
◆シナリオのイメージング
 まず、DAPシナリオを作成する際には、シナリオのイメージング段階から、それを前提に考えることが望ましい。通常のシナリオをイメージしていて、後からそれをDAPシナリオに変更することは、あまり望ましくはない。筆者がDAPシナリオに「向いている」と考える題材は、以下のようなものだ。
・キャストが全員でチームを組む。
・あまり複雑な進行をしない。
・重めのルール的なギミックがない。
・静的な情報収集より、派手なアクションが主体。
 まず、これに合致しているかを考えた上で、DAPシナリオに挑戦してみてほしい。
◆プレアクト
 DAPシナリオのメリットのひとつは、「必要な神業」がほとんどないことだ。そのため、推奨スタイルとその神業を「必要な神業」として用意させる意味が薄い。転じて、さまざまなキャストを受け入れられる「推奨スタイル:なし」「チームで共通のハンドアウト」をやりやすい。自由なキャスト作成を楽しんでもらおう。
 一方で「どんなキャストを作ればいいのかわからない」というプレイヤーも出るだろう。その場合、クイックスタートとして適当なサンプルキャラクターを指定するとよい。そのサンプルキャラクターを例として提示するのだ(もちろん、そのサンプルキャラクターをそのまま使っても構わない)
◆オープニングフェイズ
 DAPシナリオはチーム導入に向いている。チーム導入ということは、オープニングにそれほど力を入れる必要はない。キャストそれぞれに自己紹介としてキャラクター性を表現してもらい、チームへの導入を行なうとよい。それでは「オープニングで好き勝手できない」と言うプレイヤーもいるだろう。だが、DAPシナリオでは「どうせリサーチフェイズから好き勝手できるんだから我慢しとけ」と返せばよい。何となれば、オープニングから神業を使ってDAPを稼いでもよいくらいだ。
◆リサーチフェイズ
 DAPシナリオの一番のキモは、このリサーチフェイズだ。
▼イベントシーン
 DAPシナリオは、イベントシーンの重要度が他のシナリオよりも高い。これは神業を使用してDAPを獲得する上で、「どんなシチュエーションなのか」が重要となるためだ。とにかくイベントを充実させることが必要だ。以下にDAPを獲得しやすい、プレイヤーが神業を使いたくなるシチュエーション例を挙げる。シーンを作る際は、なるべくこれらを複合させ、ひとつのイベントシーン内に複数のDAP獲得手段があるようにするとよい。また、プレイヤーが「DAPを獲得しなくてもよい」と判断した場合のために、判定や宣言のみでも状況を突破できるとしておこう。

シチュエーションの例
・チェイス
 ヴィークルや生身によるチェイス。敵を追ったり、逆に敵から逃げるなどのシチュエーションだ。《脱出》《突破》《不可知》などでDAPを獲得できる。
・ネゴシエーション
 利害関係のある相手と交渉するシチュエーションだ。手がかりを知る相手から、それを聞き出すなど。《真実》《プリーズ!》《買収》《神の御言葉》などでDAPを獲得できる。
・ハイド&シーク
 隠れる、あるいは隠されたものを探すシチュエーションだ。隠れるなら《不可知》《不可触》、探すなら《真実》《電脳神》などでDAPを獲得できる。
・バトル
 読んで字のごとく、敵との戦闘だ。《死の舞踏》《とどめの一撃》《天変地異》などでDAPを獲得できる。リサーチフェイズでの小手調べの戦闘などは、このようなシチュエーションで処理するとよい。
・ペイシェンス
 忍耐、困難に耐えるシチュエーション。突然の銃撃を受けたり、高温の炉心で活動するなど。《難攻不落》《黄泉還り》などでDAPを獲得できる。
・ミステリー
 謎めいた暗号を解読するなど、何らかの謎を解くシチュエーションだ。《真実》《電脳神》《タイムリー》などでDAPを獲得できる。

▼情報収集
 情報収集の重要度は、通常のシナリオよりも落としてよい。情報項目も少なくて構わない。また「イベントシーンでしか手に入らない情報」を盛り込むとよい。イベントシーンの重要性を確保するとともに、《真実》《電脳神》などの情報系神業でDAPを獲得しやすくなる。
◆クライマックスフェイズ
 DAP指標を参考に、最後のカット進行をデザインするとよい。カット進行の内容は「戦闘」が最もわかりやすい。FS判定にしたり、勝利条件に変化をつけたりするのは、自由にしてよい。重要なのは「敵NPCが登場し、即死系神業を使う」シチュエーションであることだ。クライマックスフェイズは、要するにDAPを獲得するのに使えなかった神業(特に防御系神業と呼ばれるもの)を、一気に使用するタイミングでもあるからだ。
◆エンディングフェイズ
 これは通常のシナリオと同じだ。

●敵NPCのデザイン
 DAPシナリオ作成時における最大のネックは「敵のデザイン」だ。
 DAPは最終的に「クライマックスフェイズでの敵との戦闘(カット進行)」に反映される。それはおおむね「敵NPCの人数(敵ゲストの持つ即死系神業数)」によって表現される。要するに「クライマックスフェイズまで、敵ゲストの人数や神業数が決定されない」ということだ。シナリオ作成時には、これは大きなネックとなる。他のシナリオのように、「敵ゲストはこんな人物でこんなスタイルとデータを持つ」といった表現を行ないにくいのだ。必然、キャラクター性を持たない「量産型」のゲストになりやすい。これはクセが強く、感覚としてやりにくい。以下に、敵NPCのデザインについての注意点を上げる。
 ぶっちゃけると、DAPシナリオを作りやすくする手っ取り早い方法は、「①ストーリー上必要な敵NPC」と「②クライマックスで戦う敵NPC」を分けることだ。通常のシナリオでは、この2者はよく一致しているが、DAPシナリオにおいては分割した方がスマートになる。

①ストーリー上必要な敵NPC
 敵の親玉、事件の中心人物だ。キャストたちがアクトにおいて立ち向かうのは、この敵NPCが起こした何らかの事件となる。主にシナリオの前提条件を設定する役割をになう。
・データ区分はエキストラ
 このNPCのデータ区分は「エキストラ」が望ましい。そしてクライマックスフェイズにおいて戦うことはない。何らかの条件を満たす(後述の「クライマックスで戦う敵NPC」を倒すなど)ことで、倒すことができる、とアクトルールで設定するとよいだろう。
・神業は使用しない
 この敵NPCは、基本的に神業を使用しない。特に、「打ち消し」系の神業を持っているべきではない。DAPルールは、リサーチフェイズにおいてキャストが自由に神業を使うことが目的だ。NPCに打ち消されるかも、と警戒されてしまっては本末転倒だ。
②クライマックスで戦う敵NPC
 これは「①ストーリー上必要な敵NPC」の部下や、その手足となって動く連中だ。クライマックスフェイズでは、彼らと戦うことになる。彼らがどれくらい存在するのかは、DAPによって決定される。
・データ区分はゲスト/トループ
 このNPC のデータ区分は、ゲストかトループとなる。必然的にキャラクター性の薄い“量産型”になりやすいが、“リーダー格”くらいには名前と個性を与えてもよい。その場合、その“リーダー格”は「ゲストの1人」として扱うが、データ的に他と差別化する必要はない。指標によってゲストが不在になった場合、「トループの1人」に変更するなど、柔軟に対応するとよいだろう。
・神業について
 この敵NPC(ゲスト)の神業は、戦闘以外には使用されない。 クライマックスフェイズまで、どれくらい存在するか定まらないためだ。
・公式NPCデータを活用
 際立ったキャラクター性は不要なので、『TOS』などに掲載されている「NPCデータ」が活用しやすいだろう。即死系神業数を数え、DAP指標にあうものを当てはめていくとよい。
①②複合タイプ
 どうしても①と②を複合させたい場合もあるだろう。そのようなNPC(ゲスト)も、1人くらいなら出せるだろう。その場合、そのNPC(ゲスト)のために、指標からゲストまたはトループを1体省くこと。必要防御系神業数も再計算すること。

 とりあえずはこんなところだ。それでは、よいアクトを。

■注意書き

 「トーキョーN◎VA THE AXLERATION」は有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物です。この記事は同社の2次創作規約のもとで作成されています。



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