フワッと心に沁みた感動
私には4歳になったばかりの甥っ子が居る。
事情があって父と母が居る私の実家に、私の弟と
転がり込んできてからもう一年半位の時が流れている。
昨年の8月に三カ月ほど帰国していた私は、
その甥っ子と貴重な時間を過ごした。
お昼ご飯はよく一緒に食べたし、お散歩にもよく出かけた。
ただ可愛いなんて言葉では表現できない程
彼の言動、行動にどんどん引き込まれている自分を感じていた。
新しい環境で戸惑う彼と、この状況をなかなか受け入れられず
葛藤している母をただ見守る事しかできなかった。
母は昔からカッとなるとすぐに鬼の表情に変わり、
かなり厳しい物言いで感情を露にする人だった。
幼かった私は一度そんな母に「怒った時のお母さん…
何だか違う人みたい…」と言った途端、彼女を逆上させて
しまったという苦い思い出があり、それ以来、母を怒らせないように
言葉を選びながら生活する事が当たり前になっていたように思う。
滞在中は、甥っ子と母の関係を目の当たりにし、
この子の将来を懸念し、思い悩み
泣けてくる夜があった事を覚えている。
母とのコミュニケーションツールは専らLineで
甥っ子の成長が写真や動画で沢山送られてくる、
母は私の彼に対する熱い思いを彼女なりに
理解しているようで慣れないボイス機能も駆使して
愛おしい声も送ってくれたりする。
ある日、そんな母と電話で話していたら
「本当に大変だったけど、カイ君も大分聞き分けられるように
なってきたし、色々と慣れてきて前よりずいぶん楽になってきたは…」と
あー良かった…この状態がいつまでも続きますように、と
強く願った事はまだ記憶に新しい。
「実はこの前ね…」と母が切り出した。この感じ…
少しの恐怖心と好奇心が入り乱れたような感覚を感じながら
後に続く言葉を待っていた。
「お母さんまた何かお父さんにカッと来ちゃって強い口調で
言っちゃった事あったんだよね、そしたらどこで聴いていたのか
少し後からね、カイ君にこうやって言われたんだよ…」
「おばあちゃん、カイ君おじいちゃんのこと大好きなんだから
そんな事しないで、もうやめてね」って…
「いやーどこで聴いてたんだろう?その後少し経ってから
そうやって言いに来たんだよ…参っちゃったよ」
あー…去年はまだどこか不安気でポワっとしていた
あのカイ君が…。心の中に何かあたたかい物がフワッと注ぎ
込み目頭が熱くなった。
彼は逞しく成長している。
まっすぐにシンプルに感情を伝えられる、そんな強さを
誠実さを、優しさを… カイ君から教えられる喜びを私は遠くから
日々かみしめ感謝している。ありがとうカイ君、大好きだよ。