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竹工作 [竹のスマホスタンド]

孟宗竹との出会い

私はボランティで竹林整備に時々参加しています。その現場には孟宗竹がありました。ホームセンターなど一般にはあまり見かけない、とても太い竹。現場では切り倒して積んでおく(朽ちていく)のですが、この竹はそのままで価値があるんじゃないかと思いました。何かに使えるのではと。子供の頃から(手作り)工作好きで、素材をみるとワクワクすることがあるんです。そんな出会いでした。

作ったもの

そこで作ったものが、竹のスマホスタンドです。半割の竹の中にちょうどスマホが入り、音楽をかけると少しいい感じに聞こえます。後ろに抜ける音が前に回ってくるからでしょうね。画面を操作することもできるのでYouTubeを見るのにちょうどいい。他にも写真やちょっとしたものを飾るステージとしても使っています。竹自体が、内面も外面も美しいと思います。

スマホスタンド
活用例
正面、背面、側面

これって「竹を切って半分に割っただけでしょ?」って見えますよね。ほぼその通りなんですが、実際に作るにはいろいろとありました。これ以降は、その”いろいろ”の紹介です。

「竹を切って半分に割っただけでしょ?」

1)「竹を切って・・・?」

「竹を切って」⇒はい、その通りです。竹林から孟宗竹を2節分、上と下で切って、もらってきました。その段階では切断面がまっすぐではないんです(現場では整備が目的で切ってますからおおざっぱなんです)。そこで、節の2cm程上と下で真っすぐな面になるようにノコギリで切りました。手作業で丸い竹を真っすぐに切るのって、少しコツがいりました。固定することが重要で2x4の角材(ホームセンターにあります。我が家にはきれっぱしがいくつか)を2本使い隙間に竹がはまるようにしました。あとは竹を回しながらギコギコと切るだけです。

竹の固定

2)「・・・半分に割った・・・?」

「半分に割った」⇒いいえ、そこは違うんです。確かに竹は真っすぐに割れるので半分にするのは簡単そうなんですが、今回は節の面も重要です。割ると節面がきれいに半分にはならないので、割るわけにはいかなかったんです。そこでノコギリで切りました。生の(未乾燥の)孟宗竹を縦に切るのは苦労しました。切り始めは良いのですが、だんだんとのノコギリが動かなくなる。竹がノコギリを挟むんです、その力が強くて。そこで余った竹でくさびを作り、それを切った部分にトントントン。切り口を少し広げることでノコギリが動きやすくなりました。

竹の縦切り

3)「・・・だけでしょ?」

「だけでしょ」⇒いやいや。そう見えますが、いろんなことがあるんです。

「だけ」じゃない、その1(見てわかること)

台として斜めに自立するためには、背面に支えが必要です。そこでドリルで穴をあけ竹串(これは100円ショップで購入)を切って差し込みました。また、置いたスマホがずり落ちないために滑り止めのバーを追加しました。さらに紐でつるせるような引っ掛かりも追加しました。どの穴も完全には貫通させず厚さの2/3程度で止めています(美観へのこだわり)。これらは物をみてわかる事です。・・・この機能を加えています。

「だけ」じゃない、その2(よく見るとわかること)

現場から持ち帰った竹は表面が汚れています。水拭きをしたくらいでは美しい面は現れてくれませんでした。そこで油抜き。これは表面から熱をかけることで内側の油分が浮き出てきて、これを拭き取る作業です。丸い竹のまま乾燥させるために行われるようです。もう一つ重要な効果が、汚れが油で浮きあがり、これを拭き取ることで表面がきれ~いになることです(この太い竹を個人の手作りで油抜きするのは大変でが、良い方法を見つけました。詳細は別途記事にしたいと思います)。その他、角を削ったり切断面を丁寧にヤスリ掛けしてつるつるにしたり。・・・これらの手間をかけています。

「だけ」じゃない、その3(見てもわからないこと)

スマホスタンドを最初に考えた時、竹を縦2/3カット(1/2じゃなくて)で作りました。開口部を狭くすることで内部で音が響いて良くなるのではと考えたからです。作ってから毎週重さを測ってみました。3か月もするとずいぶんと軽くなり、重さは約2/3で重量変化が止まりました。水分が抜けたおかげです。竹は乾燥すると割れると聞いていましたが、丸竹ではなく最初に縦に切っているので縦割れはおきませんでした。これでもう安心と思い使っていたら・・・。1年くらい経ったでしょうか、ふと見ると片側の節面の板が割れていました。そういえば夜中、どこかで「ピシっ!」と音がしたような気がしました。我が家は木造なので時々そんな音がすることはあるんですが、おそらくこの時が割れた瞬間だったと思います。そういうことか。縦には割れないけれど、乾燥して広がろうとする力で節の板が、割れちゃうんだなぁ・・・。

この経験を踏まえて作ったのが、1/2でカットしたスマホスタンドです。結果として1本の竹から2つ作れるので無駄がない。画面の操作性もよくなるし、いろんな太さの孟宗竹が活用できる。音的にもあまり変わらない。もともと「スマホスピーカー」といえる程ではなく、裏にぬける音が表に出てくるので聞きやすいといった効果に変わりはない。この構造で何個か作りました。
自分が使うだけなら「割れたらまた作ればいい」と思うんですが、気に入ってくれた他の誰が使うとなると信頼性が気になります。製作から2年半(2024年3月時点)。割れたものもありますが、ほとんどが無事です、無傷です。これなら自信をもって人に勧めることができる、そういう物ができました。・・・この暇(時間)がかかっています。
(竹は切り出す時期や年齢も大切なんだと思います、割れないためには。まだまだ勉強中です。)

工業製品とは違う手作り品

スマホを入れるにはある程度の大きさは必要ですが、正確な寸法は無く、自然素材(竹)の形そのままを使っています。「竹は竹のままで」という考え方で作りました。だからこそ工業製品とは違い同じ物は二つとない、唯一無二だと言えます。そこが面白い。竹の外も内も眺められる。自然の形は美しいですよ。

かけた手間暇(コスト)に見合う価値があるか?。そう考えると難しいから商品としてあまり見かけないんでしょうね。でも手作りを楽しむと考えると手間暇はコストではなく体験価値だと思いました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。もしあなたが商品として買うとしたら、どのくらいの価値があると思いますか?(大きな価値を感じてもらえれば、荒れた竹林にも少しは日が差すようになると思うんですが・・・。)

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