人種差別と新型肺炎

新型肺炎のニュースが日々世界中を騒がせている。
日本でもニュースになっている、新型肺炎を発端としたパリでの人種差別事件。

https://www.asahi.com/articles/ASN2N34K1N2NUHBI007.html

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020013000238&g=int

私もパリ近郊に住み、パリで仕事をしている。
気になってネットでニュースや人々の反応などを見ていた。
その中で多いのが現地在住の日本人たちのコメント。

「実際には私は嫌な思いをしたり差別されていると感じる出来事は今の所ありません。報道されているよりもパリは平和で日本人やアジア人に対する差別はそれほどではないです。」

このような内容のコメントが非常に多かった。

違和感が合った。

この違和感はなんだろうと1週間ほどモヤモヤしていた。

私も実際に何か具体的に嫌な思いをしたことはなかった。
しかしこのような事件が報道され始めてから、実際に嫌な思いをした、という友達の話を聞いた。

電車で近くにいた人があからさまに口を抑えたそうだ。

そんな話を聞いたりニュースを見たりしていてこの1ヶ月はなんだか肩身が狭かった。


アジア人だ、と思われて敬遠されているのではないか。
電車で近くの人が私が病気ではないかと気にしているのではないか。
もし嫌がらせを受けたらどうしよう?


そして今日、ついに私も嫌な思いをした。

仕事帰りのラッシュ時の電車内。
高校生くらいの男の子とその母親と思われる女性。
私が電車を降りるために人をかき分け声をかけながらドアに向かっていると、その親子があからさまに体を避けた。
まるで、絶対に服や荷物さえ触れないようにせんとばかりに自分の身を縮こまらせ、その親子は私と反対側に身を寄せ合った。

あームカつくなあ、と思った。

そんな風な仕草をされたことはこの5年半で一度もない。
どんなに混んでいる電車でも、そんな仕草をする人はこの国で見たことはない。日本でもそんなことされたことはない。


フランスに来てから、自分が「外国人」であることを考えなかった日はない。

大学に行っても、仕事をしていても、レストランに行っても、電車に乗っていても、買い物をしていても。
私は外国人であり、よそ者である。


私はフランスに感謝している。

外国人である私にたくさんのチャンスをくれた。滞在許可を出してもらい、フランス人と同じ条件で勉強させてもらい、手当を受け取ることもできる。
安い給料で働かされることや虐げられることなく、出身に関わらず、外国人であれ基本的人権を尊重してもらえる国だ。
自分の努力だけではフランスでやってこれなかった。
フランスに大した貢献もできていないのにやりたいことをやり、恩恵を受けている。

この国も、この国の人たちも大好きである。
私の拙いフランス語を笑ったりすることなく真剣に話を聞いてくれる。
「困ってない?大丈夫?」と声をかけてくれる人がたくさんいる。

私に、日本にはない自由をくれた。


だけど、今日直接的に嫌な思いをしてから、「差別」というものを改めて感じた。
私は普段「差別されている」と感じる事件にあったことはない。
前述したコメントを書いた「現地在住の日本人」たちと同じように。


でも、差別って、、、自分が直接嫌な思いをしていなかったら、、、差別はそんなに起きていない、と言えるのだろうか。


例えば、100人の現地在住の日本人がいて、そのうちこのような嫌な思いを直接受けた人が3人だけだったら。

のこりの97人はそんな被害に合ってないから

「パリには言うほど差別はありません。大丈夫ですよ」

って言えるのだろうか。
残りの97人は本当にそう思っているのだろうか。

私は、一番最初にこの差別のニュースを見たときに、それは言えなかった。

どうして言えないのかわからなかった。

でも、今日自分が直接嫌な思いをして分かったのだ。

3人が差別を受けて、残りの97人は差別を受けていない。

でも、97人のうち、50人は

「次は私が差別される番かもしれない」

と怖がっているかもしれない。

それって、もう「差別を受けている」と言えるのではないだろうか。

もしくは、「差別の始まり」と言えるのではないだろうか。


どうして今回これを文章にしようと思ったかと言うと。

日本での差別について問題提起したかった。

日本では差別ってあると思う?

あなたは誰のことも差別していないって思う?

差別を受けているって、どういうことか日本の皆さんは分かるでしょうか。
私は今回肺炎が日本でも蔓延し始めて、日本政府の対策を世界が批判し始めて、生まれて初めて

「日本人であるということを隠したい、隠すべきなのでは」と思った。

自分が自分であるということを誇れないことの寂しさ、悲しさ、憤り、困惑は味わってみないとわからなかった。

これは国籍だけの問題ではない。

世界には、日本にも、色々な差別がある。

性差別、セクシュアリティー差別、学歴差別、出身地差別・・・

「自分が自分であること」が差別されることはあってはならない。

みんな、自分が自分であることを誇って生きれることが人権なのではないだろうか。

今一度、私は、自分が周りの人がその人であることを受け入れているか、差別してないか、省みたいと思う。

そして、日本で無意識に行われている、人種差別をはじめとするあらゆる差別がなくなるために、何ができるか、考えたいし、多くの人に考えて欲しいと思う。





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