ガチパラっ! (8)
熟女好きの和尚は言う
「人妻、巨乳、しかも童顔だなんて、お宝だ」と
本当にホンモノの和尚。とある寺の住職にして、酒蔵を買収したり、ミスコンを主宰したり
相当な生々しさを誇る逸材ではあるが、今回のストーリーには直接は関係ないので、一旦ご退場、泣く泣く割愛
また別の物語があればご登場願うことにして、とりあえず、人妻に話を戻したい
そもそも釈明の必要などない
それに若い女性とデート?していることを釈明する必要など、さらに無く(たぶん)
一に、美味しいお鮨を食べに行ったこと
二に、知らぬまに京都に来ていたこと
三に、この2つに連れていかなかったこと
に対して、不服を申し立ててきているのだ
かつて、フランスで牡蠣の視察ツアーを催したことがあった
あくまで日本のカキ生産者の見聞を拡めるためのものだったが、その際に、生産者ではない別の担当を連れて行ったことがあり、いまだに根に持っているらしい
旅が好きで、いろいろなところに行ける、連れて行ってもらえる、というのを楽しみに仕事を手伝ってくれているフシがあるのはわかっていて
実際に、たいていのイベントや視察ツアーは、彼女に助力と帯同を願っていた
もし、彼女にシャーロック・ホームズにおけるワトソン医師のごとき才覚があれば、こうやって文章を書く機会も必要はなかったかもしれない
といえるほどに、この数年は 密着取材な状態だった
ご主人がカナダ人で、ご主人の貿易や通商の仕事を手伝っていることも大きい
海外渡航や、国際関連の手続きごとに詳しいし、当然のことながら英語も堪能
ご主人はモントリオール出身のカナダ人ということもあって、彼女もフランス語を多少は解する
とにもかくにも、申請や手続きごとが多いのが、海外で仕事する際の難点
手続きごとが苦手なので、本当にありがたき存在
そのほか、経理処理に至るまで、会社の業務全般を任せきりにしてしまっていて
税金など諸々の便宜もあって法人化しており、その代表、つまりは社長をお願いしていた
彼女の一存で、銀行口座の暗証番号を変えられる
もし変えられてしまったら…クレジットカードまでも彼女次第でどうにでもなる、といった次第
肉体関係はあったのか?と聞かれたら、それはもう8年以上も良好な関係を保ってきた、ということから察してもらいたい
付け加えるなら、おかげさまで巨乳への耐性というかなんというか、を持つことができた
胸に対する関心が薄くなったのは、セクハラがうるさい昨今において、ありがたいことのひとつ
だいたいが、ご主人が「ジョージ・クルーニー煮」もとい「クルーニー似」の、かなりのダンディイケメン
よく「〇〇似」というと、そこまでではないことが多いが、このご主人の場合は、本当にジョージ・クルーニーを彷彿とさせる
ジョージ・クルーニー似というのが、世の中においてナンボのもんかは、正直わからないが、少なくとも、この人妻…
おっと、ここまで紹介しておいて、これからも登場するというのに、童顔だの巨乳だのと呼ぶのは、失礼ってなもんで
そろそろ皆さんの気は十二分に引けただろうし、名前をお呼びしましよう
チダンバルバラム・素子(もとこ)、それが彼女の名前
あだ名は「バルス」…いや「バラす」…ではなくて「バラ子」さん
チダンバルバラムは、ご主人の姓
インドの名前とのことで、彼女自身は純然たる日本人
ご主人は国籍はカナダ人だが、アイルランドやインドの血も入っている
カナダは、いまでも半分がイギリス、もう半分がフランスが色濃く残っていたり、先住民族も多く、混血が多い国
同じくイギリス由来で混血が多い南アの仕事はうってつけではある
ただ、たまにご主人にもお世話になることもあるが、あくまで手伝ってくれているのは、バラ子さん
それに、南アの人にとってカナダは、例のダイヤモンドの件もあるので、ちょっとね、と
ーーー
「日本人…?」
「母が日本人なんです。日本人や日本で仕事するときには母方の姓を名乗ってるんですよ」
「へぇ、正しくは?」
「スヴァールバル、アナ・スヴァールバルです」
「日本で清常アナ、だと…」
「どう発音しても“女子アナ”ですよね!そこももうわかった上でというか、もう鉄板ネタというか」
「雰囲気というか、見た目もなんとなく…」
「クリステルさん、でしょう?滝川クリステルさん。それも良く言われます」
「そうそう、お・も・て・…」
「な・し!」
「大学の…」
「同じ大学、青学でしたよね、たしか」
「元嫁と同じ…」
「あ、それは知らないです!同じ…なんです?」
「いや、大丈夫」
「なんですか、もう!気になりますよー」
「そういや、政治家の嫁さんに…」
「小泉進次郎さん!発言がおもしろいですよね!」
鮨屋での会話は、弾んで…いた
政府系の仕事をするようになってつくづく思うのだが、本当に良く調べられている
自分のことなのに、知らないこともあるんじゃないか?と思うこともあるくらい
そうやって調査していることを、包み隠そうとしないあたり、かなり好感が持てた
「そうそう、祖父がカキさんのこと、スゴく褒めてたんですよ、ってカキさんでいいですか?なんてお呼びしたらいいのかわからなくて」
「名前はなんでも。祖父?」
「そうです、祖父です。カキさんの論文を読んだらしくて」
「論文?」
「ほら、環境対策をするのに、法律よりも“呪い”の方が効果があるっていうの、ありませんでしたっけ?」
「嗚呼、坂越湾の…」
「そうです、それです!」
論文だなんて言うには、烏滸がましい代物
福岡の女子大から、ちょっとした講師を頼まれて
女子大ってこともあって、わかりやすくやる気がでて、一番の懐刀(ふところがたな)をヌいた
法律か呪いか、それが課題だ
1300年前に京都で活躍した人物「秦河勝」の呪いのおかげで、まったく開発されず手付かずの湾が兵庫県に遺されていた
京都生まれで、しかも秦氏の総本山、拠点としていたとされる「太秦」の生まれということもあり
調べれば調べるほどに、パーソナルな面においての 縁もゆかりも深く
今となっては、相当なまでに深みにハマってしまっている研究テーマとなっていた
手付かずの自然の豊かさと、キレイさから、いまでもカキをそのまま生で食べることができる
けして、人里離れた「ど」がつく田舎や、遠い離島というわけでない
都会からの利便性もよく、近郊はすべて開発済みのエリア
その湾も、山を切り崩して埋めたてるなどすれば、隣近所と同様に利用価値があったにも関わらず「開発されなかった」というのがポイント
ネットには投稿していたが、オフィシャルに論文を発表するようなところで公開されているわけでもなく
そんなものでも、読んでもらえていて、あらぬ角度からお褒めをいただけるのがSNS時代の醍醐味ともいえる
「京都にも行ってみたかったんです!もしよかったらアテンドしてもらえませんか?」
「南アフリカのカキの仕事では…」
「それもありますけど、もし叶うなら、呪いによる環境対策についても勉強させてもらえって」
「その祖父…おじいさんが?」
「それもありますけど、私も前から環境には興味があって。いま興味ない人なんているんですかね?」
どんな権力者なんやろ、おじいちゃん
「正式な仕事として?」
「そこは、OKをいただけるなら、これから調整させてください」
「なるほど…」
ーーー
「ってな具合だったわけで…」
「2人きり?」
「ん?そういや、2人とも“バル”つながり…」
「その女子アナちゃんと、2人きりかってこと」
「女子アナではないけどね…それならよかったんだけど、ほかにあと2人、俺も入れて全部で4人」
「このあと坂越でしょ?」
「よくご存知で…」
「生産者から連絡きたの!スケジュール教えてほしいって」
「嗚呼…」
「うしろ」
「うしろ?」
振り返ればヤツがいる
おいおい、俺がゴルゴ13だったら…
「さすが、バラ子さん」
まぁ、京都でいろいろと都合つけてもらうときに頼る相手は紹介してるし、辿れて当たり前といえば当たり前…とはいえね…
役者が揃ったところで、一路、向かいますかね、ジュマンジ…もとい、呪文の町へ
(9)に続く☟
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