シナリオ『Letter Planet』
●手紙=舞台・音楽・絵画など様々なものの意味を込めました。手紙が届かない絶望や葛藤は、コロナ禍における芸術活動の様子に思いを馳せました。届かなくてももう一度手紙を書いてみようとする「女」の挑戦は、上演できなくてももう一度舞台を作ろうという苦しい中での挑戦を意味しています。この作品が、僅かでも皆さまの希望となればと思っています。
●この台本は2021年にある大学さんの学内での舞台公演のために書き下ろしたものです。収益等はなく完全に学習を目的とした公演でしたので、音楽の著作権について等もご理解ください。
『Letter Planet』
登場人物
女
男
郵便屋さん
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Opening
♪水星(Instrumental)
郵便屋さん登場
2021「Letter Planet」In the house(いんだは~うす)
今日は~ Not PCR!Not distance!Not bad feeling!
だってこれは この惑星の話じゃない
どこかのだれかの
だれでもないあなたのお話
女・男ここまでに登場
【女】
現代 まだ見ぬ あなた
千回 愛を問うてみても ない応答
物語は私から始まる冒頭
【男】
やることもなくて 宇宙と交信
なんか聞こえたふり強引?
今日も布団の外へ going
試みてもあれれ?夢にスローイン
【郵便屋さん】
どれくらい経ったのか
繰り返してる この世の中の禍
人生は止まり果て僕は困り果てを繰り返して
今日も終わり出します
【女】
「もう1年は過ぎちゃったよ、約」
【男】
あの星に向かってぼんやり呟く
【全員】
I spent much to be・・・・・・
♪フェードアウト
Scene① Refrain of raindrop
女、椅子に座り、手紙(台本カンペ)を書こうとする。(セリフは音楽の後間髪入れずに)
女「だいぶ長い間、手紙を書いています。時間もお金も底つきました。ああ!聞かないでください、そのことだけは。夢なんて忘れてるんですから。忘れるようにしてるんですから。それはそうと、手紙の返事は一向に来ません。届いているのかも怪しくなってきました。大事な手紙なんです。私の一生が懸かってると言っても過言ではないんです。ヒステリックな女だ?何その言い方!地球じゃあるまいし。こないだの手紙だってもう最後にしようと思ったくらい丁寧に書いたんですから、そう何度も書き直せないですよ。第一、言いましたよね。時間も、お金も、使い果たしてしまったんですから」
男、何かの端末or本などを見ながら、
男「だいぶ長い間、手紙を待っています。時間も情熱も底つきました。ああ!聞かないでください。そのことだけは。孤独なんて忘れてるんですから。忘れるようにしてるんですから。それはそうと、手紙は一向に届きません。きっと僕のことなんて忘れてるんだあ。手紙書くなんて、嘘だったんだあ。・・・・・・いっそ催促してみようかな。ううん、でも・・・・・・男らしく自分から送れよと人は言いますけど、男らしくって、なんですか!?地球じゃあるまいし。勇気には限りがあるんですから、そう簡単に本音なんて伝えられませんよ。第一、言いましたよね。時間も、情熱も、使い果たしてしまったんですから」
雨音や、最後に降らせる雨みたいなもので雨を知らせる
女・男『あ、雨』
二人とも窓を見つめている様子で、
二人「あの雨だれが石を穿つなんて」
女「そんなざれごと」
男「たわけたこと」
女「二人の雫は一つにならない」
男「一つの命は一人で賄い」
女「雨は漂う」
男「文字は漂う」
二人「手紙は宇宙のどこか彼方へ」
女「私は宿そう」
男「僕は辿ろう」
二人「手紙は心のどこか彼方へ」
女「世界は流転」
男「宇宙は無限」
女「でも私たちひとりぽっち」
男「世界は流転」
女「宇宙は無限」
男「だから僕たちひとりぽっち」
女「交われたならば 光を帯びて」
男「星より ずっと高く 輝いて」
女「鎮座するは上の(神の)てっぺん」
男「この惑星から謁見」
女「手紙を書くには」
男「手紙を待つには」
女「愛が必要」
男「相手が必要」
女「相も変わらず真っ白な私は」
女、紙を破いて去る。
男、待ちくたびれてどこかへ行ってしまう。
Scene② Post boys&girls
郵便屋さん「どうも、こんちゃ!悠々自適なゆうゆう郵便屋さんです!あ、そう見えないっすか?どっちが?悠々自適の方?それともゆうゆうの方?それとも郵便屋さんの方?あ、郵便屋さんの方。それもそのはず。俺は、ラッパーになるという夢を諦めて郵便屋さんになりました!でーん。メッセージを届けるという点では一緒かなーって。ハイ~、書きます送ります届けます!書きます送ります届けます!ハイ書きます送ります届け・・・・・・え?届きませんでした?あー。届きませんでした2021。(ニイマルニイイチ)書きます!送ります!届けますミス!娘さんには申し訳ないんですがぁ、メス!(オペ中の感じ)先生、娘は助かるんでしょうか・・・・・・ん~。もーすぐ届くと思いますよ。多分」
女「拝啓。彼方のあなた。今年も、早くも半分が過ぎようとしていますが、いかがお過ごしでしょうか。今日は久しぶりの青空です・・・・・・ダメだ。やっぱり最初の手紙が一番よかった。春一番が吹いたあの日の。爽やかな匂いのする若い便箋はもう手に入らないし、青空が見えたのもほんの一瞬。嘘つきの手紙なんて誰も欲しくない。私は本当のことを書きたいの。正真正銘の手紙を」
女、電話帳を開き郵便屋さんに電話をかける。(若尾さん大変でしたらここ録音データでもいいかなと思います)
郵便屋さん「はい。こんちゃ!お電話ありがとうございます。こんちゃ!」
女「あ、悠々自適のゆうゆう郵便屋さんですか?」
郵便屋さん「そっすよー」
女「すみません。手紙について伺いたいんですけど」
郵便屋さん「手紙以外でもいっすよー。郵便屋さんだけど」
女「えっ。例えば?」
郵便屋さん「毛ガニ」
女「手紙?」
郵便屋さん「ううん。毛ガニ」
女「すみません。手紙のこと聞いていいですか」
郵便屋さん「かもんめーん」
女「だいぶ前に出した手紙なんですけど。届いているか確認したくて」
郵便屋さん「あっ、わっかりました。いつ頃のですか?」
女「去年の春くらい」
郵便屋さん「宛先は?惑星内?惑星外?」
女「惑星外です。シラハミガサンケワガナカ」
郵便屋さん「お客様のお名前頂けますか?」
女「私です」
郵便屋さん「確認しますねお待ちください」
郵便屋さん、保留音を歌う。(お風呂が沸きましたの音)
郵便屋さん「あ゛!(お風呂が沸きましたのタイミング)」
女「どうしたんですか」
郵便屋さん「ううん、うん、ううん、うん、ううん、うん、うん・・・・・・」
女「なんです」
郵便屋さん「大変申し訳ございませんお客様。当局で何らかの障害が発生しており昨年度からの手紙、全て届いていない状態となっております」
女「へ?」
郵便屋さん「私共とも致しましてもこれは自然災害と言うほかないと言いますか」
女「ええ・・・・・・どうしてくれるんですか!」
郵便屋さん「どうも、できない状態です。向こうからは、届けられるみたいなんですけど」
女「そんなのってないじゃないですか!こっちは人生懸けて・・・・・・それをそんな一言で」
郵便屋さん「大変申し訳ありません」
女「じゃ、ど、どうしろって言うんですか」
郵便屋さん「誰にも、どうにもできないんです」
電話が切れる。
女「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!こんなの嘘だ!何か方法はあるはずなのに。あぁ、何か、手紙よりもいい、いい方法が・・・・・・ああ!インターネットが発展したってなんだよこのザマ。味気ない画面が何を語る?手紙じゃなくちゃダメなんだ。手紙がいいんだ。あの人だって、手紙、を待ってるんだ」
女、半ば投げやりで手紙を書こうとする。
女「・・・・・・無駄ってこと?また時間とお金がなくなるだけってこと?」
女「一体何のために、私は書き続けているのだろう」
女「地球には、ゲイジュツってものがあるらしい。それは、報われてもそうでなくても営まれ続けるものらしい。一体、何のために?私はこうして報われなくても、紙になんやら書き続ける。これは、ゲイジュツ?」
男「ゲイジュツ。それを知りたくて地球旅行に行ったとき、僕は初めて劇場という場所を訪れた。全身が、むき出しになったみたいに凄い数の電波を受けた。第六感なんて地球にはないはずなのに、僕は地球の人らにそれを刺激されたんだ。ゲイジュツが何かなんてどうでもよくなった」
女「これが何かわからなくなってしまったからには、私には手紙を書く資格はないのだろう」
男「そう・・・・・・理由なんて、時にどうでもいいんだ。僕は今それを思い出した。情熱に理由なんてなくてもいいんだ。あの人に、伝えなくちゃ」
女「もう手紙を書くのはやめよう」
男「(バカデカボイス)おーーーーい!!!おーーーーーい!!!!おーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!ハア・・・・・・」
♪Boys and Girls
女、気が付かない。
男、叫ぶ・ため息をつくを繰り返す。(アクトのみ)
照明フェードアウト
Scene③ Posting spotting rap
郵便屋さんによる下手くそなボイスパーカッションとともに明転。
(リリックノートとか見てる感じにして覚えなくても大丈夫です)
郵便屋さん
「手紙?毛ガニ?
何だろうとこなすぜ郵便屋さん
地球みたいに色褪せた世界
困りあぐねた 俺らの世代
マインドだけは色褪せない
きっとこんな毎日がかけがえない
郵便障害の知れない得体
不穏な気配は隠せまい
でも宛先照準定めた狙い
律儀に韻踏み届ける手紙
えい」
どこからともなく拍手
郵便屋さん「自分のせいではないとは言え、落ち込むんだよなあお客様対応」
郵便屋さん「向いてないのかなあ郵便屋さん」
郵便屋さん、遠くを見つめて
郵便屋さん「遠くに行きたいなあ。地球とか」
郵便屋さん「地球には、めちゃくちゃラッパーがいるらしい。この星じゃラッパーはスカートを履くっていうのがマストだけど、あっちだと(ここも見ながらとかでもいいです)首とか腕に絵を描いて、髪の毛はこう、洗えないように、頭皮に、こう(ドレットを表してください)・・・・・・でもう人が何人入れるんですかってくらいだぶだぶのズボン履いて、あとよく捕まる。のが、マストらしい」
真顔からの身をくねらせ、
郵便屋さん「かっけえ~~~~~~~~~」
郵便屋さん「郵便屋さん、やめてえ~~~~~~~~~~~」
遠くから男の叫び声が聞こえる。
郵便屋さん「え、なになになに」
男「おーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!」
郵便屋さん、都度リアクションをお願いします。フリーです。
男「おーーーーーーい!!!僕は!!!!ずっと!!!!!!!!待ってるからーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
郵便屋さん「えっ」
男「待ってる、からーーーーーーー!!!!!!!!!」
郵便屋さん「俺を・・・・・・呼んでいる・・・・・・?」
男「お金もーーーー!!情熱もーーーーー!なくなってしまったっていい!!僕は!!待っていたいんだーーーー!!!!!!!」
郵便屋さん「俺を、呼んでいる!!!!!く~!なんて熱いやつなんだMy bro!!!(巻き舌)」
男「君の言葉をー!!待ってるんだ――――!!!!」
郵便屋さん「俺のリリックを・・・・・・なんて熱狂的なファンなんだ・・・・・・」
郵便屋さんちょっと涙ぐみ、
郵便屋さん「今行くぜ!!!!!待ってろマイメ―――ン!!!」
郵便屋さん、走り去る。
メーンにエコーがかかる。(メーンメーンメーンメーン・・・・・・)
Scene④ Strain of Raindrop
女「えっ。何今の声」
男「・・・・・・・からーーーーーー!!!!!!」
女「ん?また聞こえる」
男「待ってるからーーーーーーー!!!!!!!」
女「あれ、この声・・・・・・!」
男「僕は!君からの手紙を待ってる!この時間が何にならなくてもいい!情熱が熱さを失ってしまってもいい!それでも、待っていたいんだーーー!」
女、立ち上がる。ここからクソデカボイスというもので。
女「・・・・・・いつになるか、わからないーーー!!!!!」
男、声が届いたことに反応する
男「そんなの、かまわない!!!!!」
女、ほとんど泣きそうになりながら
女「かまわなくないーーーーーー!!!!!!」
男「かまわないーーーーーー!!!!!!!」
女「もう何を書けばいいかもわからないのーー!!!!」
男「なんだっていいーーーー!!!!!!」
女、茫然とする。
クソデカボイスというもの終わり
男「なんだっていいんだ、いつだっていいんだ」
女「そんな、地球みたいなきれいごとやめてよ」
男「届かなくたっていいんだ」
女「なんでそんなこと言うの」
男「だって、僕が待ってるから」
クラッカーのような破裂音に合わせ雨や星に混ざって何通もの届かなかった手紙が降ってくる。
♪Anothr Reflection(破裂音の直後にin)
二人「あの雨だれが石を穿つなんて」
女「そんなざれごと」
男「たわけたこと」
女「二人の雫は一つにならない」
男「一つの命は一人で賄い」
女「雨は漂う」
男「文字は漂う」
二人「手紙は宇宙のどこか彼方へ」
女「私は宿そう」
男「僕は辿ろう」
二人「手紙は心のどこか彼方へ」
女「世界は流転」
男「宇宙は無限」
女「でも私たちひとりぽっち」
男「世界は流転」
女「宇宙は無限」
男「だから僕たちひとりぽっち」
女「交われたならば 光を帯びて」
男「星より ずっと高く 輝いて」
女「鎮座するは上の(神の)てっぺん」
男「この惑星から謁見」
女「手紙を書くには」
男「手紙を待つには」
女「愛が必要」
男「相手が必要」
女「相も変わらず真っ白な私は」
女、降ってきた手紙に混ざった便箋を拾い、
女「また懲りもせずに手紙を書く」
手紙を書き始める。
暗転
Cuetain Call
♪水星(thamesbeat remix)