Heading North !! 北へ!
俺は日本のエージェントを通して、西オーストラリアの都市Perthにワーホリビザで滞在している。すでに2か月近くが経過していた。
英語は、まださっぱり話せない。
こちらの生活に慣れてくると、英語で夢を見るという。
俺の夢はまだ、日本語だった。
シェアハウスでの契約期間が終了したので、Perth市内のバックパッカーに宿をとることにした。入国した時の所持金は15万円。ろくに働いていないので、残高は少ない。早いところ仕事も探さなければ。
このバックパッカーは、1部屋に4つほどベッドがあり、俺のほかに2人が居た。バッパーでは、気軽に話しかけるのが自然で、この2人ともよく話した。
1人は、俺より1つ年上の白人の若い男で、俺がGeraldtonに行くんだ。と言った時、反応が薄く考え込みながら、ジェラルトン?と聞き返され、Dを発音しジェラルドトンと言ったから通じなかったのか、と理解した。
もう1人は、50代の白人の男性で、聞くと、ここに25年住んでいるという。俺が生まれる前から!?そんなことがあり得るのか。と思ったが、バックパッカーで暮らす人は珍しくないようだ。
俺はPerthに戻ってから、Donnybrookで出会ったアミにPerthの英語教師のリサを紹介してもらっていた。次の仕事が見つかるまでの間、何度か会った。
リサは俺より1つ下の23才。金髪で小柄でポッチャリしていて、いつも笑顔で、英語の教師をしているからか、どこか落ち着いていて大人ぽかった。
リサの父親は軍人で、タトゥーを体に入れると怒られると言っていたが、舌にはピアスをしており、それはOKとのこと。。
リサとは食事にいき、俺が英語でうまく話せなくても沈黙しても、終始笑顔で、会話をリードしてくれた。こんなに良い子は、日本人でも会ったことがなかった。
その後も、リサとその友達とクラブに行ったりもした。
シェアハウスにファームジョブ、home stay、語学教室、クラブでのダンスと、ひと通りのプログラムを終え、これからは仕事も住みかも、自分の力で探さなければならない。
俺は、今一度オーストラリアに来た目的を振り返った。
観光しに来たわけではない。経験をしに来たんだ。
俺は、自分なりに覚悟を決めて渡豪してきたつもりだった。
ここでしかできない経験は何か。俺は考えた。
金は稼げなくてもいい。食べ物と家だけ何とかなればいい。
誰にもできない経験をしたい。
オーストラリアには、WWOOF(ウーフ)というものがある、と日本で聞いた。WWOOFとは、農場や牧場での労働とひきかえに、住みかと食事を得られる制度だ。といっても1日中働くわけではなく、おおくは半日ほど働き、余暇の異文化交流が主となる。報酬はない。経験が報酬だ。今の俺にピッタリだった。
WWOOFを利用するには、WWOOFに登録している農場や牧場などがリストになっている本を50ドルほどで買うと、晴れてWWOOFER(ウーファー)となり、ホストと直接連絡が取れるようになる。簡単だ。
地図を見ると、Perthより南は緑が豊富で、ワイン農場や、アボカド農園など、仕事は豊富にある。
Perthから北は緑が減り、赤道に近くづにつれ砂漠のような景色となっていく。
俺は、日本人のいなそうな北を目指すことにした。
目指すは未開の地、ノーザンテリトリーのDARWINだ!
もちろん現代ではすでに開拓されているだろう。
だが、俺にとっては未知の領域。剣道でも先鋒だった。先陣を切るのは得意だ。ちなみに自分の名前には、『開拓』という意味もあるそうだ。
さっそく本を開き、WWOOFのリスト眺めた。中学や高校で習った文法を頼りに、辞書で分からない単語を引く。
1件分の農場の紹介文が5行ほどで、読んで理解するのに、20~30分かかった。
何百もの農園の情報すべてを読むのは無理だと悟り、Perthから近い村に絞る。
調べているうちに、Dongaraという町で、キネシオロジーという独特の療法をしている夫妻の情報が目に留まった。
キネシオロジーにも興味があり、記載されたメールアドレスに、さっそくメールを送った。
数日後、返信があり、メールでのやり取りが始まり、ついにファームステイが決まった!
俺はさっそくPerthの品ぞろえの悪い店で、ブーツとハットと水筒、リュックなどを買った。
こういう時の買い物は得意だ。古びた店内も楽しみながら、じっくり時間をかけて物色する。
映画『ランボー』の見過ぎで、本当はナイフとオイルライターも欲しかったが、映画のような展開になると困るので我慢した。と言いたいが、予算が足らず、本当に必要なものだけを購入した。
俺は現代社会になじめないアナログ人間だ。だが、非常時に真価を発揮する。そう思いたい。
必需品を調達しDongara行きのチケットも手に入れた。
リサに別れを告げ、再びPerthを出る。
Heading North !! 北へ!
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