不当な雇い止めを受けてから弁護士なしで労働審判するまでに行った6のこと

はじめに

約4年勤務した職場から不当な理由で雇い止めされ、最終的に弁護士なしで労働審判を起こし、その解決金や失業手当で約半年自由に過ごした、という経験を元に、不当な解雇・雇い止めなど、職場との間に問題が起こったが、弁護士を雇うには金銭的に厳しい、という方のために記事を書き公開することにしました。

雇い止め通知が来てから労働審判に至るまで様々な段階があったので、この記事ではそれを段階に分けて説明していきます。

賢い雇用主であればなるべく早い段階で解決したいと思うので、労働審判よりも前の段階で解決することもあるかもしれません。

今回は4年間毎年契約更新が行われていたというケースで、契約更新年数や回数、状況によって同じようにはいかないこともあると思います。

ちなみに、今回のケースはとても特殊です。
どのように「特殊」であったかは後記しますが、それに当てはまる人は少数だろうし、当てはまらなければもっと簡単に事が進むと思います。
なのでこれを読んで「自分でもできるかも!」と自信をつけていただければ幸いです。

泣き寝入りせず、戦おう。


労働審判に至るまで行った6つのこと

1. 雇用主に連絡

雇用主(以下「相手方」)から事前に話し合い等一切行われず、4年目の契約終了日から約2ヶ月前、翌日から土日祝と休業日が続く金曜日の帰宅中に突然メールで雇い止めを通知された。

雇い止め理由には事実と異なる事柄が羅列されていた。

帰宅中+翌日から連休の上、相手方は職場にほとんど顔を出さないのでまずはメールで連絡。
送られてきた雇い止め理由が事実無根であることの説明と、雇い止めついて納得がいかないという旨を伝える。

相手方は雇い止めの意思を変える気も、話し合いをする気もないとメールで返答。

2. 労働基準監督署へ相談

在住している市の労働基準監督署の総合労働相談コーナーへ。
全国の労働基準監督署一覧

1回目は一通り話を聞いてもらった後、再度話し合いができないか相手方に尋ねてみるよう助言を受ける。

相手方に労基に相談したことと、話し合いをするよう助言があったことをメールで伝える。
相手方は相変わらず職場に顔を出さず、メールの返信もなし。
職場にいるマネージャーにも問い合わせたが「自分は関与していないのでわからない」の一点張り。

後日、助言通り相手方との話し合い試みたが何も変わらなかった旨を労基に報告。
次のステップとして「あっせん」という手段があり、その次のステップとして「労働審判」があること、最終的には訴訟になることも知った。

また、労働基準法に基づいて何がポイントかなど、わかりやすく説明してくれた。

ここから労基に頻繁に通うことになる。
一度労基に行くと相談は記録されるので、2回目からは名前を伝えるだけでよかった。自分の場合は同じ担当者がずっと対応してくれた。

3. 雇止理由通知書を発行してもらう

相手方に雇止理由通知書を発行して欲しいという旨をメールで伝える。

雇止理由通知書は雇用者から請求がなければ会社に発行義務はないが、次の段階になったときの証拠資料になるので発行してもらおうと考えた。
また、こうすることで「出るとこ出ますよ」と間接的に伝えられると思った。

ちなみに雇止めの理由の提示については、労働者から請求があった場合には、遅滞なく交付する必要があるという決まりがあるので、相手は無視できない。

雇止理由通知書を発行して欲しい旨は職場に電話し、その内容は録音した。

その後労基へ行き、雇止理由通知書の発行請求をした旨、遅滞なくと決まりがあるのにまだ発行されていないことを話すと、労基から職場へ、雇止理由通知書を速やかに発行する必要があることの通告と、話し合いをするよう促す「指導」の電話を入れてくれた。

労基が連絡を入れた結果、相手方とその社労士を含めての話し合いの日程が決まった。
間もなくして雇止理由通知書も届いたが、相変わらず事実と異なる事柄が理由として記述されており、証拠資料として今まで見たことも聞いたこともない、実施されていたかも知らない会議の議事録のコピーが同封されていた。

4. 雇い止め無効の通知書を送る

相手方に雇い止め無効を主張する通知書を送付する。

通知書には特に決められたフォーマットはないので、ネットで「通知書」で検索して出てきた例を参考にしながら作成し、最後に労基で確認していただいた。
(プリンターが自宅にないのでセブンのネットプリントは普段からよく利用しているが、今回重宝した。)

以下通知書の内容を抜粋

貴社より、x年x月x日付で雇い止め通知書を受領しました。
しかし、同通知書に記載されている理由は、客観的に合理的理由があり、あつ社会的通念上相当ではあるとは到底認められません。
したがって、私に対する雇い止めは、労働契約法第19条の要件を満たしておらず、解雇権の濫用に該当するものと考えます。
私は、現在も貴社で就業する意思があるため、貴社の雇い止めは無効であることを主張し、本件雇い止めの撤回を求めます。

申立人本人の雇い止め無効を主張する通知書より抜粋

記載する労働契約法については労基でアドバイスを受けた。
今回のような雇い止めの場合には法第19条が適用される可能性があるそうで、その内容に書かれている内容に沿った言葉を使っていった。

ちなみに、この通知書は内容証明郵便という方法で郵送した。

内容証明郵便で送る必要はないし、誰かからアドバイスを受けたわけでもないのだが、これも後を見越して行った。
あと単にこんな仰々しいものが来たら心理的圧力にもなるかなと思ったし、「出るとこ出る」ことを決意している場合この方法で送ることが多いようなので、それを間接的に伝えられるとも思った。

内容証明郵便は、「いつ、誰が、どのような内容を書いたか」が証明され、受取人本人が受け取らなければならず、受け取りに署名も求められるので、「受け取ってない」と言い逃れできないし、文章の改ざんもできない。

文字数が指定されているなど決められた書き方があるが、これもネットで探せば出てくるし、郵便局で聞けば丁寧に教えてくれる。
めんどくさいし送料も高いけど、やる価値はあると思う。

送付後数日間相手方から反応がなかった。

返事が来ないので予定されている話し合いで発言したい内容を紙にまとめて書いて、郵送した。
これも別にやる必要はなく、誰のアドバイスでもないが、後を見越して書いた。
こちらは普通郵便で郵送。

数日後、相手方から「弁護士をつけるので、弁護士に確認が取れるまでは会わない」とメールで返答があり、予定されていた話し合いを拒否される。

その後相手方弁護士から、こちらが送った通知書の内容が無効という旨と、事実と異なる雇い止め理由、証拠の開示はしない、今後話し合いはしない、不服があれば法的手段を検討するように、という内容の手紙が届く。

5. 損害賠償請求を送る

労基でアドバイスを受け、相手方へ損害賠償請求を送る。

仰々しい感じだが、これは次のステップのため行うものであり、拒否されることを見越して書く。

こちらもフォーマットはWebで検索。
内容を一部伏せてご紹介する。

私は、貴社よりxx年xx月xx日付て雇い止め通知書を受領しました。
同通知書に添付されていた雇い止め理由は全て事実無根であり、貴社に雇い止め理由に対する証拠を求めましたが、一切ご開示いただけませんでした。
【*当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があることの具体的な説明】
以上の理由により、これからも契約が続くと確信していたところを、辞めざるを得なくなりました。
私に対する雇い止めは、労働契約法第19条2項の要件を満たしておらず、解雇権の濫用に該当すると考えます。
私は雇い止めにより著しい精神的苦痛及び経済的損害を受けておりますので、【請求金額】の損害賠償を請求いたします。
以上より、貴社に対し上記の通り、請求をいたしますので、xx年xx月xx日までに私の給与講座宛に送金いただけるようお願いいたします。

申立人本人の損害賠償請求書より一部抜粋

*法第19条の2項に該当する出来事が幾つかあるので、具体的に書いた。
今回の場合は「次回も契約が更新されると私に期待させるような出来事があった」という事柄を書いていった。

後日、相方弁護士から請求に応じられないと返事がある。

予想通りの展開になったのでここはこれでOK。

6.「あっせん」の申請

次の手段となる「あっせん」の手続きを行う。

あっせんをするのにお金はかからないし、弁護士もつけなくてもいいが、相手は参加拒否できる

申請は労基に申請書を提出するだけ。
上記リンクにあるパンフレットに書き方の例も記載されており、電子申請もできるらしい。
私は労基の人に確認してもらいながら申請書を書いた。

申請の数日後、労働局から「あっせん開始通知書」が郵便で届く。
開始通知とあるが、あっせんが開催されるという通知ではない。

後日「あっせん打ち切り通知書」が届く。
相手の参加拒否であっせんが打ち切りになったことが記されていた。

次の手段である労働審判の手続きへと移行。

労働審判

労働審判について詳しくは別記事でご紹介するので、ここでは簡単に順序を説明します。

1. 労働審判の申し立てに必要な書類を集める

必要書類は裁判所が出しているこちらを参照。

2. 裁判所へ書類を提出

集めた書類等を最寄りの裁判所へ提出。
各地の裁判所一覧

3.労働審判当日

今回は労働審判1回目で解決しましたが、解決しない場合は2回目、3回目と続いて、3回目で解決しない場合は起訴になります。

おわりに

労働審判に行く前の段階で、早期に解決することが労働者にも会社にとっても良いと思います。

弁護士を用意することを推奨していたり、無理と言ってくる人もいるし、そう書いてある記事もたくさんあるとは思いますが、このように弁護士なしで成功したケースもあるので、諦めずに挑戦してください。

最後に、最初に記述していた「特殊な状況」についてですが、有料にしました。
はっきり言って読んでも読まなくてもいい内容なのですが、読むと良い点としては「この状況でもできたのなら自分だったらもっと簡単にできるのでは?」という自信がつきます。

「頑張ったね。飲み物一杯奢るよ」という感覚で、気が向いたら見てやってください。

ちなみに以下の有料部分に関しては、労働審判の記事にも全く同じ内容が記載してあります。

「特殊」な状況について

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