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【道南EXPOレポート②】道南の未来を考えよう-一次産業編-


◼︎道南の一次産業の守り方、そして繋ぎ方とは?


美味しい魚や野菜、美しい自然。
道南の魅力は、一次産業によって支えられています。

しかし後継者不足や高齢化、魚離れ、そして地球温暖化による環境の変化など、その存続を阻む課題は山積みの状態です。

このままでは、道南の豊かな食材を味わえなくなる未来も、そう遠くないかもしれません。

一次産業をどのように守り、次世代へ繋いでいくべきなのか。

一次産業を支えたいという想いで活動している一般社団法人「Local Revolution」と、一次産業に従事する生産者の方々をお招きし、現状を伺いながら、未来のためにできることを共に考える場となりました。

▼登壇者をPick Up!!▼
Local Revolution
◯Moderator:岡本 啓吾さん
Gスクエアのセンター長。道南の一次産業を支えたい一心で、Local Revolutionを設立。道南への愛と情熱が溢れまくっている方です。

◯齊藤 亘胤さん(ノブさん)
東京から函館にUターン。北斗市のレストランPokke dishで、エシカルでユニークな料理を提供しています。めちゃめちゃ美味しいです。

◯齊藤 いゆさん
札幌から函館にUターン。魚に並々ならぬ愛情を持ち、おさかな専門シンガーソングライターをはじめ、魚に関する様々な活動を行っています。

【道南の一次産業従事者の方々】
◯熊木 祥哲さん(漁業代表)函館市の漁師。
◯吉岡 奨悟さん(漁業代表)森町の漁師。
◯木村 侑さん(農業代表)上ノ国町の農家。
◯道南林業代表 中川 かおりさん(林業代表)函館市を中心に林業塾を自主運営。

◼︎当日のトークの一部をお届けします!


なぜ道南は食に優れているのか?

ーーまずは道南の食について、シェフのノブさんの視点からお話しして頂きます。

(ノブさん)僕は東京で20年ぐらい色んな食材を見てきました。その中で美味しい食材もあったけれど、道南にUターンして旬の食材を食べると、鳥肌が立つくらい美味しいんです。どの季節でもそれがいっぱいあるんですよ。

世界料理学会という世界中のトップシェフが函館に集まるイベントでは、シェフの方々が「やっぱり函館には敵わないよね。なんでも揃っちゃうし、なんでも美味しい。」って言ってくれるんです。
道南はもの凄いポテンシャルを持っている、世界でも有数のエリアだと思います。

ーー次に、食の担い手である一次産業の方々に、それぞれの立場から道南の食のポテンシャルや、ポテンシャルがある理由について伺いました。

(木村さん)
まず、今のテーマを考えたことがなかったです。
道南の食のポテンシャルは、自分の興味の外でした。どう流通させるか、上手に作るかなどは考えていたけれど、それがいかに美味しいかは考えたことがなかった。
でも考えてみると、暑すぎず雪も酷すぎない、常に合格点の土地柄のお陰があるのかなと思いました。

(中川さん)山が健全だと、海も健全だとよく聞きます。山のミネラルが海に辿り着いて、プランクトンが育って、海が豊かになると。
道南の山は凄く状態がいいと思いますし、山のミネラルを直接届けるために、農業をやらないようにしているエリアもあるんですよ。

(熊木さん)僕らの地区に関しては磯焼けが深刻で、 山のミネラルが来なくなってるのかなと思ってます。人工物がいろんな所に増えて、海が変わってきているので、それも皆さんに知ってもらいたいです。

ーー道南は凄く恵まれていて魅力的に見えているという意見がありながら、それをあまり感じておらず、課題感の方が先行している意見もあるというハレーションが起きています。


道南の一次産業を未来に繋ぐには?

ーー魅力的な道南の一次産業を守り、次世代に繋ぐためにはどんなアクションが必要か、農業代表の木村さんにご意見を伺いました。

(木村さん)地産地消が効果的なんじゃないかと思いました。
僕らは市場に出しているものが、流通を経て本当においしい状態で届いてるか分からないんです。物流コストはめちゃくちゃ高いのに。
地産地消を行っていくことで、経営資源を多く確保できるし、それが間接的に食や自然を守っていくことに繋がるかもしれないと思います。

ーー地産地消は理想的なシステムだと、改めて実感します。
しかしそれがなぜ実現できていないのか。一因が熊木さんから語られました。

(熊木さん漁師は、市場に出荷してもなかなか思い通りの値段にならないことに悩んでいます。)

(熊木さん)全国的には値段がすると言われる魚種も、消費者ニーズの変化によって、市場も値段を安くせざるを得ない状況が、親父の代から続いているんです。
そして今は魚離れといわれている状況。
せっかく獲ってきた新鮮な魚に価値が付かない日が続くと、「僕らはどうしたらいいんだ」って凄く思ってて。

マイワシは温暖化の影響で最近獲れるようになってきた魚の1つです。売れない理由には、今までイワシを食べる文化が無かったために、食べ方が分からないというのがある。

それでも僕らは海で獲れたものしかお客さんに届けることができない。でも消費者の方は食べ方が分からない。僕ら漁師にとっても魚屋さんにとっても売れない魚の価値はどんどん下がってしまいます。

獲れたものにあったやり方を、漁師、魚屋さん、そして市民の皆さんを含めて、考えていかなきゃいけないと思っています。

ーー現状の課題は、一次産業の方々が自分達だけで解決できるレベルではなく、様々な外的要因が絡み合っています。解決の為には、皆が一体となって守る方法を考えなければいけません。
その方法の一種として、いゆさんから、標津町の事例を紹介して頂きました。

(いゆさん)道東にある標津町では、基幹産業である農業と水産業さらに行政が連携して行う「標津町産業環境に関する3者会議」が行われています。

どのように自然を守っていくかを日々会議し、皆で植樹をしたり、小学校に出向いて講義したり。農協・漁協・行政の3者が連携して、河川や海に負担をかけない活動を推進しています。

河川の水質悪化は遡上するサケマスに影響を与えるだけでなく、赤潮のような海洋問題を引き起こすきっかけにもなります。
海・山・川に支えられ、発展してきた標津町。自然が様々な恵みを与えてくれているという気付きから「自分たちで川を守り、山と海を繋いでいこう」と意見が一致したそうです。

立場を超えて、同じフィールドに立っているという想いで自然を守る活動をしているんです。

ーー全ての業種が繋がっていて、連携が重要であるということが、標津町の事例から伝わってきます。


フリーセッション「次の世代の為に、いま私達ができること

ーー最後は「次の世代の為に、いま私達ができること」がテーマのフリーセッション。
まずは食育・魚育の授業を行っているという熊木さんといゆさんに、子どもたちに授業を通して伝えたい想いを聞いてみました。

(熊木さん)
子供たちに地元の魚を知ってもらいたい。今の子供は、魚=刺身が当たり前になっていたり、 自分で骨を取ることをしなくなっていて、そういうことが魚離れにも繋がっていると思うので、函館から学びの機会を増やせればと思っております。

(いゆさん)幼稚園などで“すぎょい授業”という魚の魅力を伝える授業を行っている中で、園児たちに「魚を獲る人をなんて言うでしょう?」と聞いても、漁師さんの存在を知らないんです。その現状を感じた時に、やばいと思いました。

多くの人が、一次産業の現状を知らない。今私たちができることは、現在どういうことが一次産業で起こっているか、まず知るところからがスタートだと思ってます。

「知ること」に関連して、吉岡さんが森町の異業種交流について紹介してくれました。

(吉岡さん)森町では、月に1回「オニウシ変態解放区」っていうのをやってまして。いろんな企業さんや農家さんや漁師さんと、ご飯を食べて飲んで交流する集まりなんです。町長さんも来てくれるんですよ。

これは次世代にも繋げていきたいと思ってます。今回の山の話も知らなかったし、異業種で交流をしていく中で何かの活動に繋がるんじゃないかと。1人で動くより皆で動けば、そのぶん意見も多くなるし。

次に、未来のためにどのようなスタンスで行動していくべきか、木村さんの想いを伺いました。

(木村さん)自分の仕事を、現状維持で子供世代に繋げていきたいっていう人が居るんですよ。だけど僕は現状維持だけじゃなくて、攻めないと、時代の流れに飲み込まれてしまうと思います。だから少しでも新しいことを始めていくことが、次の世代のために私たちができることなんじゃないかなって思います。
今のままで20年後、いいわけがないんで。

(ノブさん)こんな壊れた地球を子供に渡していいのか?ってことですよね。
僕らが目指すべきって 、環境を再生することですよね。英語だとリジェネラティブって言うんですけど。
それを本業とは別の「クラブ活動」的に目指すなら、皆で手を繋げるんじゃないかなって思ってます。

最後に、岡本さんからこのセッションを作った理由を語られました。

「僕は、一次産業をどうにかしていきたいという想いをずっと持っていました。
一次産業の方々は様々な課題を抱えていて、もう当事者だけでは守り繋いでいくことは無理なんです。
次の世代のために自分が何ができるかを、色んな立場の人たちが協力して取り組んでいくことが絶対的に必要なんですよ。

まずキックオフになる場を作って、 みんなごとにして考えていく機会を作りたいという想いで、今回のトークセッションを開催しています。
今後も皆で議論をするフォーラムを作りたいと思っています。

僕はこれを責務としてやっていくことが道南の未来を守ることだし、自分の 地域を愛することにもなるという信念を持って、今後も活動していくことを宣言します。


◼︎セッションを通して私が感じたこと

当たり前だと思っていて、気付いていなかったことに気付かされたセッションでした。

スーパーで、野菜は誰が作っているのかたまに分かることもあるけれど、魚は誰が獲っているのか全然分からないこと。
獲れる季節とそうでない季節があるはずなのに、年中欠かさず並んでいる食材が多いこと。
道南産のものは意識しないと見つけられないし、道南産の方が高いこともある。
物理的な距離は近いはずなのに、なんだか遠くに感じている。

そこで「自分は結局、他人事にしていたんだ」と気付きました。
一次産業が危機にさらされているとはメディアなどで知っていて、心配に思ってはいたけれど、メディアの外のことを知ろうともしなければ、自分に何ができるか能動的に考えたこともなかった。

週に何度もスーパーに行って、魚も野菜も買っているのに。美味しいものが好きで、何よりも自分事にできるものなのに!

だから、このセッションを聞けて良かったなあと思います。

登壇された一次産業の方々の言葉からは、自分達だけではどうにも出来ないことへの悔しさのような、色々なものが混ざった感情が節々から滲み出ていました。
そこでようやく、自分事になりました。
当事者意識を持てても、いち小市民に何ができるだろう・・・とも思ったのですが、道南の魅力や現状を理解して、それを他の人に伝播させていくことは私でもできるよなあ、と気付きました。

セッションでもあったように、現状を理解し、それを共有し、当事者意識を持つ人を増やすこと。まずはそこから活動していけば、いずれは未来を変えることができる大きな力になるかもしれない。

今回のセッションに参加できなかった方も、是非今後のフォーラムに足を運んで、これからどうすればいいのか、一緒に考えてみませんか?


◼︎道南未来予想図:一次産業編

このセッションを通して考えた道南の理想の未来は、「皆が道南の食と一次産業に誇りを持つ」ことです。
セッションでは、道南の食の素晴らしさは地域の外からも評価されているのに、当の一次産業の方々はその自覚が無い、ということが凄く印象的でした。
地域住民でも自覚していない人が多いのかもしれません。

その意識を、このセッションのような内容を知ることで変化させて、一次産業の方々が自分の仕事に誇りを持ち、地域住民からも誇りを持たれるようになる。
そして一次産業の方々が、道南の食材を食べる全ての人が、道南の食を「道南産だからおいしいんだよ!」と言えるようになっていたらいいなあ、と思いました。

この未来は机上の空論ではなく、現実にすることができます。その熱意を、岡本さん率いるLocal Revolutionと、登壇して頂いた一次産業の方々から感じたんです。

このセッションを皮切りに、一次産業に誇りを持つ人をどんどん増やしていくことができると思います。

彼らが切り拓く道南の未来は、明るいです。

▼この記事を書いた人
北村 梨紗 -Kitamura Risa- 北海道教育大学函館校3年

初めまして!私は十勝から函館に進学し、地域活性化の活動全般に関心を持って日々活動しております。
その中でお世話になっていた岡本さんに今回もお声がけ頂き、このレポートを書いています。

もっと短くまとめるべきだったのですが、セッションの中での言葉や雰囲気をできるだけ伝えたい!これを読むだけでも当事者意識を持つことができるレポートにしたい!と我儘を言って、かなり字数を増やさせて頂いています(本当にご迷惑おかけしてます・・・)

拙い文章ですが、このレポートで、あなたの意識に何か少しでも変化をもたらせていたら嬉しいです。

ライティング、写真、デザインなどが好きでよくやっていますので、何かお力になれることがありましたらお声がけください。

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