大満足!「じごくのそうべえ」by CHAiroiPLIN
年明け、久しぶりに舞台を見に行ってきました。
昨年末のヨコハマダンスコレクションでもらった大量のチラシの中に紛れ込んでいた『じごくのそうべえ』、端的に言って素晴らしかったです。
じごくのそうべえのタイトル自体は認識していて、昔絵本を読んだことがあるような記憶がうっすらとあるものの、その程度でした。
子どもから大人まで楽しめる ‘おどる絵本’ との触れ込みと、楽しげな演者のボディペイント。あと主催? のCHAiroiPLINは「ダンスカンパニー」とのことで、ちょっとおもしろそうだなという雰囲気を感じて申し込みました。
創意工夫にあふれた舞台
上演は約1時間半、会場には小さい子どもたちもけっこういました。
ダンス
さすがダンスカンパニー、レベルが高いなと思う人やシーンももちろんありましたが、ダンスそのものを主役として前面に押し出すというよりは、ストーリーや役柄やシーンと自然に絡み合っている感じで、楽しめました。
音楽
生アコーディオン演奏もあり、CHAiroiPLINの清水ゆりさんが作詞・作曲されているそうですが、とても世界観を引き立ててくれる曲たちでした。
ユーモラスな曲調や歌詞が特徴的で良かったですね。
衣装
とにかく登場人物が多いです。そして衣装もシーンごとに何種類もあります。渡部淳子さんという方が担当されているそうですが、あれを全部1人でやっているのかチームで制作しているのか。
いずれにしても、ものすごいパワーとクリエイティビティですね。あれだけ想像力に富んだ衣装が次々に出てくると、子どもたちも飽きずに楽しめそうです。
小道具/照明
衣装に負けず劣らずというか、小道具〜大道具、柔らかいものから固いものまでたくさんありました。
照明もかなりの種類と切り替えがあったはずで、当日のアンケートフォームでも照明に言及していたのですが、すいません。シーンが多すぎる&書くまでに時間が経ってしまって、正直あんまり思い出せません笑
カメラワーク
この舞台、なんと上演中にカメラが縦横無尽に走り回ります。元々舞台作品の予定だったものをコロナ禍に急遽映像作品に切り替えた経緯があり、その後の舞台化だったということを後から知り納得しましたが、いや〜斬新な演出でしたね。
そして、あれだけ動きが多く失敗するリスクもある演出をやってのけるチャレンジ精神とチームワーク。
普通の舞台だと客席から見えない小さな物をあえて使うことはないと思うのですが、そんな小さな小さな ‘超’ 小道具やあるいは生き物? たちが舞台と融合する様は圧巻です。あんな演出は初めて見ました。
ストーリー
けっこうな数の登場人物がいて、1人1人にストーリーがあるのですが、いや〜なかなか攻めた設定もありました。ザ・子ども向けというよりは大人も十分楽しめるエグみやほろ苦さやあるという。
これけっこう大事だと思いますね。子どもって馬鹿じゃないので、私たちが思っている以上に大人たちを見ているし理解している部分も多い。
日本社会は子どもたちを必要以上に「子ども」枠に押し込めたがる傾向にあり、それが ‘保護’ だと思いがちだけど、実は子どもの可能性を一方的につぶしかねないというリスクもあります。
※もちろんメリット・デメリットは表裏一体なので一概に良い悪いとは言えないとも思いますが。
そういった観点から私はフランス式の子どもへの向き合い方(1人格として扱う、自分の言葉で説明させる、子どもだから・大人だからという逃げ技を使わないなど)に注目しています。
そして “子どもだからといって馬鹿にしない” という点で、この舞台にも勝手ながら少しシンパシーを感じました。
表現する、ということ
なんかねえ。大人が全力で表現する姿、挑む姿って素晴らしいですね。
長い迷走期間を経て私が出した結論(今後変わるかもしれませんが)も、「豊かな表現を磨き続ける」「楽しいことを(惜しまずに)ちゃんとする」でした。
一口に ‘表現’ といっても、会話のように言語化して伝えるものや感情表現、ダンスや歌や絵、文章や映像、ファッションや寄付に至るまで、人として生きる上でのあらゆるジャンルに及びます。
表現ってクリエイターと呼ばれるような人たちだけに大切なものじゃなくて、すべての生きる人たちにとって必要なものだと思うんですよね。
ただ、大人になって歳を重ねるとだんだん億劫になったり、あと日本社会はどちらかというと ‘表現’ に対して重要性の認識やリスペクト度合いが低い傾向にあるので、無邪気な子どもたちと比べると私たち大人は表現に対する積極性が小さいかもしれません。
でも、使い古された言葉にはなってしまいますが、表現をしていくことに年齢は関係ない。
個人にまつわる得手・不得手の大半はカルチャーと訓練(環境と練習)である程度解決するので、カルチャーからでも訓練からでもいいですけど、練習すればある程度豊かにしていくことは可能だという考え方を私はしています。
なので、次はスズキ拓朗さんにちゃんと感動の気持ちを伝えたいですね。
終演後にロビーでパンフレット販売があり演者さんたちもいらっしゃったのですが、余韻でほわ〜っとなっていたのと決済のためにスマホを起動するのと瞬発的に言葉を発する力が不足していたこともあり、ちゃんと話し掛けられなかったのです。悔やまれる!
子どもたちへの影響
舞台を観ていると、最後の方に「ねえいつ終わるのー」とお母さんに向けて連呼する子もいたりしましたが (笑)、まあ子どもは長時間我慢するのけっこう大変ですからね。ハマれば集中力凄まじいですけど。
でもいいんですよ。10本観たうちの1本、あるいは90分あるうちの5分間だけでも、好きだったりグワンっと食らうものがあれば。
1つ1つにちゃんと感動したり100%向き合う必要はなくて、ただそれでも触れる数が多ければ何か見つけられるチャンスも増えるので、子どもたちがこういう舞台に触れる機会があるというのは素晴らしいなと思うわけです。
ChaplinとCHAiroiPLIN
実は私、Chaplinの映画が好きです。ユーモラスな動きとか、目が見えるにようになった少女と向かい合ったときの表情とか。
ダンスカンパニーCHAiroiPLINも、わざわざ大文字と小文字にしていることから、Chaplinへのリスペクトを感じますよね。
実際、じごくのそうべえを観ている間も、ところどころChaplinへのシンパシーを感じるような瞬間や雰囲気がありました。
やっぱりダンスを始めとした身体表現って、奥が深くていいですよねえ。
パンフレットも楽しい
最後にパンフレットにも触れておきましょう。
舞台を観たのが数週間前でそのときにちょろっと下書きを残していた程度だったので、noteを書くにあたって、終演後に買ったパンフレットを読みながら当日を思い出していました。
デザインに工夫が凝らされていて色使いも楽しくて、でもガチャガチャしていないのが見事ですね。そしてインタビュー形式の内容もちゃんとおもしろい。
あとね、やっぱり言及しておかずにはいられないのは、演者1人1人がまとっている衣装やボディペイントが素晴らしすぎること。特にボディペイント!
みなさんのポージングや表情も相まって、各人の魅力が引き立っています。
CHAiroiPLIN、要注目です!
'24/02/11 最終更新