見出し画像

ターミナル

・私の家なのに、鍵がないと入れないっておかしくありませんか???いやいや、私が家賃払って住んでるんですけど!ねえって!

・私は人生で2回家の鍵を無くしたことがあります。1回目は大学生の時、友達と海で遊んでいたら自転車に置いていた袋の中に鍵を置き忘れ、戻ってきたら鍵だけ抜き取られていた。そんなことある?
鍵に住所も書いていないので、金属の塊として盗難された(動物に持って行かれた?)可能性が高いみたい。
その時はマンションの隣に管理会社があったかつ、鍵を無くした時間帯が昼間だったので、管理会社の人からスペアを借りて事なきを得、鍵交換もすぐ手配して貰った。ありがたい。

・2回目に無くしたのは昨年5月。忘れた頃に事件は起きる。この日は会社のキックオフがあった木曜日。普段通りに会社に到着し、事業部のキックオフに参加。飲み会にもしっかり参加し、帰宅したのは22時頃だった。エントランス前で鞄を漁るも鍵が見当たらない。鞄の中身をひっくり返したけどない。しかもこの家の鍵は大学生時代に住んでいたマンションのよくある鍵ではなく、カードキーかつ結構特殊な形状をしている。

・マンション敷地内から部屋に入るまで、このカードキーの出番は3回もある。まずはエントランスに入るために差し込む。次にエレベーターに乗るために差し込む。最後に部屋に入るために差し込む。部屋のドアに差しっぱなしか?と思っても、マンションのエントランス内に落としていても、そもそも中に入れない。22時半。もう疲れている。酔いは覚めた。

・偶々コンビニ帰りの住民が通りかかり、その人にくっついて部屋の前に。やはり鍵は刺さっていない。廊下にもエレベーターにもエントランスにも落ちてない。ゴミ捨て場にもない。しょうがなく敷地を出る。駅までの道のりを鍵を探しながら歩く。プラスチック製のカードキーかつ、大きさがルマンド程度なので、暗くてよくわからない。多分暗くなくても見つけられない。駅に到着。駅員にカードキーの落とし物が届いていないか聞いてみる。ない。もうすぐ23時。

・埒が開かないので、すぐそこにある警察署へ向かう。免許更新できるレベルのでかいところ。免許を持っていない私は初めて中に入った。まあ届いてない。そうよね…。わかってはいるけど毎度期待しては落ち込む。警察署でこのまま仮眠させて欲しい。眠いんだよこっちは…。でかい警察署なので、横でギャルが大声で騒いでいた。誰かとのトラブルの模様。ジャージにサンダルの平成ギャルだった。懐かしい(1年近く前なので彼女が何を話してたかは忘れてしまった)。

・もう完全に心は折れている。明日は金曜日。でもただの金曜日ではない。有休をとっている。鍵探しのために事前申請したわけではない。そんな計画性があったら鍵は無くさない。

・地元から母が1週間ほど遊びに来ることになっていたのだ。2022年12月〜2023年5月までの期間、清澄白河にある東京都現代美術館にて開催されていた『クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ』展をみるために。2023年5月ともなると、展示も終わりに近づいており、この展覧会はSNSをはじめとした各媒体でとんでもなく流行ったので土日だと2時間待ちとかはザラだった。

・でも、私は天才だったので4月1日から発売される年間パスポートを購入すれば、合計4回まで特別展示にいつでも予約なく待たずに入れる情報を仕入れており、年パスを母の分と自分用に2枚確保していた。でも前日に家の鍵を無くしてしまった。天才でもなんでもなかった。

・最終手段として、マンションの管理会社に電話。本社の営業時間は勿論終わっているので夜間緊急の番号に電話した。無事繋がり、カードキーを無くしたことを伝えると、鍵を開ける業者を手配できるが、金額は3万円からとのこと。え?開けるだけで!?しかも3万円『から』なので、実際5万でしたとか言われたら言い値を払うしかなくなる。うわあ…悪どい商売やで…。しかも来るまでに少し時間がかかるとのこと。丁重にお断りして電話を切る。終わった。

・母は朝10時前には羽田空港に到着してしまう。とっくに母は寝ている時間だろう。お母さん、実は私、家に入れていません。

・朝になったら管理会社に電話することにした。多分1番安いのがその方法だから。実は昔、エレベーターの中でカードキーが経年劣化でパキッと真っ二つになり、管理会社に電話してスペアキーを受け取れた実績があるのだ。割れた鍵と3,000円を新宿まで持って行き、管理会社が保管していたスペアキーと取り替えて貰った。運が良ければスペアキーくれないかな…非常に浅はかな考えである。

・管理会社の営業時間は朝9時から。明確な賭けだ。もう何もやることがない。24時間やっていたジョナサンはこの前潰れてしまった。少し考え、私は羽田空港に向かうことにした。終電がギリあるうちに羽田に着いてしまおうという算段だ。あそこには横になれる椅子も、フリーの電源もある。ローソンもある。人も多いし安全だ。私の住まいの近辺はお世辞にも治安がいいとは言えない場所である。

・羽田空港に到着。今晩の宿である。私は結構羽田空港について詳しい。社会人1〜3年目の時に、毎週必ずと言っていいほど飛行機に乗っていたからだ。羽田空港・広島空港は生活の一部であった。行きすぎていたかつ、羽田と広島の往復しかしない人間なので、広島空港のJALの職員は私のことを覚えていたくらいにはよく訪れていた。

・国内線ターミナルは閉まるので、国際線ターミナル駅で降りる。結構懐かしい。まさか宿として来ることになるとはね。2023年なので海外旅行も日常になっており、24時を回ってもターミナル内には人がごった返していた。意外と寝る場所がない。どこに行っても誰か寝ている。まじか。やることがないのでターミナル内を徘徊する。ローソンとつけ麺屋しか営業していないのでどこに行く宛てもない。

・3階の吉野家とモスバーガーの前にあるテイクアウトしたものを食べるスペースに腰を据える。他の机にもまばらに人がいる。多分家に入れなくてしょうがなくここにいるの私だけだろうな。みんなでかいトランク持って同行者と楽しそうに過ごしている。いいな〜。私も海外行きたい。パスポート家の中だけど。

・友達とLINEしたりしつつ(実は警察署に行くあたりから連絡をとっていた友達がおり、私は彼女に逐一レポートを送りつけていた、私の悲劇を面白がってくれ、支えてくれた心の友、ありがとうね)やっと朝になった。眠い。

・母がやってくる国内線第一ターミナルに連絡バスで移動する。もう8時過ぎ。早く9時にならないかな…。9時になり管理会社に電話を掛ける。鍵を無くした場合はセキュリティの関係からスペアキーの貸与は出来ないらしい…言い方をミスった。遠い場所(例えば出張先の広島)にあることはわかっているがすぐ取り返せないので一時的に貸して欲しいとか言えばよかった。しかし、提携している業者を手配してくれるらしい。平日の日中帯なので、比較的安く、その場で鍵交換をしてくれてスペアキーまで付いて2万円ちょいのとのこと。だいぶ安く感じる。

・母が来るまでには間に合わないしそもそも私は既に羽田に居るので、母には本当のことを言うしかないが、割となんとかなりそうで一安心した。ありがたい。鍵業者には私から電話する必要があり(時間調整などしなければならないので)急ぎ電話。割とすぐ来れるかと思いきや、他の依頼もあり昼12時頃になるとのこと。すまん、母よ。朝一の長旅で疲れたと思うが、もう少し待って貰うことになる。

・母が到着。他人のスーツケースを持って出てきて一悶着あったが(本来の持ち主はまだピックアップレーンにはいなかったようで助かった)無事に自分のスーツケースと再会することができた。早速のポカに落ち込む母に私のポカをぶつける。母はあまり気にはしていなかった。自分がポカしたからか。助かった。

・12時まであと2時間ちょい。羽田は混雑していたので、私の家の最寄駅に向かう。カフェを梯子し時間を潰し、やっとのことで鍵交換の業者の方と対面。慣れた手つきで10分少々で全て完了。嬉しい〜!!!喜ぶ私。疲れた形相の母。なんかごめん。

・鍵の取り扱いにはくれぐれもご注意を。
(この記事のヘッダー写真はこの件の請求書です、強く生きような、私)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?