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母の残したもの
母は、私が幼い頃からなにかあればすぐ鉛筆を手に取り、何かしらのメモをとる人だった。
母が旅立った後も、台所にあるレシピのメモの束や、小説に挟み込んだメモや、兎にも角にも、色々なところから母の書いた文字が書かれた紙片が出てきた。
母と過ごした地から離れた場所に居る今でも、私の手元には母の文字が幾つか残っている。
私は里帰り出産をしたのだが、その時母が一遍のノートを手渡してくれた。
それは私がまだ幼い日々を母が綴った育児日記の様なもので、事細かにその日の私のことが記録されていた。
母の言葉から察するに、私の分と妹の分、大学ノートにそれぞれ実家の階段下の収納に段ボールに入って十何年分もあるとのことだった。
いつか読みたいと思いつつも、その時はそのノートのことを気にできる余裕もなかった。
でも今、そのノートが気になって仕方のない自分が居る。
折を見て、帰省の際に父に頼み、あのノートを探し出し持ち帰りどうにかして読んでみたい。
まだ娘がお腹に居る際に読んだ、私の乳幼児期の育児記録は、今の時代とはかけ離れたものではあったが、そういった部分も含め、全て記録に残っていることが、とても大切であたたかなものに、今の私には思えるのだ。
いつかその記録を文字におこしていくことが、今の自分のささやかな夢であったりする。
今は実家の階段下の段ボールに眠っているであろうそのノートを手元に引き取るまでは、実家とは離れた場所に居る、今現在手元にある母の言葉を紡いでいこうと思う。
(冒頭写真は、帰省の際に母と愛犬の散歩で一緒に見た夕焼け)