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忙しい人のためのHip Hop史④『多様化と進化‐中編〜競争〜
RUN D.M.C.、Beastie BoysやLL Cool Jなどの商業的成功により、ラップのサウンドは多様化しより激しいものへと変化していき、後のHardcore RapやGangsta Rap(後者については西海岸編にて別途記事執筆予定)、90年代のG-Funk、Boom Bapサウンドの源流となっていきます。
音楽性の変化はそのまま続いていく一方、80年代半ば以降になると「ラップ」そのものも技術的に多面化し、文学としての進化を遂げていきます。その要因の一つには、当時のシーンを代表するラッパー及び、ラップグループ達の歴史的な抗争・競争がありました。
The Bridge Wars(ブリッジ・ウォーズ)
事の発端は1985年下期、ニューヨーク・クィーンズ地区のカリスマDJ、Mr.MagicとMarley Marlが自身らが設立したCold Chillin' Recordsから、MC Shanの「The Bridge」をリリースしたことから始まります。
内容としては、所属グループのJuice CrewやMC Shan自身の出生など、クィーンズブリッジ地区への賛辞曲で、当時はこの曲が大きな確執・抗争に発展するとは想像してなかったことでしょう。
サウスブロンクス地区出身で、当時駆け出しだったKRS-One率いるBoogie Down Productions(以下、BDP)は、この曲が「Hip HopはQueens Bridgeで誕生した」と謳っている歴史歪曲だと解釈します。The Bridgeのビートをまるまる使用し、MC Shanをディスする「South Bronx」をリリースし、ブロンクス対クイーンズブリッジの「The Bridge Wars」に発展していきます。
同曲では、Cold Chillin'に入る前にはMCA所属だったMC Shanに対して「お前がMCAから降ろされたのはお前のライムがダサかったからだ」と痛烈なディスをかまします。
MC ShanはJuice Crewとともに負けじと、「Kill that Noise」という曲をリリースし、曲内で「そもそもQueensbridgeがHip Hop発祥の地だなんて発言していない」と反論します。
BDPはもちろん聞く耳を持たず、その後も、「The Bridge is Over」でMC ShanのみならずMarley MarlやMagic、同じくJuice Crew所属のRoxanne Shanteを名指しで批判し、対立はエスカレートしていき、Cool C等多数のラッパーが便乗しお互いをたたきあう事態となり、「The Bridge Wars」はHip Hop界初の大規模な「ビーフ」となりました。
Nas等を筆頭に、次世代のラッパー達の多くはこの紛争をHip Hopが発展するうえで必要だった抗争だったと、自分たちの曲内でも振り返っています。この他にも色々と後日談がありますが、それらについては割愛させていただきます。
【おまけ】
最後に、KRS OneとMC Shanが共演している、1995年米国で放映されたSpriteのCMです。なかなか面白いのでぜひ。