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忙しい人のためのHip Hop史③『脚光』
70年代も終盤を迎えると、Hip Hopカルチャーはストリートからメインストリームへと徐々に進出していきます。
ブロックパーティ時代のソウルやファンクを軸としたサウンドも大きく変化していき、当時ブームだったディスコをベースとしたグルーヴの上に押韻する「Disco Rap」が注目を浴びるようになり、80年代前半ともなると音もより実験的になっていきます。
今回はHip Hopが商業的脚光を浴びる上で、重要な役割を果たした曲を4つ紹介します。
The Fatback Band - King Tim III (Personality Jock)(1979)
セッションドラマーのBill Curtisをリーダーに、「Gotta Get My Hands on Some (Money)」や「I Found Lovin' 」等、多くの大ヒット曲を生み出してきたディスコ・ソウルバンド、The Fatback Band(a.k.a. Fatback)。
今回紹介する「King Tim III」は1979年3月、世界で初めて商業リリースされたRap曲とされています。バックボーカル、スラップベースの上で豪快に押韻するKing Timのラップが一部のリスナーから支持を受けヒットし、R&BチャートのTop 30に11週間連続でチャートインする快挙を遂げました。
The Sugarhill Gang - Rapper's Delight(1979)
「King Tim III」から5ヶ月後、1979年8月に後を追うようにリリースされたのがThe Sugarhill Gangの「Rapper's Delight」でした。
ニュージャージー出身のBig Bank Hank, Wonder MikeとMaster Geeの3人が、Chicの「Good Times」のグルーヴで軽快に韻を踏むこの曲はBillboard Hot 100でTop 40入りするとともに、同年12月にはHot Soul Chartで12位、翌年1月のカナダのトップシングルスチャートでは1位、オランダのTop 40チャートでも1位、イギリスのシングルス・チャートでも第3位になり、デビュー・アルバムリリース前から世界で記録的なヒットとなりました。
Afrika Bambaataa & The Soulsonic Force - Planet Rock (1982)
前回の記事でHip Hop文化を世に広める功労者として紹介したAfrika Bambaataa & The Soulsonic Forceの大ヒット曲です。
Kraftwerkの影響を受けた、Minimoogシンセサイザーを駆使した電子音楽にあわせて韻を踏む事で、Discoサウンドが主流だったラップ音楽の多様化に貢献したのもこの曲です。このサウンドはHerbie HancockやBill Laswell等、他ジャンルの大物ミュージシャンたちにも影響を与え、後のエレクトロ・ファンクやインストゥル・メンタルヒップホップの原型ともなります。
Grandmaster Flash & The Furious Five - The Message (1982)
この曲なくして今のHip Hopは存在しないと言っても過言ではない、名曲中の名曲を最後に紹介します。
ディスコ、エレクトロ等それぞれサウンドこそ違えど、当時はパーティのイメージが強かったラップ音楽。「The Message」はそこから一転、ダンス要素を控えめにラッパー達の歌詞に焦点を宛て、ミッドテンポなビートの上にMelle Melを筆頭にFurious Fiveのメンバー達が貧困、ドラッグ、経済難など、ストリートに蔓延る社会問題や風刺をテーマにしたかなり深い曲となっています。
80年代後半になるとHip Hopは次第にラッパー達が主役となり、押韻や歌詞、ワードプレイがより重要になってきます。其のことを踏まえると、「The Message」がHip Hop音楽の方向性を大きく変えたのが改めてよくわかりますね。