志村正彦の誕生日によせて
7月10日は、フジファブリックのギターボーカル、今は亡き志村正彦の誕生日だ。
志村正彦という人は、本当に「まじめで一生懸命な人」だと思う。
「まじめで一生懸命」という性質は、子供の頃にはあまりポジティブなイメージを持てなかった。褒め言葉ではあるのだけど、「大人の言うことをよくきくいい子」であり「退屈」なイメージがセットになっていて、ある一時期は「まじめ」であることはダサいようにも感じていた。自慢ではないが、私は大人の言うことをよく聞く、まじめで手のかからない良い子、だったからなおさらそんな思いが強かった。
だけど今になると、本当に「まじめで一生懸命」に生きることはすごく難しいことだし、それができるのはものすごい武器になるのだとわかる。
それまでの私の勝手なイメージでは、バンドマンって、どちらかというと遊び人のイメージがあった。その遊び人の中でも才能のある一部の人たちがプロになっていくんだと思っていた。
フジファブリックのファンブック『FAB BOOK』に載っている志村のインタビューを読んで、そのイメージは一変した。高校生でミュージシャンになることを決意してから、ギターを買うために新聞配達のバイトをし、上京資金を稼ぐためにまたバイトに明け暮れ、両親を説得する為にデビューまでの戦略を語り、そして今でも年次、月次、週次の目標を立ててノートに書いているという。もうとんでもなくまじめなのだ。
変態的な歌詞や、意味があるのか無いのかわからないような遊んでいるような歌詞も多く、楽曲に対して「まじめ」という印象を持ったことはなかった。その裏側で、志村がどれだけまじめに真摯に音楽を作っているのかを知った時に、この言葉のイメージが一変した。結局のところ、まじめにやっているところを表に出さずにかっこつけてる人が、一番かっこいいのだ。
後々、他に好きになったミュージシャンのインタビューを読んでみると、意外にその人たちもみんなまじめだった。音楽に対して非常にシビアで、ストイックで、誠実だった。
志村の作る音楽に出会ってから、それ以前よりもっと音楽が好きになった。社会人になって、仕事を始めて、嫌なことばかりが続いていた頃、フジファブリックの音楽が、元気に生きていく糧になっていた。
そんな素敵な音楽を生み出している人が、こんなにまじめで一生懸命な人なのだと思うと、自分も頑張ろう、まっとうにまじめに生きていこうと思えるのだ。おこがましい言い方で恥ずかしいのだけれど、ファンとして恥ずかしくない生き方をしよう、とも。
そんな志村の生まれた日に心から感謝したい。