![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46460600/rectangle_large_type_2_57b87d4dd80b7d6a77497b4315f77e68.jpeg?width=1200)
頬杖のスフィンクス
僕にとってそれは全部幸福な出来事で
僕の心を駆けぬけた美しい音楽、
貧しい胸をしめつけた雪解けのような恋、
ささやかではあったけれど忘れられない日々。
遠い眼をしている黒い髪の天使、
鼻の頭にまぶしい昼間の光あつめている。
僕の頬が生気なくかさついているのは
君への恋患いのせいかもしれないね!
*
形のいい薄眉やすべすべしたおでこ、
つんと突き出ている小さな鼻の頭を
眺めている僕の頭をしめつける
幸福な君への告白についての物思い。
黒い髪、長い足、おまえの痩せた腕、
美しい薄眉や潤んだような瞳、
瞬きひとつで何度でも僕を奪い去った
まるで小さな大型ショベルカーのようだった。
頬杖を机に突き立てている、
悩ましげな眼差しで目覚まし時計に目をそらし…
そんなことを夢に見る起き抜けの寝床で
僕の頭を支配した片思い。
*
上擦ったような熱っぽいような調子で
君は何事もなかったかのように
痩せた笑みこぼす。
一瞬で僕の心を鷲掴みにしたまま飛び去った
君は小さなスフィンクス!
それは全部幸福なこと、美しい音楽、
甘い恋、一瞬ではあったけど《永遠》。
悲しみに濡れたバス停で昼の陽を浴びて
僕たちを次の場所へ運ぶべきバス待つ。
僕にとってそれは全部幸福な出来事で
僕の頭を駆けぬけた美しい音楽。
(1996年3〜4月、2020年一部改詩)