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春風と小鳥
僕の胸の奥にかけられていたはずの鍵が
いつまにかそっとこじ開けられていたみたいだ。
風のように形や影も見せやしないのに
知らぬ間にすっかり
全部盗みとられていたみたいだ。
おまえは怪盗か名探偵みたいに
絶対に開かない扉さえも開けてしまう!
今夜僕は叶わない思いを抱えて
きっと終わらない夢のほとりへ向かう。
*
おまえは魔術師か妖精みたいに
この場所の色でさえひと息で塗り替えてしまう!
きれいな小鳥を探しているうちに
迷いこんだみたい、抜け出せない深い森へ。
消せない光が僕のことを
覆い尽くして連れ去ってしまう美しい森へ!
*
空から淡雪が舞い降りてくるように
新しいメロディがこの胸の奥に宿る。
おまえのことを
まともに見れないのは
おまえの放つ光が強すぎるせいで、
燃えあがる森へ水を撒いてるみたいに
立ち尽くすだけの無力な消防士だ。
*
僕の胸の奥で閉じられてたはずの扉が
いつまにかそっと開けられていたみたいだ。
音も立てず優しい春の風のように
知らぬ間に忍びこみ
僕の心全部持ち去っていったみたいだ。
(2020年2月5日〜3月23日)