幸運な若者たち
春の風が心に暖かく
穏やかに記憶の頁めくる。
川べりが黄色に染められると
傍らで土筆が背伸びをする。
可笑しいほど泣きそうだよ、
こんな日が巡ってくれることに。
*
早すぎた花が散りはじめると
昼間の宴もお開きとなり
人気のひいた川風に吹かれ
熱が覚めたように風邪を曳いた。
おかしいのは季節じゃなく
暦を捉えようとする僕ら。
首も座らないのに背伸びばかりして
駆けだして転んで騒いで諭され
ひっくりかえっている小僧。
魘され歌う僕らは知恵熱を出して
まだ回る首と命拾いに気づいた
幸運な馬鹿者。
*
まだ僕らは人間の走りで
立ち上がったばかりの駆け出しで
すぐに飛び上がろうとするけれど
へその緒はまだ繋がっているよ。
やさしいのは僕らじゃなく
僕らを生かしてくれているものだ。
正しいのも僕らじゃなく
巡ってくる季節のほうなんだ。
*
春の風が心に暖かく
穏やかに季節の頁めくる。
(2018年3月25日〜2019年4月20日)