外苑の千の花
もう二度と会えない
そんなことも知らずに
過ごしていた昨日が
遥か遠くに見える。
いろんなことが浮かんで消えるけど
どうしてなのか、うまく思い出せない。
*
百年も前に植えられた樹々の傍らに集まり
森の音に耳澄ます。
いろんな声が聴こえてくるようで
どんな音も耳に残るよ。
あなたに手向けられた花、風にそよいで
忘れたくない音楽を奏でているようで。
*
忘れないように
忘れられるように
小さな灯火を持ち寄り集まって
命を傾け
雨の音を聴いて
ひと鉢の花を
形見のように掲げ、帰る。
幾千の花を咲かせてみようよ、
水たまりに弾けている千のナイフみたいに
いつまでも。
*
もう二度と会えない
そんなことも知らずに
過ごしている今日が
遥か遠くに滲む。
(2023年5月2日〜6月26日)
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