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昏い水のなかの夢
しろく濡れた眼をして革命の話を聴いて
心がどこか遠くにとんでしまったような気持ち。
遠い雨の降る夜、窓の外の暗闇に
夜の匂いを探している。
窓のふちでは六月の雨粒がぶら下がっている!
ぼくたちの幼年が終わる。
新しい季節は物憂げに出番を待ちあぐねている、
息を潜めた獣のように。
開演前の舞台裏でぼくらは黙りこくって
何かの始まりを待っている。
*
昏い水のなかに浮かぶぼくらの目玉は安い電球のようだ、
古びた身なりは残骸のレインコート、
衣摺れの音もなく動き回る若いベトとドクみたいだ、
体が途中で繋がっている!
歩けなくなったのはぼく?
それとも飛蚊のきみのほう、
どっちにしてもぼくたちは片足失くした半身の兄弟。
痺れをきらして跳び出したぼくの舟は
明け方の海で転覆しそうになっている、
遅れてきたきみは雨宿りをしている、
靴擦れのぼくも今は樹陰の中だ。
*
十一月の夜がぼくらにとっての始発駅だ。
ぼくたちは引き裂かれた痩身のシャムの双子!
昏い裂け目に落ちていった年若いふたりの赤子、
身を削るほど全速力で。
新しい季節は物憂げに出番を待ちあぐねている、
息を潜めた獣のように。
未明の海に投げ出された片端の男がぼくだ、
目をこすり重い体 起こす。
(1989〜1994年)