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あらためて、コンセプトデザイン
私は普段、自営業としてコーヒーショップを運営したり、イベント企画を立ち上げたり、そしてWEBなどのデザイン制作に携わったりしている人間ですが、日々、必ずといっていいほど『そのコンセプトは何か?』と問いかける時間があります。
いわゆる、『コンセプトデザイナー』として明確なクライアントから依頼を受けたり、課題となっているプロジェクトがあるケースもあったりしますが、それよりもほとんどが、自分の事業をマーケットに訴求するために、自営業で必要に迫られて考えていることがほとんどです。
ほぼ365日、何かしらのコンセプトを考えて、発信して、特定少数、不特定多数、さまざまなターゲット層にSNSを通じて発信してきました。
・『手仕事』と『顔の見える繋がり』を大切にしたマーケットづくり。
・古民家を改装したリノベーション空間。
・MAKE SENSE COFFEE「あなたのコーヒーライフに新しい発見とおいしさを。」
・世界で一冊だけの古本、『栞本』
・本を読み進めるように楽しむブックカフェのパフェ『チョコとコーヒーゼリーのアンティークパフェ』
etc…
自身で店舗経営を始めた2015年ごろからざっと9年。
とにかく、『生きていくためにコンセプト(言葉)を作り続ける日々』だったと思います。
"だった"
というのは、自分自身、言葉の力で消費を促す、アテンションエコノミー的なコンセプト発信に依っている状況が、段々と苦しくなり、「あんまりコンセプトを語りたくないな」という気持ちが年々強くなってきているからです。
『売上のため』に誇張することもあれば、100%真実とも言えない言葉を作って、『お客さんをその気にさせる』という作業に、虚しさも感じるようになりました。
それでも、コンセプトは必要だと思っています。
伝えようとする努力は大切だと思っています。
それは「自分が儲かりたいから」、とか、「この商品を売りたいから」、だけに傾倒するのではない、『豊かな暮らしのためのコンセプトづくり』に取り組みたい。
誰かの幸せに、楽しみに寄与するような言葉、コンセプト作りができるようになりたい。
そんな気持ちを新たに2025年は挑みたいと思っています。
新たな価値観を生み出す、"優れたコンセプト"
コンセプトデザインを勉強したくて、いくつかの書籍を参考にしたことがあります。その中で特に印象的だったのは、『コンセプト・センス』(吉田 将英 著)という本です。
その本の中で、"優れたコンセプト"とは、
「定まる」
「閃く」
「際立つ」
「集まる」
「続く」
と定義されていました。
それぞれの役割として
「定まる」→価値の方角が決まる(いつ、どこで、誰に、何を、どんな?)
「閃く」→アイデアに結びつく問いが生まれる
「際立つ」→共有しやすくなる
「集まる」→価値観を同じにする人・モノ・お金が集まりやすくなる
「続く」→普遍的な価値を帯びることで継続性をもつ
といった内容でした。
そしてそんなコンセプトを生み出す『BIV-C構文』についても、同書籍の中で紹介されていました。
そのメソッドは以下の通り
既存の「当たり前」が見落としてきた、(B:バイアス)
↓
人々がまだ自覚できていない、満たされていない欲求を満たし(I:インサイト)
↓
結果として理想の社会に今より近づくための(V:ビジョン)
↓
提案の方向性(C:コンセプト)
これが、「コンセプト」ということになります。
社会の見落とされた認知を発見し、まだ自覚されていない欲求を満たした結果、理想の社会に近づくためのビジョンを見出す。
そのための提案がコンセプトとなる、という思考プロセスです。
結果として商品やサービスの提案が為されるのであって、その目的はあくまでも社会をより良くするため。
そのビジョンを世の中に共有し、人々の「ここではなないどこか」に対する欲求を満たし、幸福をもたらすこと。
という理解につながります。
根本的な『WHY』を問う
ところで、コンセプトとは何か?を端的に説明しようとしたときに、私は『コンセプトとはWHYを考える作業』と伝えるようにしています。
なぜ、それを紹介したいのか
なぜ、それが存在するのか
なぜ、自分はコンセプトを考えようとしているのか
このWHYを考え始めると、本質的な価値を考えざるをえなくなり、表面的な言葉ではない、強いメッセージが生まれるきっかけになることが多いからです。
先のBIV-C構文に置き換えれば
B:社会や自分自身が思い込んでいるバイアスを見つけ
↓
なぜバイアスが存在している?と問う
↓
I:満たされていない欲求を満たすインサイトを創造
↓
満たされていないのは何故?と問う
↓
V:理想を目指すためのビジョンが生まれる
↓
なぜこのビジョンになったか?と問う
↓
C:表面的ではない、強いメッセージ、コンセプト
という風に考えていくことが出来るとおもいます。
優れたコンセプトを創るにあたって『WHY』の力はとても有効です。
コンセプトに善悪はない。
「何のため、誰のためのコンセプトか」
人々の豊かな暮らしに寄与するコンセプトデザインとは、「短期的な売上」や「目先の消費刺激」ではなく、長期的に人や社会、環境へ良い影響を与えるビジョンを掲げ、それを実際の製品やサービスへ落とし込むプロセスであると言えます。
そのためにも、『マーケットに乗せること』『儲けようとすること』に腐心するのではなく、あくまでも『そのコンセプトが世の中の豊かに役立つかどうか』、その視点でもってクリエイティブに務めることが、優れたコンセプトデザインであり、コンセプトデザイナーの価値であると私は考えます。
SNSでたくさん注目されるためにどう見せるか、
宣伝・売り込みと嫌悪されない発信の頻度はどれくらいか、
商品がより良く見えるキャッチーなメッセージはないか、
それら表面的な作業に入る前に、それは「何のため?誰のため?」
と問う習慣と、それが世の中の幸せにつながると確信したのならば、遠慮なく思いっきり知ってもらって、その価値を提案するための発信をする。
これからは、そんなコンセプトづくりの日々続けたいと思います。