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コロナ禍で声出しライブができるようになるまでの経緯を振り返る(後編)
前回のまとめ
前編では日本におけるコロナ感染者初観測から声出しライブ解禁までの時系列、感染リスクは実際どのくらいあるのかについてまとめさせていただいた。
後半は、ガイドライン改定や、ライブ・エンタメ業界がコロナ禍で活動を続けられるよう動いてくれた議員について記録としてまとめさせていただく。
ライブができるよう尽力した議員
おじま紘平都議
おじま都議は2020年4月から心配しつつも、元バンドマンの経験も踏まえてライブができるよう尽力していただきました。
元バンドマンとして言います。私はこの件、少し心配しています。ライブハウスは音響の関係上、典型的な3密です。無観客ライブでも感染防止を徹底してください。カメラやPA、照明スタッフは最小限に。演奏中は難しくても、可能な限り換気をしてください。対バンが客席で観ているような状態もダメです。 https://t.co/Mrb1KHmwjn
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) April 20, 2020
元バンドマンだからこそ、ライブハウスが防音の関係で密になりやすいこと、喫煙者が多いことも知っていた。
この件で動いた都議でも私以外、バンドマンとしてライブハウスに出入りしていた人はいないと思うんですよ。画面上は無観客でも、客席では仲間内でワイワイ、楽屋では煙草モクモクなんてことになったら本末転倒ですから、厳しめに条件をつけさせて頂きました。自由は責任の上に成り立ちます。ご協力を。
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) April 20, 2020
ライブハウスに直々に赴き、感染症対策を徹底している店舗もあるということを視察している。
情報解禁。私が所管する産業労働局の予算で「新しい生活様式に対応したビジネス展開支援」2事業を実現しました。ライブハウスのオンライン配信(無観客ライブ)の機材購入や、パーテーション、換気設備など感染予防対策にかかる費用を補助。作成中のガイドラインも近日発表予定。是非ご活用ください。 https://t.co/dTBcArSSQI pic.twitter.com/Ugx0rQ1UDB
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) June 10, 2020
都として感染症予防対策のための機材の購入費を一部補助金対象にすることを実現。
ライブハウスの感染拡大予防ガイドラインが公表されました。国のお墨付きということもあり、内容は厳しめですが、私が一緒に対応を進めてきた日本音楽会場協会の阿部さん@abetokyoの努力もあり、ハコ側の裁量が大きくなっています。もう少し具体的なところは都と詰める予定。https://t.co/Yc9r6NSjMb
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) June 13, 2020
規制が緩和されても簡単に客は戻ってこないことを、元バンドマンとして退官として知っているおじま都議。
昨日・今日と、ライブ・エンタメ業界の皆さんのお話をガッツリ伺いました。アーティスト、イベンター・プロモーター、ライブハウス・ホール、音響、照明、それぞれ立場は違いますが、共通しているのは「これからが一番キツい」ということ。規制・制限は緩和されても、お客さんは簡単に戻ってきません。
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) May 24, 2022
片山さつき議員
意外かもしれませんが、ライブハウス支援に関して日本音楽会場協会に声をかけたのは協会側ではなく片山さつき議員からだった(詳細は動画参照)
ツイッターで、日本全国のライブハウスの営業再開に向けたガイドラインづくりを発信されている 阿部健太郎さん、寸暇を惜しむ昼食の時間帯、議員会館にいらっしゃいました。@abetokyo 明日も内閣官房とガイドラインの最終的な詰め、感染防止とライブ音楽好きの両立、頑張りましょう! pic.twitter.com/0J0ypkSSlN
— 片山さつき (@katayama_s) June 3, 2020
2020年6月から日本音楽会場協会との話し合いが始まり、ガイドライン作成にも協力いただいた。
都議や区議の協力もありがたいが、国会議員に仲間がいることは行政を動かすうえで非常に重要。
2022年の参院選で再選したことも、ライブハウスのガイドライン改定につながったのだと思う。
本日は参議院会館内片山さつき事務所にて、片山先生にガイドライン改定の御礼とご報告をしてきました。官房、厚労省さん、共にご召集いただき会合を取りまとめていただいたことが今回の改定のきっかけとなりました。本当にありがとうございます。今後もよろしくお願い致します。@katayama_s https://t.co/uhUvr5gX7a pic.twitter.com/twdmO6balP
— 阿部健太郎(音楽会場・ライブハウス業界の人) (@abetokyo) October 26, 2022
山田太郎議員
ロッキン中止について国会質疑「まん延防止の対象地域ではないので補償が出ない」https://t.co/e1admq6t5S
— ニコニコニュース (@nico_nico_news) July 8, 2021
自民党の山田太郎議員は、中止が発表された「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021」を例に挙げ、緊急事態宣言やまん延防止の対象外地域でのイベント中止について、補償のあり方を政府に質問した。 pic.twitter.com/DuNKCo2IVG
国会において、2021年に急遽中止が発表された「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021」を例に挙げ、緊急事態宣言やまん延防止の対象外地域でのイベント中止について、保障や補助もないまま中止をすることになってしまうリスクに関して、質疑応答を行いました。
本日の政府との直接面談の様子。エンタメ業界からの直接の意見をもとに人員の収容率や上限、支援策の不備な点、その他多くの改善を求めました。党の文化立国調査会事務局長である橘慶一郎衆院議員と共に党として強く迫りました。明日も、改めて内閣府コロナ室、経産省、文化庁と議論を続けて行きます。 pic.twitter.com/RUeTbLlkmc
— 山田太郎 ⋈(参議院議員・全国比例) (@yamadataro43) May 6, 2021
イベント型エンタメ産業に対するコロナ対策への提言を政府に提出。これまで多くの支援策を改善してきました。今回改めて、関係者よりヒアリングを行い、詳細の意見を伝達し具体的支援策を提言。エンタメ産業のために行動し、皆さんに随時報告していきます。
— 山田太郎 ⋈(参議院議員・全国比例) (@yamadataro43) May 17, 2021
《Law118》https://t.co/Bvn0xJckVx pic.twitter.com/83AM9GvioM
漫画家の赤松健先生も含めてエンタメ業界にヒアリングを実施し、提言書を提出。
表現の自由を守る議員として有名な山田太郎議員だが、二次元だけではなく広くエンタメ産業を守る活動をしている証左だといえる。
玉木雄一郎議員
本日、WeNeedCultureの皆さんから、コロナで大きな影響を受けている文化芸術関係者への支援に関する提言を受け取りました。先日のMONSTER baSHの件も含め、エンターテイメント業界の支援に全力を上げたいと思っています。党の公約にも入れます。本当につらい1年半だったと思います。がんばりましょう。 https://t.co/BX0wggbrJu
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) August 25, 2021
エンタメ業界支援を政策に取り入れる。
2021年の衆院選において、「表現の自由を守る」ことや、インボイス導入に党の公約として反対を表明したのは当時国民民主党だけ。
文化や芸術に従事されている方は、その特性上、極めて繊細な性格・感性をお持ちの方も多く、今般のコロナ禍でメンタルの不具合に悩んでいる方も多いと伺いました。国民民主党は、アーティストやエンタメ業界の皆さんの「孤独対策」にも具体的に取り組みます。貴重なご意見、ありがとうございました。 https://t.co/FXKywQuYh9
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) March 22, 2021
孤独対策に関して、提言して孤独担当大臣が設置されるようになったのも、元々は国民民主案。
コロナ禍でメンタルに不調をきたして、ステージを去るアーティストもいた。
そういう人達の声にも耳を傾ける姿勢は尊敬する。
橋本ゆき渋谷区議
電気通信大学さんと共に
— 橋本ゆき@渋谷区議会議員 (@yuki_12hsm) April 25, 2021
ライブハウスでサイレント換気タイムを導入することによる換気効果を測る実証実験を新宿ヘッドパワーさんにて行いました!
模擬ライブは仮面女子に大迫力のパフォーマンス✊💓
ドライアイスでCO2濃度をわざと高くした後で簡易的な換気設備で換気します。 pic.twitter.com/EEwoZrICGD
元アイドルであり、感染症防止対策の実証実験に古巣のグループである仮面女子を協力していただくといった彼女にしかできない形でライブハウス支援を行った。
ダクトやサーキュレーターを使用し、喚起を行う実証実験。
換気設備を導入するには100万以上のコストがかかるが、低コストで換気を実施できれば施設の負担軽減にもつながる。
橋本区議の実証実験の協力は「換気対策ガイドブック」にも大きな影響を与えている。
こちらのライブハウス支援事業では、
— 橋本ゆき@渋谷区議会議員 (@yuki_12hsm) September 28, 2022
渋谷区内88施設に支援しました!当初の予定よりかなり多くの数の空気清浄機を用意していただきました!!
決算審議ではこんな風に昨年度の実績を聞いて効果検証したりしています。 https://t.co/1LU4Lyio2Q
こちらも同じく実態がライブハウス等音楽会場であれば🙆♀️🙆♀️です!
— 橋本ゆき@渋谷区議会議員 (@yuki_12hsm) January 14, 2022
音楽会場を感染症に強い環境に改善することが大切なのでぜひ申し込んでください🥺✨
換気工事支援&空気清浄機配布のW支援を渋谷区のライブハウスetcは受けられます!
こんなに充実したサポート実現できたのすごいことなのでぜひに…! https://t.co/LMeDvV4VY3
橋本区議の勤める渋谷区は都内でも有数のライブハウス密集地帯。
予算を取り付け、空気清浄機無償配布や補助政策を実現した功績も記録に残したい。
伊藤陽平新宿区議
先日、ライブハウス事業者と新宿区の意見交換の場を設けることができたので、今後は事業者からの意見が集約されて区に届きます。
— 伊藤陽平:新宿区長選特集ブログ (@itoyohei_tw) June 15, 2020
事業者が主役であり、議会や行政はご協力させていただく姿勢が大事。
新宿区に関わるあらゆる風評被害を払拭します。
新宿区議の伊藤陽平区議はライブハウス事業者の声を聞き、ライブハウスの動画制作や配信費用の助成金を最大50万支援するように働きかけ実現した。
藤末健三元議員
藤末健三元議員は、議員時代に声優の緒方恵美さんから陳情を受け、当時の悲痛なエンタメ業界の声を聞いています。
自民党「クールジャパン戦略推進特別委員会 」でライブエンターテイメントの支援を議論しました。
— ふじすえ健三 (@fujisue) January 25, 2022
ライブエンターテイメント市場は2020年に2019年の1/6ほどまで減少しています。同人誌即売会なども含めて、オミクロンに適したガイドラインの見直しを行うと共に、AFFやJLODで支援をさせて頂きます。 pic.twitter.com/kruuOOqLgc
陳情に基づき、同人誌即売会やライブ音楽産業もイベント支援助成金の対象となるように動いた。
2022年参院選では再選を果たせず、現在は議員ではありませんが文化芸術エンタメ業界のために尽力していただいた。
柳田清二佐久市長
【ナガノ アニエラ フェスタ2020-2021 支援プロジェクト】
— 佐久市長 柳田清二 (@Seiji_Ya) September 15, 2021
本日、佐久市議会においてこのイベント中止に対する支援(500万円)を議決頂きました。
佐久市議会の審議の中で、今後主催者の皆さんとの連携を求める声もありご関係の皆さんを応援する空気が広がったと思います。
https://t.co/hIkC54JqDe pic.twitter.com/JuYWW4aYb3
長野県の野外アニソンフェス「アニエラフェスタ」は佐久市が協賛しており、町おこしの一環でもある。
2021年はオリンピック開催年ということもあり、フェスも多く開催されるようになったが、波物語による炎上で空気は一変した。
2年連続中止になってしまったとはいえ、市として援助し2022年には2年ぶりに開催することができたのは、議会で補助を決定したことも大きいだろう。
【NAGANO ANIERA 中止の経過説明】
— 佐久市長 柳田清二 (@Seiji_Ya) September 5, 2021
①
医療関係者からこのイベント開催への疑問が最初でした。
市としては、会場での対応や集客数、集客エリア等を主催者さんから説明を頂きました。
その結果、感染対策は県のガイドラインに沿って、指導も受け出来ることは全て真摯に行なっていることを確認しました。 pic.twitter.com/2CbbxGv8V6
2021年のアニエラフェスタがなぜ中止になってしまった経緯について、スレッドでまとめている。
ただ一方的に中止を要請するのではなく、理由をきちんと説明する姿勢に永日差を感じた。
陳情された議員紹介
以下、具体的な政策等に反映はされているのか確認できなかったが、陳情を受けライブハウスの事について気にかけていただいた方もご紹介。
一般社団法人 #日本音楽会場協会 の方々と意見交換を。
— こまざき美紀 北区議会議員(政党無所属) (@komazakimiki) December 15, 2021
コロナ禍でライブハウス等の音楽業界も大変なご苦労をされており、未だ試行錯誤の日々です。
届きにくい情報を集約し発信もされています。
私も若い頃はバンドマン、当団体の北区担当として活動させていただきます‼️https://t.co/hr2JKREFbB pic.twitter.com/zQ2tgCbc84
本日はありがとうございました。
— わたなべ友貴@杉並区議会議員(自民党) (@TOMOKI_SUGINAMI) February 25, 2022
杉並区は、住宅の多いでありながらも、ライブハウスや劇場が点在する、ある意味ディープな文化も魅力のひとつだと思ってます!
引き続きよろしくお願いいたします!#ライブハウス #杉並区 https://t.co/raSpIXRfue
ツイートなどは見つからなかったが、他にも日本音楽会場協会議員連盟に加入している議員の方はいる。
ライブハウスとは異なるが、音楽業界4団体から支持をされた今井絵理子議員と生稲晃子議員にも個人的には期待している。
おわりに
最後にライブハウスと行政との今後の関わりについて展望をまとめさせていただく。
ライブハウスは地下にある施設が多く、ミサイル発射時の緊急避難先として有効ではないかという提案。
東京都とはミサイル対策基本合意をしたようだ。
都内でもJアラートが発令されましたが。日本音楽会場協会から提案いただいた「ライブハウスをミサイル攻撃からの緊急一時避難施設に指定する」件も進んでいます。構造、階数、面積、非常用電源の有無、大型車両のアクセスの可否、保有設備など諸条件も確認する必要があり、取りまとめを急いでいます。 https://t.co/emorkvEqxx pic.twitter.com/lNUs8XcCp8
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) October 5, 2022
なお、指定するのは賛同いただいた店舗のみであり、決して強制ではありません。一方で、コロナ禍でダメージを受けたエンタメ業界と政治・行政との間に信頼関係を築き、二人三脚で回復を目指してもらうことも一つの目標なので、都内のライブハウスの皆さまには是非、ご理解・ご協力をお願いいたします。
— おじま紘平(東京都議会議員・練馬区) (@ojimakohei) October 5, 2022
もちろん、避難先として場所を提供するのは協力に同意した店舗のみであり、行政からの強制はない。
2022年3月19日の記事。
日本国内における一時緊急避難先の地下施設割合はとても低いことが記されている。
国家の防衛予算は特定野党の反対の声もあり、簡単には増やせない。
そんな中で、ライブハウスが緊急避難先として手を挙げたことは、行政や地域との連携を深める上で意味がある。
ライブハウスは飲食業界なので、ドリンク類は常に常備されており、店舗によっては食品提供もしている(※ドリンクのみの提供の店も多い)。
すべての店が緊急避難先として手を挙げられるわけではないが、0からシェルターを作るより普段は独立していて、有事の際のみ使用できる避難先があれば国や地方としても頼りになるはずだ。
また、ライブハウスが緊急避難先として広まることで「薄暗くてなんとなく怖い場所」から、行ったことのある場所として身近になれば、利用者も増えるかもしれない。
一方的に搾取されるような関係ではなく、Win-Winの関係を構築できれば、偏見による風評被害にあうことも減るのではないかと思う。
声出し収容100%が解禁されたとはいえ、まだガイドライン上では1曲のうち25%の規制がある。
段階的に規制を緩和し、声出し100%を今後は目指していくだろう。
マスクに関しては、している状態としていない状態で感染リスクに有意な差が生じている以上、声出し以上に規制緩和のハードルは高い。
また、年表で過去の規制と緩和とライブ中止の流れを鑑みるに、規制が緩和されても羽目を外しすぎると世間から疎まれ、中止に追い込まれるケースもある。
信頼を勝ち取らなければ、規制は緩和されない。
そのことは音楽ジャンル問わず、ライブハウスやライブを守りたいからこそ、最低限のマナーやモラルは守るように心がけたい。