アイドルと表現規制について考える 前編
はじめに
私はアイドルが好きだ。
私が表現規制反対をするためにアカウントを作ったのは、好きなアイドルを守りたいという気持ちが原動力である。
表現規制反対=エロの表現しか守らないだとか、二次元の話が話題になりがちである。
しかし、表現規制に関する感度(アンテナ)が高いのが二次元および創作物のファンであるだけで、アイドルも表現規制の話とは無関係ではない。
AV新法は他人事ではない
AV新法が2022年6月に施行された。
この法律は最初は「18~19歳を守る」という内容から、全年齢に対象が拡大し、契約・撮影・公表を期間を明けねばならないことや、公表するのが嫌になった場合発売などを取り下げなければならないことから、メーカーや事務所が不利な内容であった。
アダルト俳優を守る目的のはずが、結果的にアダルト俳優を引退に追い込みAV業界全体に打撃を与える結果となっている。
アイドル規制にAV新法のやり方を応用するとしたら・・・
もし、AV新法が策定された方法をアイドル規制に応用するとしたら?
私が考えるプランはこうだ。
①未成年であるジュニアアイドルをターゲットにする
②全年齢に対象範囲を広げる
③違法なブラック事務所の話や被害者の話のみをクローズアップしてメディアに掲載させ、世論を誘導(嘘ではないのがポイント)
④提出した法案以上に規制の厳しい対案を出し、派手に先導する
「新法に反対します」というタグを過激派が先に多用することで「賛成」の声を上げやすく、反対の声を上げにくいようにする
⑤しれっと賛同多数の状態で法案を通す
上記はほぼAV新法がやられた手法と同じである。
私が二次元に比べて、三次元のほうが表現規制派に攻められた場合守りにくいと感じるのは、悪徳事務所による被害が現実に起きた事例があるからだ。
また、現実問題、ひどい事務所や運営は存在する。
例えば、有名どころだとNGT48の山口真帆の暴行事件は当初は秋元康にすら相談もされなかったことらしく、現場が握り潰していたという話だ。
地下アイドル業界でも、タレントに圧力をかける悪徳事務所が存在する。
どちらも同じ事務所による元アイドルの被害告発。
こうした悪徳事務所もある一方、デマを流され事務所側が被害を受けるケースもある。
まだ裁判の途中だが
「事務所を辞めたら1億円の賠償を払わせる」
「パワハラが日常茶飯事だった」
こうした記事がネットに拡散されたが、アイドル事務所のせいではなく、家庭のトラブル(進学など)が自死に関係していたのではないかということが裁判を通じて明らかになった。
事務所は必ずしも加害者ではなく、メディアの報道によって被害者になることもある。
AV新法作成に関わった団体の1つであるヒューマン・ライツ・ナウは芸能関係への規制に関しても乗り出す可能性は高い。
過去に提出された提言書のAV被害調査は2016年に実施されたもの。
ちなみに、AV業界の業界団体で構成されたAV人権倫理機構(AVAN)は2017年に設立された組織。
2017年を境にAV業界は適正AVを中心にホワイト化が進んだとされているため、2016年のころと現在ではAV業界は全然違うものであると業界人は語っている。
AV強要は過去にはあったのかもしれないが、今現在はほとんど起きていないと思われる。
現在の適正AV業界の仕組みをまとめたnote。
こちらのまとめにもほぼAV強要が起きる隙がないとされている。
AV新法に携わった団体・関係者によるアイドル批判
AV新法に携わった人や団体はすでに何度も実はアイドル業界に関して批判を行っている。
Npo法人 ぱっぷすは「JK/AV出演強要防止月間のキャンペーン」に対して「キャンペーンのモデルとしてAKB48のトップスターの方を登用すること」を問題提起。
・・・・意味が分からない
その被害者の子はAKBじゃないから、そんなこと言われても従う理由もないし、責任転嫁されるAKBが不憫。
アイドル業界で人権侵害問題が起きていると伊藤和子弁護士(ヒューマンライツナウ代表)は述べており、AV新法同様一部の悪徳業者を大々的にアピールし、業界自体を窮地に陥らせるのではないかと強く懸念する。
芸能界のギャラ・拘束時間などに関しては、”アイドルに限ったこと”ではなく、芸人やアーティストなど性別問わず問題にするべきであり「女性問題」として括ること自体がおかしい。
悪名高いアイドル博についてメンバーの身を案じ出演を辞退したグループの公式アカウントを「アイドルの労働環境についての規制がない」と批判していたため、注意させていただいた。
アイドル博の主催は元バンドマンであり、アイドル運営や事務所の主催ではない。
消防庁の指導が入り、車がないグループは3日目は出演NGの発表をされ、むしろアイドル及びアイドル事務所の方々は困惑していたため被害者である。
運営と連絡が取れず、出演自体を決定したグループもいるくらいめちゃくちゃ杜撰な主催のため、私はイベント前からヤバそうな雰囲気を感じ参加を見送った。
出演しないグループがタイムテーブルに記載されるほど杜撰。
熱中症被害・トイレにドアがないなどイベントも大炎上したが、繰り返すが主催はアイドル事務所や運営ではない。
アイドル博の主催の情報は公式サイトに載っていない(それもヤバい)が、状況証拠などから同じ住所の3社が実行委員会及び主催とされており、特に現場でマージャン卓を囲んでいた元バンドマンが代表であるといわれている。
芸能関係も不祥事が多く、やりがい搾取の多い業界ではあるが、SNSの普及や告発YouTuberの台頭、配信サイトも昔と比べて拡充され、事務所を通さず個人で活躍・告発もできる時代になっている。
昔はブラックだったから今も同じではなく、冷静に「かつての当事者」の声より「今の当事者」の声を重視してほしい。
当事者の声
2017年に発行された地下アイドル当事者の方が自身の経験とアンケートをもとに書いた著書『職業としての地下アイドル』
この中で「枕営業」と「AV出演」に関する話があったが、結論から言うと「枕営業の対価となる仕事を与えられる業界人がいない」と言う話だった。
枕営業に関しても見返りになるような仕事を持ち出せる人はほぼいないらしい。
もし、AV強要があったとしてもそれは一部の事務所や業界であり、アイドル業界全体が汚染されているわけではない。
また、実際にあった事件として「モデル」として契約したにも関わらず、AV出演を強要され拒否した裁判がある。
契約解除は妥当かつ、モデルには損害賠償は請求されないと判決は出ている。
引用した本書はAV新法が制定される前2020年に刊行されたものであり、意にそぐわない仕事は契約書に記載がされていたとしても拒否をする事は内容によっては可能であるとされている。
また、元アイドルの子はインスタや配信、コンカフェや裏垢などでアイドル時代を振り返る子や裏話を話してくれる子もいる。
完全匿名の本当にアイドルをやっていたか分からないようなアカウントは別だが、性的被害に遭ったという話はあまりみない。
どちらかというと金銭的トラブルの告発が多い印象(給料未払いなど)。
そこは改善してほしいところ。
アイドルになったことで自己肯定感や仲間も手に入れた人もいる
アイドルになるため(の武器となる個性を獲得するため)に東大に進学し、鬱から脱却さた後にセルフプロデュースアイドル『学歴の暴力』を結成して自己肯定感を高めたなつぴなつさんの話。
不登校で高校を中退したが、上京してアイドルになり「生まれ変わっても自分になりたい」と思えるようになった『神使轟く、激情の如く。』の生牡蠣いもこのMC。
アイドルになった事で、仲間や自己肯定感や居場所を得た子たちがいる。
ネガティヴな面だけでなく、ポジティブな面を無かったことにはさせたくない。
アイドルは性的搾取?48グループへの批判と実績
女性アイドル、特に特に秋元康のプロデュースするグループは頻繁に批判される。
しかし、秋元康率いる48グループやプロデュースしたアイドルが行った功績は大きい。
受けてきた主な批判と功績をまとめさせていただく。
下着は恥ずかしいというイメージを覆す
AKBの『ヘビーローテーション』は下着のイメージを変え、「下着=いやらしい」から「可愛い・カッコいい」というイメージに変えた。
監督は蜷川実花。女性らしいポップで可愛らしい世界観。
これが2014年の記事である。
イスラム圏には合わないといわれたが、JKTが大ヒット
以前、別の記事でも記載したが、秋元康はCNNに「性的搾取に関与している」と批判されたことがある。
当時、イスラム圏のインドネシアへの進出(JKT48)は肌の露出がNGとされるため、批判された。
当時、イスラム圏にアイドル文化を持ち込むなんてありえないと批判されていたが、元AKBでJKT48としてインドネシアに渡った仲川遥香はインドネシアで最も有名な日本人として大成功を収めている。
歌詞が女性蔑視と批判されるが大ヒット連発
歌詞によって傷ついたと批判され抗議署名活動が行われたことがある。
署名は万を超える数が集まったようだが、秋元康は鋼のメンタルなので抗議に折れず曲は廃盤になることなく今でも展開されている。
女生徒が偶然町で会った教師を見てイケてると感じて誘う歌詞の『Teacher Teacher』はスクールセクハラを肯定しているという非常に意味不明な記事を書かれていた。
ネットニュースサイトのリテラいわく、少女が男性教師を誘惑することは女性蔑視思想らしいが、現実世界でも元生徒と教師が結婚した事例はあるので、少女が大人に恋をする行為を「女性蔑視」だということこそ差別や偏見を助長するといえるだろう。
ちなみに、日本で3番目の売り上げ枚数300万枚超えの大ヒット
ちなみに、オタクの中で一番金がかかるといわれているのが「アイドルオタク」
推しが生きている=推しの将来や出番が増えることを夢見て、課金競争が過熱しやすい現実があるのは事実。
課金を抑止するような方面での規制の方向性もありえるので、ジェンダー関係以外からの圧力にも警戒したい。
現に中国では投げ銭や課金競争に対して規制が入り、アイドル文化が大きく規制されている(詳細は後述)。
プロパガンダとして利用されたアイドル
アイドルは人々を熱狂させる効果が強いため、プロパガンダとして利用されてきた歴史もある。
表現規制問題を語るうえで、ジェンダーや労働問題だけでなく政治的な側面による規制が行われたことから目を背けてはいけないと思うので、まとめさせていただく。
戦時下の日本
NHKの歴史探偵『戦争とアイドル』及び、NHKドラマ『アイドル』では戦時下のアイドルがクローズアップされた。
慰安袋にはスタァのブロマイドが入れられ、雑誌のグラビアの文言には「兵隊さんありがとう」というようなメッセージが入れられ、工場や戦地にも慰問訪問をした。
戦争中、宝塚歌劇団は煌びやかなポスターではなく戦争を彷彿とさせるような無骨なポスターが印刷され、劇の内容も時代を反映させられるなど、内容が規制された。
戦時中でも、アイドルやタレントは人気であり、ムーランルージュや宝塚歌劇団が慰問に訪れると士気が一気に向上したらしい。
勘違いしてほしくないのだが、戦時下であってもアイドルは無理やり舞台に立たされていたわけではなく、本人が望んでやっていた。
戦後、90代になっても「アイドルをしていて良かった」という証言がそれを物語っている。
アイドルは人々を熱中させる魅力がある。
それは本人自身も楽しんでいるからに他ならない。
中国の事例
2016年の記事
48グループだったが、無断で中国内にグループを発足。
秋元康に無断で曲をリリースをしたことで契約違反で独立した上海48
愛国の曲をカバーさせられるなど、愛国教育やプロパガンダとして利用された。
2021年の記事
芸能界を富裕層の象徴として見せしめとして脱税で逮捕されるニュースが相次ぎ、アイドル育成番組も制限されることになった。
課金が過熱しやすく、そこは日本でもたびたび問題になるところではあるが、過度な規制には反対である。
中国では性別関係なく芸能関係者の規制が止まらない。
中性的な男性を称賛することは「歪な美意識を助長する」とされた。
表現規制問題は二次元だけの問題ではない。
中国では現実問題として芸能活動の規制が行われている。
次回は、アイドルへの批判のやり玉に挙がられやすい要素への考察を中心に語らせていただくとしよう。