表現の自由とananの愛とSEX特集について
はじめに
私は漫画・アニメ・ラノベ・アイドルが好きなオタクである。
私が表現の自由を守るために行動をしようと思った経緯に関しては下記noteをご参照いただきたい。
毎年の如く炎上するようになったananの『愛とSEX』特集に関して、
なぜコレが「フェミはコレは叩かないの?」と言われねばならないのか?
内容はそれほどまでにいかがわしいのか?
気になって購入をした感想や、叩かれるようになった経緯を時系列にまとめさせていただく。
実は私は主に女性アイドルが好きで、男性アイドルには非常に疎い。
しかし、友達や、過去にお世話になった主婦の方や親戚の子にジャニーズが好きな「ジャニオタ」がいる。
なにより、自分の興味のない、「他人の好きなもの」であっても、安直な規制をしていいとは思わない。
それが本記事を書こうと思った理由である。
ananを初購読しての感想
私が購入したのは2022年8月10日発売号。
以下、感想を記載していく。
表紙とグラビア
まず、話題になりがちな表紙。
これはグラビアとして本編でも写真が掲載されている。
また、グラビアページ内にあったシャワーを浴びるシーンでは、男性の後ろ姿の全身裸体が掲載されているが、基本的には上半身のみの裸。
相撲や格闘技などでも男性は上半身裸でTVや人前に出ますし、過度に性的な描写とはいえないのでは?と思う。
インタビューが掲載された表紙の男性:菊池風磨氏はジャニーズSexyZoneの1人。
3年前にこの特集に出たいと思い身体を鍛えていたから選ばれて嬉しいと記載されていた。
鍛え上げられた腹筋は努力の証。
本人も望んで出演しているため、少なくとも「性的搾取」などには当たらないだろう。
コミュニケーションレッスン
いわゆるハウツーSEX。
どういう前戯や行為が気持ちいいのかについて、AV女優・男優・TENGAの担当者による解説がデフォルメされた図と共に掲載されている。
そもそも、ハウツーSEX本はamazonや楽天BOOKSで全年齢で販売されており、別の週刊誌の特集やネット記事でも全年齢でSEXに関するハウツー系の記事は記載されている。
ハウツーSEX関係がすべてアウトの場合、そういったものも現状規制はされておらず、すべてに対して批判的なコメントが来ているわけでもない。
アンケート企画
・幸せなSEX
・セックスレス
性的な関係=愛ではなく、性行為をしていなくても仲のいい夫婦もいる。
一方、性交を拒否されることで男として・女として否定された気持ちになってしまう人もいる。
逆に、毎日求められて困っている人もいる。
性欲には個人差があるということや、夫婦の悩みは多様であることがわかり
「悩んでいるのは自分だけではない」
というような寄り添う意味でも有意義な企画だったと思う。
女性お笑い芸人4人の対談
女性向け風俗を同期からプレゼントされた話を読んだとき「セクハラでは?」と思ったが、本人はすごくいい体験をしたと満足をしていた事を綴っていた。
私だったらいやだと思うことを「嬉しい」と感じる人もいる。
そういうことを改めて実感した。
赤裸々な対談で自分とは違う人の意見を聞くことは、価値観の多様性を理解するうえでも非常に良い機会だと思う。
体験談エッセイ
これは人生で1番最高だったSEXについてエッセイ風に語る4人の女性の話。
正直言いますと、個人的に本誌で一番眉を顰めたのはこの企画である。
夫や子供がいるのに不倫・婚約者の方のいる人との逢瀬
フィクションであれば私はNTR(寝取られ)ものは好きだが、ノンフィクションなのはまずいのではないか?
そういう何とも言えない感情を感じた。
ただ、「体験談」が本当にノンフィクションなのかは匿名の投稿なのでわからない。
AVの素人もの企画の中身はアダルト俳優同士であるという話や、本当にあった怖い話同様、ノンフィクション風のフィクションかもしれない。
個人的には好きではないけど、規制するべきではないだろう。
官能小説
文字通り、短編の官能小説である。
実は卑猥な挿絵や表紙ではない官能小説には年齢制限はない。
そもそも、書物のR18や成年マークというものは出版社や発行元などが自主的にしているものであり、CEROや映倫のようなレーティング団体による規制はない。
粘菌のような気持ち悪い画像が挿絵にあったが、あれは性的とは言えない(性器でもまぐわいの図でもない)ので、個人的に挿絵は気持ち悪いとは感じたが問題はないと思う。
漫画
性交時の際に身体はどうなっているのか?
『はたらく細胞LADY』とのコラボ漫画と、彼氏に自分から求める女性の漫画が掲載されていた。
男性から誘われるのを待つのではなく、自分から求めてもいい(男性はいやだったら断っていい)というのを示す作品や、体内の状態を示すのはなかなか面白い試みだと思う。
『はたらく細胞LADY』は女性の体の中にフォーカスしたはたらく細胞の公式スピンオフ作品です。
妊娠・出産・人工授精など女性の体の中でどんなことが起きているのか漫画でわかるので面白い作品ですね。
性的同意
男女共に性的同意を取ってから、性交をしましょうという話。
これは、女性だけでなく男性に対しても同様。
「家に二人きりになる」
「二人きりで飲む」
→これだけでは性的同意がとれたとは言えない
「昨日は性交できたから今日もできる」
→日によって気持ちは異なる可能性があるため、必ずしもOKとは言えない
また、男性医師として「知らないと思われるのが恥ずかしい」という気持ちもわかるとコメントもしており、空気が読めない・知らないことが男性にとってプレッシャーになっていることへの理解と「性的同意をとる男性」が選ばれるようになってほしいというコメントには同意する。
性的同意に対する世界の動きとして、許可なくコンドームを外した場合違法にするとカリフォルニア州で制定されたことが記載されていた。
DVや性被害にあった場合の相談窓口のまとめもあり、弁護士に相談する場合の目安費用の記載もあった。
弁護士への相談は30分5千円ほどらしい。
大人のための性教育
避妊・性病に関する情報。
低用量ピルは99%の避妊効果があるが、飲み忘れたりすることもあるし、コンドームなど別の避妊方法との併用が好ましい。
性病で口から感染するものの一覧や症状のまとめの記載もあり、治療法と予防法・正しいコンドームの装着法の記載もあった。
プレジャートイ特集
女性用自慰行為グッズ紹介。
男性向け週刊誌だとTENGAの紹介記事もありますし、自慰グッズ=プレジャートイの紹介記事は別に女性誌だけの特権ではないと思います。
性愛がテーマの作品紹介
映画・漫画の特集
洋画の紹介もあり、BL・百合・TL・性的同意の上でSMを行うカップルなど多様な性に関して幅広く紹介されていて好感を持った。
元AKB板野友美へのインタビュー
旦那さんとの出会いとプロポーズ
夫婦や子育てにやSEXについてを語っています。
ハッキリ言って旦那さんが羨ましい。
AKB世代で板野友美推しだったというプロ野球選手の旦那さん。つまり、推しと結婚したわけですね
セックスレスの兆しが見えたらどうするのか?という質問にあざと可愛く自分から誘うという回答は、もう推しからそんな事言われたら幸せでしかない。
非常に旦那さんが羨ましいと思った
個人的には、普段自分が読まないタイプの雑誌のため、自分と価値観が合わないと感じる部分もあったが全体としてはリベラルな雑誌だと思った。
インタビューや記事を書いている人は女性だけでなく、男性医師やAV男優、男性映画監督もいた。
女性向け雑誌ではあるが、男性を蔑ろにしているわけではない。
この雑誌が規制が必要となった場合、SPAや文春、週刊女性自身なども性的な特集を組むことがあるので対象となってしまうと思う。
個人的にはゾーニングは別に必要ないと感じた。
ananが炎上されるようになるまでの時系列
さて、ananの炎上に関してだが、愛とSEX特集は初めて企画された時から炎上していたわけではない。
初めて炎上するようになる2020年の数年前からさかのぼり、時系列をまとめさせていただこう。
SEX特集
2016年
ananのSEX特集は男性メインと確定しているわけではなく、表紙が女性の回もあります。
2016年、AKBとHKTに所属していた指原莉乃が表紙の『SEXでキレイになる』特集
当時のTwitterやTogetterのまとめを調べましたが、女性がセクシーな表紙で「SEX」の文言が入っているにも関わらず炎上はしていません。
2017年
「愛とSEX」という特集タイトルは2017年から登場します。
他の号もシルエット表紙なので、セクシーで自粛したデザインというわけではなく、この年はこのデザインがananのコンセプトだったのだと思います。
※訂正
ジャニーズは2018年まで、web掲載が表紙含めて禁止だったそうです。
webやネットメディア掲載解禁前の時代のため、2017年の表紙はネット掲載版はシルエットになっているのだと思います。
2018年
上半身裸の男性同士の絡みですが、この時も炎上をしているようなツイートやTogetterのまとめは見つかりませんでした。
2019年
愛とSEX特集は上半身裸の男性と女性が表紙
過去のツイートやTogetterを見たところこの時も炎上や「気持ち悪い」という発言はほぼなく、ファンによる好意的な発言が多いです。
2020年
この年からananの愛とSEX特集の炎上が観測されました
2020年のTogetterのまとめです。
なぜ、いままで炎上とは無縁だったのに急に「環境型セクハラ」だといわれるようになったのか?
ananのこの特集は毎年夏に行われている企画です。
さて、2019年の愛とSEXの特集発売から、2020年の愛とSEX特集号発売までの間に何が起きたのでしょうか?
実は2019年10月に宇崎ちゃんの献血ポスターは「環境型セクハラ」であるという炎上が起きました。
いままで見かけなかった「環境型セクハラ」「性的である」とananの特集への批判が言われるようになったのは、この事件(宇崎ちゃんポスター献血炎上事件)に起因するものではないか?
というのが私見です。
宇崎ちゃんや上半身裸の男性を「性的搾取」「環境型セクハラ」「規制しろ」というのはジェンダークレーマーに該当すると思います。
ジェンダークレーマーの定義については上記noteをご参照ください。
2021年
2021年のTogetterのまとめ
このまとめの内容を見る限り、2020年の時より語気が強くなっているのを感じます。
2022年
そして今年、2022年も炎上しました。
美乳系特集
ちなみに、ananではSEX特集の他に「美乳強化塾」という特集も毎年組まれています。
2017年
上半身裸の田中みな実美しいこの号では、男女ともに高評価でした。
しかし、同種の特集ですが2021年では評価が変わっています。
「子供もいるコンビニで売ってもいいのか?」というまとめをされています。
まとめの中に「ダメっていうならこれもダメだろうが」という方もいました
そもそも、谷間自体見える服装を好む方もいますし、谷間だけでは性的とは言えないと思います。
ananを叩かないのはダブスタなのか?
「ダブスタを批判しているだけ」と語る人がいますが、ダブスタを批判したいのであれば、その”ダブスタをしている人”を批判するべきであり、無関係なコンテンツを否定する必要はないと思います。
ジャニオタの中にフェミニストやジェンダークレーマーの方がいるかもしれませんが、それは全員ではありません。
オタクでありながら、「自民党だから」と表現規制反対のために動いてくれている山田太郎議員や赤松健議員のことを悪く言う人もいますが、それはオタク全員ではなくごく一部の人。
それと同じことです。
一部の急進派や変わっている人が言っていることを全体化してはいけない。
そもそも、もともと男女平等意識をもって批判をしていない人達が、男性の上半身裸の表現を叩かないことはダブスタ批判ではない。
青識亜論氏のこの図がわかりやすい。
自他の境界が曖昧で二次元のイラストを自分が性的搾取されているように錯覚している人が、男性の上半身裸を見ても「自分(女性)が裸になっているわけではない」のでなんとも思わないのは、ある意味当然だと思う。
見ている世界や論点としているものが違うため、女性の性的な画像だけ叩く人たちは別に男女平等な社会を望んでいるわけではない。
つまり、ananを叩かないのは「ダブスタ」ではないのである。
女性=自分だが、男性は自分(女性)ではないからだ。
主語の大きい声のでかい人は"女性当事者"として、批判をしているので男性が性的に搾取されていたとしても「他人(男性)のことは知らんがな」という話なのだろう。
ひどい話ではある。
男性向けだけが炎上しているわけではない
2019年8月のコンビニから成人向け雑誌の販売コーナーがなくなった後
2019年10月に宇崎ちゃんの献血ポスター炎上
2020年8月からananの愛とSEX特集の炎上(以降毎年同じように炎上)
2021年松戸市のVtuberの警察コラボの炎上
2022年 不健全図書に関して言及したBL作家星崎レオ先生の炎上
月曜日のたわわの新聞広告炎上
・・・など、男女どちら向けの作品も炎上するようになっている。
表現の自由を守る戦いは地続き。
コンビニから成人向け雑誌がなくなったことで、現在は巨乳女子のイラストや谷間だけで炎上するようになり、男性の上半身の裸体も批判されるようになった。
「叩かれているものをひっこめればいい」
「ゾーニングしてくれればいい」
コンビニから成人向け雑誌が消えた後何が起きたでしょうか?
批判先が別のターゲットに移っただけです。
男性向けコンテンツが好きな人が、女性向けコンテンツを叩いても規制された表現は戻って来るわけではない。
むしろ、冗談や意趣返しではなくBLやananが自主規制に踏み切るかもしれないし、作家やモデルを傷つけることであり、やっていることは「規制派」と変わらない。
表現規制派VS表現の自由を守る戦いは男VS女の戦いではない。
2010年の都の漫画児童ポルノ反対署名1万8000筆のうち半数は女性だった。
もし、女性向けコンテンツが自主規制するようになった場合どうなるか?
宇崎ちゃんや温泉むすめが批判されて怒って、「フェミはこれは叩かないの?」と言った人たちと同じことが、叩かれたコンテンツの支持者から巻き起こるだけである。
表現の自由を守る派を性別で分断し、弱小化させジャンルごとに各個撃破できるようになった場合誰が得するのか?
それは表現規制派だ。
規制や批判の先にあるもの
コンビニから成人向け雑誌の販売コーナーが消えたのは2019年。
「何かを規制をしたら、次は別のターゲットに移るだけ」と表現の自由を守る活動家はよく言います。
つまり、コンビニから成人向け雑誌がなくなり、表現規制派の次のターゲットとして狙われてしまったのが宇崎ちゃんなどの炎上。
その揺り戻しとしてキャンセルカルチャーへのカウンターとして「これはよくて、ほかのものはダメなのか?」という批判の声が高まるようになったのではないか?と思います。
しかし、表現規制派の弁護士や活動家はananが好きなのでしょうか?
女性が好きそうなもの=フェミニストがすきなもの
というような主語の大きなざっくりしたイメージで無関係なコンテンツを叩いているように私には感じる。
宮崎勤事件により、無関係なオタクが差別されたのと同様、雑なカテゴライズやレッテル貼りと同様の不当な魔女狩りのように感じます。
ジャニオタの数は非常に多い
2020年のマイナビのアンケート調査では10代女子のオタク率は86%であるという結果が出ている。
10代女性の高いオタク率の中で断トツ1位は「ジャニーズ」46%
2位は「俳優・女優」29%
2022年の調査ではアニメオタクの上昇がみられるが、1位は変わらずジャニーズ47%
表現規制反対の運動をするのであれば、仲間は多いほうがいい。
ジャニオタの熱意は時折暴走をしている面もあるが、表現の自由として守る対象の1つであると思う。
政治は選挙の得票数で決まる。署名も数が多いほうが力になる。
仲間は多いほうがいい。
規制や批判の連鎖を生むような意趣返しはやめていただきたい。
分断ではなく、表現の自由を守るため連合軍的な共闘をしよう。
差別をなくすのは自分の中の差別心と向き合うことから始まる。
自由を守るためには、他者の自由や好きなことを守ることとセット。
「表現の自由を守った先に真の平等がある」
元仮面女子の渋谷区議橋本ゆき議員の言葉です。
誰もが自分らしく、好きなものを好きといえる・表現できる社会を本当望むのであれば、冗談や意趣返しであっても他人の好きなものを燃やしてはいけない。
規制派への利敵行為にしかならない負の連鎖を生まないために、炎上教唆は控えていただきたいと思う。