コンプレックス
わたしのコンプレックスは抱えた爆弾みたいな過去と失っていく今。
容姿も性格も全部嫌いだけど、わたしがわたしとして過ごした時間と使う言葉が最も嫌いなのだと今日知った。
「可愛いね」と言われてドキッとした。
それは、わたしが嫌いな場所だったから。
「一番可愛くしてくれたね」という言葉をわたしもいつか言いたい。
それはきっと容姿ではなくて(本当は容姿のコンプレックスはきっと浅い)、わたしの汚いと思う中身を、誰よりも貴方に可愛がって欲しい、という祈りなのだろう。
今日期待をしてしまった。
淡いものではなく、わりと強いもの。
「可愛いね」と言われたかったから。
でも貴方が可愛いねと言ってくれたのは、わたしの飾らない部分だったから、期待して何か繕ったらもうお終いだ。
コンプレックスが愛を待つ場所なら、わたしの身体にはそれしかない。
まだ見ぬ貴方をずっと待っている。
幾らその夜を乗り越えて、たとえやがて糧になろうとも、わたしのいつかの寂しさは、きっとどこか埋まらないままわたしとして残る。
それすら肯定できる待ち合わせ場所を知った。
真っ赤な表紙、今日も貴女からの私信で生きている。
その幸福が降り注ぐ日を待っている。
『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても/コンプレックス、君は愛を待つ場所(戸田真琴)』