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01 どうしてわたしはあの子じゃないの/寺地はるな
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(作中の言葉)
そんなに簡単に取り消すぐらいなら、言っちゃいけない。だって、言葉はいっぺん相手にぶつけてしまったら、もう取り消すことなんかぜったいできないんだから
他人は自分のさびしさを埋めるために存在するわけじゃないですから
わたしは安藤針に出会って、やっと知ったから。世界ってあるんだ、ということを。自分が今いるここではない場所に世界はある、と知った。だから、生きていけた。生きていようと思えた
わたしと彼らではなにが違うんだろう。この人たちにあって、わたしにないものは、いったい、なんだというのだろう
言葉はいっぺん相手にぶつけてしまったら、もう取り消すことなんかぜったいにできない。他人に向けた言葉がそのまま自分自身にはねかえってくる
他人からの評価は、ある種の呪いだ
いつもそうだ。わたしは思っていることのかけらほども、相手に伝えられない。自分が発した言葉で相手の気持ちが変化するのがこわくて言えない、いつもいつも、夫にたいしてもそうだった、両親にたいしてもそうだった、いつもいつもわたしは
あなたはあなたにしかなれないのよ
いつも漠然と、誰かのことがうらやましかった。でもやっぱり他人の必死さを笑ったり、心配するふりして気持ちよくなったりする側より、笑われる側にいるほうがいい
たまに考える。自分が「選ばなかった人生」というものについて。選べなかった人生、かもしれない。後悔しているわけではなく、ただどうであっただろう、と考える癖がついている
天はわたしの理想だったよ。そのミナの手紙を読んだ時はいかしたギャグだと思った。けど、そうじゃなかったのかもしれない。わたしたちの目はいつだって、見たいものだけを見たいように見る。実際の相手ではなく、自分がこうだと思う相手の姿だけを見たがる
「俺は天みたいな人間に、今までにいっぺんも会ったことないよ。たぶんこの先もない。誰も、天にはなられん」わたしが他の誰かになれないように、他の誰かもまたわたしにはなれない
言葉はいっぺん相手にぶつけてしまったら取り消せないから、わたしはまたいつか人を傷つけるし、傷つけられもする。それが誰かと関わりながら生きていくということならば
寺地さんの本はスラスラ読めてしまう。そして読んだ後にはいつも心がほっこりする。この感情って私だけじゃないんだなって、ホッとしたりもする。自分を誰かと比べてしまうことなんて山ほどあるし、あの人みたいになれたらな、て落ち込むこともある。だけどみんなそうなのかなとも思う。
「わたしたちの目はいつだって、見たいものだけを見たいように見る。実際の相手ではなく、自分がこうだと思う相手の姿だけを見たがる
わたしはわたしにしかなれないし、あなたはあなたにしかなれない。わたしも誰かに「あの人みたいになりたい」って思われたりしてるのかな〜。なんてね。