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花束ボーイズ

昼過ぎから夕方の時間帯、道路に向かって花束を持っている男が立っている。最初見た時はこれからプロポーズを予定している人なのかと思った。しかし同じような人があまりにも多く、すぐに彼らが花を売っていることに気付く。
花を買ってくれと絡まれると面倒だなと思いながら、声をかけられる覚悟で彼らのそばを通る。しかし、彼らは僕には一切声をかけてこない。どうやら車に乗っている人をターゲットにしているようだ。いや歩いている人でも買うだろと思ったのだが、確かに花束は歩いて持つには嵩張るし、車を持っているような経済的余裕のある人しか花を買わないのか、と一人で納得する。

しかし、車乗っている人もそんなに花を買うのだろうか。そう思うくらい花束ボーイズの数は多く、そして実際に買っている人は見たことがない。何度かスピードを緩めた車にボーイズが群がっていく場面は見たことがあるのだが、どうやら営業は失敗していた。

車が止まると周囲のボーイズはみんな走って花を見せに行く


路上では色々な物を売っている人がいて、その営業スタイルは様々である。売っている物によって、なんとなく営業スタイルが分かれるように思う。例えば、パン・サンドイッチ、果物を売る人はあまり声をかけてこない。これらは商品が重いこともあるのだろうが、自分の持ち場から移動することなく、腰を据えて商売をしている。一番声をかけてくるのは、スナック菓子やナッツ類を売る人たちだ。彼らは商品が軽く機動力があるからだろうか、歩き回って声をかけ、しつこい人も多い。
もちろん路上で物を売っている人は、経済的に豊かではない人が多いだろうし、しつこく声をかけてくる人はそれだけ生活するお金を稼ぐのに必死なのだろう。小学生くらいの子供が物を売っていることも珍しくない。

ただ、これは完全に主観なのだが、花束ボーイズは食べ物や他の商品を売っている人よりも楽しそうに見える。彼らは複数人で行動していることが多く、花束を持って談笑しながら車が止まるのを待っている。仲間内では、「今日はバラが売れたぜ」とか「最近お前の売り上げ調子いいよな」とか言い合ったりする青春があるのかもしれない(一度も売れている場面は見たことがない)。また、歩道に10人くらいが集まって花を紙に包んでいる「仕込み」の現場も遭遇したことがあるが、彼らは歌いながら仕込みをしていた。売れてなくても花を扱うと自然と気分がよくなるのだろうか。いや花を扱ってるから楽しそうに見えるだけなのか。

そんな風に、売れていなさそうな花束ボーイズの様子を日々観察していたら、ちょっと応援したい気持ちになってきた。
今度、花束買ってみようかな。

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