読奏劇×ListenGo<ごん狐/手袋を買いに>
昨日5/21(金)正午より配信が開始されました、櫻井圭登さんの朗読する「ごん狐/手袋を買いに」のコンテンツ内容について書きたいと思います。(内容のネタバレがありますので、ご注意ください)
まず毎回書かせて頂いている「読奏劇とは?」についてご説明させて頂きます。「読奏劇」は2020年8〜11月にかけて上映(配信)した、著作権が消失した国内外の名作小説・童話等を題材に、音楽のミュージックビデオのように映像演出で見せる、配信に特化した朗読劇です。私共、音楽のスタッフと映画界で活躍される撮影スタッフの皆さんとで制作した為、完成作品は時には映画のような・時にはドラマのような内容になっています。現在はダイジェスト映像のみをYouTubeにて公開中ですので、ぜひ覗いてみてください。
今回は、前述の読奏劇から映像を外した”音声部分のみを配信する”スピンオフ企画ということで、前回を”映像版・読奏劇”、今回を”音声版・読奏劇”と呼んでいます。音声サービスのポイントは、朗読音声に、作品の世界観や朗読頂いたご出演者様の声質・読み・登場人物がある題材の場合は演技の方向性をイメージしてSE・BGMを乗せており、より作品の世界に浸って頂けるような作りを意識しています。
櫻井圭登さんの朗読作品を決めるにあたっては、以前より舞台やコメントを拝見していて、優しい声質を生かせる作品が良いだろうというところから、季節は真逆になりますが新美南吉さんの「ごん狐/手袋を買いに」をご提案させて頂きました。その点から、このコンテンツの最大の聴きどころはやはり櫻井さんの演じる「きつねのごん」や「子ぎつね」だと思います。そして、その「きつねのごん」や「子ぎつね」の心情・雪景色のシーンをイメージできるBGMにぜひ耳を傾けて欲しいと思います。
レコーディングは静かな防音がなされた部屋で行いますので独特の緊張感があり、慣れている方でも緊張をすることが多いようです。インタビューにもあったように、櫻井さんも当日は緊張されていると仰っていましたが、そのような中でも櫻井さんが緊張を吹き飛ばすスイッチが入ったのが、それぞれの作品で演じる狐のセリフを録音したところからでした。「手袋を買いに」からスタートしたレコーディングでしたが、2分50秒付近「お手てが冷たい、お手てがちんちんする」という母狐へ向けた子ぎつねのセリフと、それを優しく見守っているような母狐の描写の一連のシーン、12分20秒付近「お母さんは、人間は恐ろしいものだっておっしゃたが〜」は個人的に気に入っている部分でぜひ注目して聴いて頂きたいと思います。BGMに関しては、4分付近の、親子のぎん狐がほら穴から出た時に始まるBGMが雪景色の広がりをイメージしやすい曲になっており、12分付近から始まるエンディングのBGMは、物語を壮大にしめてくれる良曲に出会えたと思っています。
ごん狐の印象的なシーンは、9分45秒から始まる兵十のおっ母に向けたごんの心情を吐露するセリフ部分で、聴いていて非常に感情を揺さぶられました。このセリフを聴くと、ごんが兵十に負い目を感じて、いわしや栗を届けるきっかけになるシーンに自然と聴き入る事ができます。そしてごん狐も手袋を買いにと同じく、エンディングBGMが物語をしめるのに非常にマッチしており、聴きどころのひとつかと思います。
目(視覚)から入る映像版と違い、耳(聴覚)のみの音声版は、細かく効果音を入れたり、曲数が多すぎても意外と情報過多で朗読の邪魔をしてしまいます。同時に、同じような曲調のBGMが続くと、体感より長く間伸びしているように感じてしまうので、曲だけで聴いても起承転結があるよう意識してBGMを選んでいます。これは、これから配信を開始します第三弾・第四弾ではよりわかりやすくなっています。
太宰治が現代で自身の作品を読んでいるイメージの第一弾「走れメロス」に対して、第二弾の「ごん狐/手袋を買いに」は、読み手を作品の中の世界へ招いているイメージで作ってみました。いずれにしても共通するのは、今回のコンテンツを試聴して頂いた方に作品の情景を思い浮かべて、作品の世界観に浸ってもらえるよう制作したつもりです。このあと第三弾・第四弾と続きますが、どの作品もカラーが全く違い聴いていて飽きない作品になっていると思います。コンテンツは冒頭1分の無料試聴も可能ですので、ぜひ興味を持って頂いたら試聴してみてください。
羽田野嘉洋(Dreamline inc.)