本好きの桐島です。
さて、本日紹介する本は、深田祐介(1931-2014)作の「神鷲(ガルーダ)商人」(1986年出版 新潮社)です。
まず、深田さんは、早稲田大学法学部卒業後、旅行代理店勤務時代に作家デビュー、その後に日本航空(JAL)に入って、フィリピンを舞台に、日本の商社マンの姿を描いた経済小説「炎熱商人」で1982年に直木賞を受賞した後、日本航空を退社しています。経済や企業論理に精通した経済作家です。
私が、この本を知った経緯は、以下の文章でした。以前、商社の年配の方から、「昔は、片道切符で現地に派遣された」、「今の商社マンは、昔に築いた遺産で喰っている」と伺ったため、当時の雰囲気を肌身で感じたいと思っていました。
『炎熱商人』=フィリピン、『神鷲商人』=インドネシアを舞台にしていますが、まずは、タイトルの響きに惹かれて、『神鷲商人』を読んだため、紹介したいと思います。
まず、帯が挑発的です。「危機に現われ国を救うという伝説の神の鷲=ガルーダ インドネシアに群がった日本商社は果たしてガルーダだったのか」
この小説は、フィクションの名を借りた、ノンフィクションです。
深田祐介さんが、中高の同級生だった桐島正也さん(1931-2019)、日・インドネシアの関係者に丹念なヒアリングを重ねました。
桐島さんが勤めていた東日貿易(のちの伊藤忠商事)の、インドネシアの戦後賠償ビジネスが、躍動的なタッチで描かれています。
そこには、スカルノ初代大統領にデヴィ夫人(当時・根本七保子さん)が深く関係しています。
この話は、単なる一商社の話ではなく、岸信介首相やスカルノ大統領が関与していて、戦後日本の根幹となる日本-インドネシア間の経済関係・政治関係・外交関係、全ての根源が形作られた起源話です。
世界の果てまでイッテQ!では、既に80歳近くであるにも関わらず、かなりアクティブに活動しているデヴィ夫人ですが、彼女の人生は、日本の戦後賠償、日本の戦後の東南アジアとの関係と切っても切り離せないものです。
それでは、次回、小説の面白い箇所について触れたいと思います。
See you soon.